２

---

「女優さんって誰？」

「あ、結香さんですね」


結香さん……綺麗系の子だよな確か
しかも島崎くんより年上じゃん。


「数回くらいしか共演したことないからなぁー…どんな子なの？」

バラエティでちょいちょいしかない


「んー、そうっすねえ。まあ見た感じいい人っぽいけど どうだか。」

フンッと鼻を鳴す島崎くん。
あらあんま好みじゃないのかな？


「この業界の女性って裏表すごいじゃないですか。だから俺もそこまで関係はもたないんで…」

「あぁ、なるほど〜。確かにそうかもなぁ」


女性ってわかんないよね、ほんと。
みんなの前ではニコニコおしとやかだけど打ちあげとか一緒になるとガツガツくるし。逃げられないし。

うんうん、と納得してると島崎くんがフッと微笑んだ


「その点、篠原さんは裏表ないから落ち着けます」

「えっ」


そう言いながらコテン、と俺の肩に頭をのせてきた島崎くん
おまけに腰に腕を回してきたから心臓が一気に跳ねた


へっ、平常心、平常心………!!!



「…まあ俺女じゃないしね」


ギュウギュウと突然抱きついてきた島崎くんの腕をポンポン叩きながら苦笑する。なにこの子超可愛い。無自覚なのかな、無自覚でこんなワンコみたいなことを…！くぅっ…！


「島崎くんは俺より顔広いからもっといい人一杯知ってるでしょ」

「いや、篠原さん以上はいないです。」

「あはは、嬉しいなぁ」


笑いながら側にあった頭を撫でてあげる
綺麗に染まってる黒髪はさらさらしてる。あー、なんかやっぱ印象が変わっちゃったな。前みたいな天使なイメージじゃなくなってこんなイケメンに…！

気持ちいい指触りに頭を撫で続ける

そんな俺に気を良くしたのかグリグリと俺の肩におでこを擦り付けてきた。あ、やっぱ可愛い。かわいすぎる。


「やっぱいいなぁ」

「んー？」


なんかモゴモゴ聞こえたけどなにかな。
聞こえなかった。


「……いや、なんでもないです。」

「そう？」


それにしても島崎くんずっとこの体制でいるのだろうか。
腰にガッチリ腕ホールドしてるし。
スーツなんだから窮屈じゃない？



「ドラマ撮影は結構順調なの？」


無言も辛いのでなんとなく話しかける
腰の腕も気になるけどまあいいや


「んー……、いや、普通ですかね」


およ、なんだか歯切れの悪い返事


「？なんかあんの？」

「まあ恋愛モノなんで色々…」


恋愛ものはなぁ〜
しかも島崎くんの相手先輩だから余計気遣うだろうな


「やっぱドラマん中で結構絡む感じ？」

「あー、ハグとかはなんだかんだ。」


俺の肩で苦笑する島崎くん

そうか、島崎くんにハグされるとか幸福者だな。俺も幸せ者だけどね。


「こんな格好いい島崎くんに近寄られたら相手メロメロでしょ」

俺が女だったらメロメロだぞ


「あは、俺格好いいですか？」

「超カッコいいよー。スーツとかまじ大人」


俺スーツ着てもこんなかっこよくないわ
やっぱ島崎くんだからなぁ


「恋愛ものなら中盤らへんにキスシーンくるんじゃない？」


くっそ許せないなぁ、島崎くんの唇を奪っていいのは高田さんだけなのにね。キスに慣れてるはずなのに高田さんのキスのうまさに島崎くんの腰ガックンみたいなアアンが欲しい。見たい。


「あーそうなんですよねー、来るんですよねー」

なんか苦い声の上にハア、と耳元でため息吐かれる


あ、やっぱキスシーンあるんだ



「そっか、大変だね」

島崎くんの唇を奪うのは（以下略
まあ、仕方ない。仕方ないよね、仕方ないよ。
島崎くんだって俳優なんだし？ね？でもやっぱ許せないな！


「俺ドラマでキスシーンとか初めてなんですよー…」

「へえ、初めてなん…………は、初めて！？」



初めて、って、え、初めてなの！？

びっくりして肩でうなだれる島崎くんを見るとなんか思案顔


ちょっと待てよ、テレビ初公開の島崎くんキスシーンですか!?あれですか、事務所がNG出してたパターンですか!?


だったら最後までNGだそうぜ！なぜ今！


高田さんが知ったらお怒りどころじゃないよ！



「ま、まじで？島崎くん…」


「はい…どうしましょう篠原さん」



ゴクリと唾を飲む
いや、これは、あれだろ

お仕置きくるパターンじゃない？高田さんからの
消毒とか言ってすっげ濃厚なキスされちゃうパターンじゃない？

いいけどね別に！


ドキドキドキと興奮でうるさくなる心臓
さすがにハアハアはできない。だって島崎くんくっついてるしハアハアしたらバレちゃうからね


どんなお仕置きプレイするんだろ……たてなくなっちゃうくらい？朝までとか？



「それで、篠原さんに相談なんですけど…」

「んー？なんだい」


妄想で脳がピンクになってるから半分話を聞く

高田さん独占欲すごそーだからなぁ
キスマいっぱいつけちゃう感じ？
あとこれでもかってくらいキスしてね。唇ぱっくん
腫れちゃうくらい



「驚かないで聞いてくれますか？」

「うん、全然」



あられもない島崎くんの姿を妄想してる時、俺は次にくる島崎くんの言葉を甘く考えていた


一応は、『相談ってなんだろう。最近後ろでしかイケないとかかな』くらいは考えていたけれど、


まさか、




「その………キスシーンの練習に付き合ってくれませんか…？」



こんな事を相談されるとは、



予想外だったから。


[ 45/86 ]
[＊prev] [next＃]
[mokuji]
[しおりを挟む]