報告






有美ちゃんが七時に迎えに来るので慌てて外に出た
案の定時間通りに俺のマンションの前に車が停まっていて。

危ない遅れるところだった…!




「おはよう有美ちゃん」

「ん、おはよ」


挨拶しながら後部座席にのりこむ。
あ、コーヒーの匂いがする、と思ってたら有美ちゃんが飲んでた。……俺には無いのかなぁ


「あんたどうせ飲まないでしょ」


その通りです。
無言でコクリと頷く

すると「代わりにミルクティーならあるわよ」と差し出されたミルクティーにふぁぁあ!となる。有美ちゃんやっぱ優しいなぁ!



「今日の予定確認した?」

「んー、だいたいわかる」


車が動き始めたのを感じながら窓の外をみて丁度俺の部屋のある窓をみる。やっぱあの悪魔をおいとくのは心配だな


「今日はドラマの撮影とファッション雑誌の撮影。あとは打ち合わせね」

あらら随分とハードなんですね今日は。

よりによって……


顔をしかめそうになるのをどうにかして抑え宝物の安否を考える。…だめだ寝室にあるんだった。なぜ俺はほったらかしにしてしまったんだ…


驚いたのは出掛ける前に冬馬が「いってら」と言ったことだ

びっくりした。というか、そんな言葉を他人から言われたのはいつぶりだと思った。

…お前寝てたんじゃないのか。とツッコみたかったが「いってきます」と言っておいた

俺はそんなんじゃ ほだされねーぞ。




「あんたが顔しかめるの珍しいんじゃない」


…どうやら見られていたらしい。


「んー…ちょっと。」

「ちょっとって何」


…あ、やっぱ言わなきゃいけないかな
まあでも有美ちゃんにも言っておかなきゃだし…。




「今友達が泊まりに来てるんだ」



しばらく泊まるみたい、と素直にそう言ったら有美ちゃんは目を丸くした

…有美ちゃんの表情が崩れるなんて珍しい。



「まさか女性じゃないでしょうね」

「ないないない。男だよ!」



慌てて否定をする
報道陣にバレたらただごとじゃないし。だいいち女性の友達なんていない



「…あ、そう。ならいいんだけど。…友達って芸能界の?」

「んーん。幼馴染み。昨日?イギリスから帰ってきて」

「お、さななじみ?」


有美ちゃんが言葉に詰まった
けれどとくに気にせず続ける。


「んー。泊まるところないから泊めろっていってきてね。」

「・・・。」

「断っても久しぶりの日本なのに一人は嫌だって言ってきたからしょうがなく泊めてやった」


あいつのマイペース振りには慣れていたつもりだったけどやっぱあいつの方が上手だった。しかも一日だけじゃないっていうね。

無言の有美ちゃん

あ、もしかしてダメなパターンだったのかな。勝手なことするな、とか?
やばい、怒られるかも…。


有美ちゃんの反応が気になって動きが止まる


けれども、


「それで?」

「…それで…………それで!?」


予想外の反応にびっくり

え、まだ続けろと?



「マネージャーなんだからプライベートも把握しておかなきゃでしょ。どんな男なの」


そういうもんなのかなぁ……。


「どんな男って…中学からの幼馴染みで…。性格は自己中でマイペース。顔はビックリしちゃうほどのイケメン」


性格の説明ほとんど悪口に近いな。



「…職業は?」

…。
なんか有美ちゃんハンドル握る手震えてんだけど


「えー、あ。写真家だよ。結構有名みたいだし…。特にジャンルは縛ってるわけではないみたいだけど。」


ぶっちゃけあんまりわかんない。
大抵自然とか風景って言ってた気がするけど。

カメラマンとは違うみたいだし写真家って難しいね。


「もーねー。しばらく一緒に暮らさなきゃいけないみたいで、俺超困ってる。勝手にベッドん中潜り込んでくるし…」


あとで食材費とかの金をせびらなければ。と決め込んでいたら、突然有美ちゃんがハンドルに頭を打った


!?


「だ、大丈夫?」


幸いにも赤信号で危なくはないけれど…。
いや、危ないか。危ないよ!


「……ちょっと新展開についてけないだけよ……」


ゆっくり頭をあげた有美ちゃんはやっぱどこか雰囲気が違かった。
「ベッド…?え、ベッド?」と独り言を呟いている

……やっぱ怒ってんのかな。俺自由なことしすぎた?



「怒ってる…?」

「まさか。むしろ歓喜よ。」


心配しながら聞いたら真顔で言われた。

歓喜?って、なんで?

なにに喜ばれたんだろう。


「今度会わせなさいよ。一応同棲するなら私も知っておかなきゃだし。」

「ど、同棲…?」

同棲っていうのか…?
なんか違う気がする。
いや、でも、…うーん…


「ただ泊まらせてるだけだからね?まあ会わせるくらいはいいけど」

「なるべく早めにしなさいよ」


…俺の否定の部分聞いてんのかなぁ…。

つかあいつ節操ないから有美ちゃんにがっつきそうで怖い。あいつ美人好きだし。


「聞いてる?」

「はい」



有美ちゃんの目力に負けおとなしく返事をしといた。

やっぱ冬馬がいると面倒くさい方向にしか行かないなぁー。

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