八時ちょい過ぎ
家に帰ってきたのは6時で、掃除洗濯をしていたらこんな時間になっていた。のんびりしていた俺が悪い。

そろそろ湊さんが帰ってくる頃だから料理をしなければいけない。


夕飯どうすっかな…
ハンバーグ?いや、30分じゃ作れねぇよ。


……オムライスでいいか。
卵もあるし。


決定したらすぐ実行
とりあえず制服のままなのでエプロンを着る

シャツに油染みとかつけたくねぇし。








ガチャガチャ

玄関からそんな音が聞こえてきたのがちょうどオムライスにケチャップをかけていたとき。



「ただいま。」

いつもは疲れた声なのに機嫌の良さそうな声でリビングに顔を出した湊さん。

なんだ、今日は仕事楽だったのか?


「おう。」

スーツを椅子に掛けネクタイをほどいている湊さんを横目に、テーブルにオムライスを並べる
あと腹の足しになるようにインスタントスープも。
……インスタントなのは、時間がなかったんだよ。


「オムライスか。俺結構好き。」
「ふーんそう。」

「・・・。」


冷てぇな、と湊さんがボソッと言うけど無視
いつも通りだろ。


とりあえずスプーンを置いてから湊さんの後片付けに入る
この人は脱いだスーツとかネクタイをそこら辺に置きっぱにする癖があるんだ。


「スーツはハンガーに掛けろつってんだろ。」

とか言いつつ片付けてしまうのは、クセで。
一年くらい経ったしな。


「……双葉って嫁さんみてーだよな。」

ハンガーにスーツを掛けている俺をどう思ったのか、湊さんが呟いた。


「あ゛ぁ?」
「わー、このオムライスめっちゃうまそー。」


湊さんの爆弾発言を一睨みで押さえる
その切り替えの早さは何。
つか俺が嫁ってのムカつくんだけど。


「時間なかったからスープはインスタントね。」

俺もイスに座ってご飯を食べ始める

「いーよ別に。家事するだけで助かるし」
「……そう。」


こんな俺でも役に立ってるって思うとちょっと嬉しい。



「なあ、今日の……。」
「んぁ?」
「………やっぱいいわ。」

なんじゃそりゃ。


「何、飯まずいの?」
「それはない。」
「あ、そう。」

じゃあ、なんだよ。

元気に帰ってくるといい、態度が変といい。


あ。



「………今日の、メール?」
「!」

冗談で言ったつもりが、カタンッと足が跳ねた音がした


「え……。」

……図星かよおい。


チラと見てみると何か気まずそうな顔してる

え…。てかなに、あのメールで喜んでるのこの人
…おっさんてわっかんねぇ…。



「それで……頑張れたわけ、仕事。」

本当は、友達が打ったと言ってやりたいところだったけどそんな顔されちゃ、なんとも言えない。

そんな父親面すんなバカ。


「…まあ、いつもより3倍は。」
「普段どんだけ真面目じゃないのさ。」

真顔で言ってきた湊さん。
大袈裟すぎるよ、全く…

てかあんなメールで3倍頑張れんの?


じゃあ今度はゆっくり休めよ、とメールすれば3倍休んでくれるのだろうか。


なんて事考える俺はやっぱりガキで。






「ねえ、知ってた?湊さんって端から見りゃあ大人っぽいんだってよ。」

俺の突然の言葉に目を丸くする湊さん


「いや、てか誰が言ってたそれ。」
「友達。」
「ふうん。」

興味なさそう。
…湊さんは他人に対しての興味は薄いみたい。


「俺からして見たら間抜けな人間にしか見えねぇんだけどな。」
「間抜けっておま…俺会社でクールですよね!とかめっちゃ言われまくってんだぞおい。」
「………クール?」
「んな目で見んじゃねぇバカ。」

その言葉に思わず笑ってしまった。


湊さんがクールって、信じらんねぇ。
やっぱ会社でもモテモテなんだろうな。


「お前から見たらどうなの、俺って。」

湊さんが俺に聞く

いや、だからさっき間抜けな奴って言ったじゃん。


「んー。」


そう言おうと思ったけど、湊さんの顔を見たら気が変わった


「…残念な兄ちゃん?」

「…………ああ……そう。」


俺の言葉に期待してたのかわかんねぇけど、不満そうな声を漏らした
はっは。ざまあねぇ。


「んな事よりさっさと食べ終われよ。片付けらんねぇから。」

「はいはい。」


「最近は下克上が流行ってんのかね、」と湊さんがグチを溢す
……下克上っていうのかこれ。


湊さんの愚痴にふはっと吹き出す

たまには誉めてやるか。




「じゃあ、頑張るお兄さんでもいーよ。」


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