ドクドクと煩い心音
体の熱はまだ冷めなくて、ボー、と一点を見つめる




けれども、やはり時間というものは現実を突きつけてくるもので。




ビチャビチャな手

荒い息

脱力感



熱い吐息と共にもたれ掛かってくる黒髪




…………ワッツハプン?





「あ、あ、あぁあ………!!!?」


「………あ、今ティッシュ出しますね」


ワナワナ震える俺とは真逆の様子の島崎くん

少し気だるげだが、そのいつも通りの姿に呆然というかなんというか


こんな挙動不審になる俺が変なのか?



いや、変じゃない!!!




「ご、ごごごめん島崎くんの手汚しちゃっ…!」


ガバァッと手を握って謝る
お互い手が汚いため、余計汚してしまっちゃってるが


「お互い様ですよー、すっげえ気持ちよかったし別にいいじゃないですか」

「んぎゃっ」


手をティッシッで拭かれながらチュッと耳にキスをされて体が跳ねる
あばばばばっ…!島崎くんってキス魔なのではないだろうか



「で、でも俺なんてことを…」


大人しく手を島崎くんに拭かれながら腕に顔を埋める
穴があったら入りたい。
というか今すぐ記憶を抹消させたい


「だから、何回言えばいいんですか。俺も同罪ですよ、先輩にキスはしちゃうし触っちゃうし、ちく…」

「わーわーわーー!!!!!」


要らん事を思い出されそうになったわ!!

そして未だに捲りっぱなしだったシャツを下ろす
ティッシュを借りて散らかった体液を拭いて服を整えた

服、ちょっと汚れちゃってるし…



「もう、全部忘れてください…」


恥ずかしい
ものっすごく恥ずかしい死ぬ


「大丈夫ですってー。これは二人の秘密にしましょ」


クスクスと笑う島崎くん
なんだろう…どこか裏がありそうな笑顔過ぎて俺怖い



「どうしますか?シャワー浴びます?」

「いやっ、いいっ、大丈夫」


ヨロヨロとソファから立ち上がる
恥ずかしいから俺今日はもうさっさと帰ろうそうしよう


久しぶりに強すぎる快感を得たからか痺れてる膝
まじ勘弁して…


「大丈夫ですか?」

「っ、ぅ、ぅん…」


腰を支えられてコクコクと頷く
ぶっちゃけ今どこ触られても敏感だから触らないでほしい

てかもう服ですら擦れるたびにゾクゾクする
特に乳首。なんで舐めてきたんだ島崎くんイミガワカラナイヨ


シャツを掴んでなるべく服に擦れないように引っ張るがどうもうまくいきそうにない


………仕方ない


ここで、ようやく俺は腐男子の知識を使う場面がやってきた



「あ、あの…」

「はい?」



「バ、バンソウコウってある?」



すごく、間抜けな絵面になるけど、
どうせ誰も見ることないだろうから腹をくくるよ



絆創膏を乳首擦れないようはっつけよう。

島崎くんのクエスチョンマークを浮かべた顔に、内心すごく恥ずかしくなった。






帰り際。


心配そうにしながら何度も俺を送るという島崎くんを押し留めてなんとか自力で駅へと向かう


変装をしているせいでただでさえ目立つのに、おまけにヨロヨロしてたら余計視線が多くなった


……駅から家まではタクシーで帰ろ…。

ちなみに乳首補強はトイレでやりました。




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