3(湊SIDE)





(湊目線注意)






後ろ姿を見て、もしかしてと思った
黒髪にあの子らしい無造作な髪型

誰かと話している横顔を見て、確信する



双葉だ、と。




………けれど隣の男が誰だかわからない
同級生にしては大人びているし、人目を引く容姿をした男に知り合いはいなかったはず


…まじで、誰だよ。


楽しそうに話す二人を見て不思議とイライラする心情につられ、持っていたカップを強く握り込んでいた



「ね、ここのカフェいいでしょ」

「・・・」

「宮村くん?」

「あ、あぁ、いいな。うまいし」


目の前の同僚に声をかけられ慌てて現実に戻る
俺が飯無いという情報をどこからか聞き付け誘ってきた

駅近くて、確かに便利だけど。


「てか宮村くんがお弁当無しの日が続くの珍しいねー。彼女さんどうしたの?」

「勉強で忙しいって」

「へ?」

……まあ、彼女じゃないけど。


「資格の勉強、とか?」

社会人相手だと思っている彼女は首を傾げる


「いや、学生。」

「へ、へぇー…年下の子なのかぁ」

「……おう」


いや、ほんと彼女じゃねーんだけど。
否定するのが面倒くさい


話をしながら双葉の様子を観察する

会計の所で男に頭を撫でられている双葉
………だから、お前誰だよ。

双葉も双葉で拒否してないし。なに、そんなに仲良いわけお前ら。


「でもさ、年下の子相手だと歳の差とかあって不安じゃない?」


同僚が再び話を戻す


不安…


「そうだな…相手の事、分からないことが多くなるし」


現に今その状況だ。


席についた二人の片割れと目が合う
…良い面構えですこと。
大学生くらいか?俺と歳近い感じもしねーし…

軽く睨んだらきょとんとした顔をしてきた。そらそーだ。


「相手も、なに考えてるのか最近わかんなくて」


俺、避けられっぱなしだし。


そう言うと同僚の声が少し弾んだ


「え、不仲ってこと?」


その声色に少しイラァとする
うるせぇな、他人なんだから関係ねぇだろ


「前は、触ると嫌そうな顔するか照れるかだったんだけど、この頃は体強ばらせたりする。…なんでだと思う?」


ちょっとノロケに聞こえそうな話を入れてみたらひきつった顔を見せた

…つかなんでムッとしたからってノロケ話をしようと思ったんだ

別にそういう関係じゃないのに。



「緊張してるとか、じゃない?」

「緊張か…」


俺なんかしたっけ。
日頃セクハラしすぎたか。…自覚はあった。


「今は俺から逃げるようにして他人の家に泊まってる。…しかも俺の知らない男といたし」

「え、なにそれ!浮気じゃん!」

サイッテー、と彼女が言う

…いや、付き合ってないし。男だし。


彼女には悪いが彼女の話はアホらしく感じた




そんな中、双葉が席を立つ
ガタン、と音がしたから何事かと思って見ていたらパタパタとトイレに行ってしまった


相手のイケメンも心配そうな顔をしている


駆け足でトイレ行ったところ、普通な感じではなさそうだ

そう思って彼女の話を右から左に流しながら数分待ってもやはり帰ってこない


「………ごめん、俺ちょっとトイレ」

「えっ、うん」


居てもたってもいられなくて、俺も追いかけるようにしてトイレに向かった


イケメンと目があったが無視をした



双葉に何かしてたら、殴る



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