枯れたブーケ






どうしてこう言うときに限って運が悪いんだろう。
いや、別に駅近くに湊さんがいることは不自然ではないことだけど…。


ただなるべくは会いたくなかった。


手汗が一気に溢れシャツをギュッと握る
全神経がさっき湊さんと女性がいた席へと向かっていた



というか、

一緒にいる女性は誰?





「双葉くーん」

「あっ、は、はい!」

「どうしたの。やっぱり知り合いだった?」

「……あ、えっと…」


そうです、と小さく呟く


へー、と言う成幸さん。
俺は湊さんと一緒にいる人の存在が気になってそれどころではなかった。


湊さんって彼女いないんじゃなかったのか…?
いやただ隠してただけかも知れないし。

パッと見、湊さんはスーツだった。
ご飯を一緒に食べる仲か。

………湊さんにそんな相手がいるとは思わなかったな。

なんだよ、どうして俺に黙ってたんだ…


どうして…



どうして俺は今こんなに泣きそうなんだ?



「双葉くん…?」

俺の不自然な様子に成幸さんが首をかしげる


「あ…えっと…その、あの人が俺言ってた同居人です」

「そうなんだー。従兄弟さん、ずいぶん格好良い人だね。」

「はい、そうですね…」


いつもならば否定して成幸さんの方が、と言っていたかもしれない。
けれど今は自分のことで精一杯で。



唇が震え、喉が乾く
表情に出さないでいるのが自分の限界だった


早くこの店、出たいかも…



「なんか、従兄弟さんこっちすごい気にしてるみたいだけど…会いに行ってきたら?」

「いやっ、あ、あの、実は今喧嘩しちゃってて…」

「えっそうなの?」

「だから気まずいんです」


有りもない嘘をつく
実際は俺が避けているだけ。


自分自身でも訳がわからないまま湊さんを避けていた
それを見て湊さんが悩んで落ち込んでるのもわかっていた


だからなるべく普通でいようとしたけれど…



けれど。



やっぱり俺には無理かもしれない



どこか頭の端でそう思う。




俺がここ最近悩んでいた事


それは気のせいだとか、時間経過で終わると思った
でも、どうやらそれは終わることなく続いていくみたいで。




あぁ…



気づかなければ良かった、こんな気持ちに。


でも、ついにわかってしまった。







俺は、




湊さんの事が…。
















好きなんだ。



[ 46/79 ]

[] []
[目次]