「っし、サッパリしたー」



そう言って冬馬が浴室から出てきたのが六時ちょい過ぎ


俺が夕飯を作ろうとしている時だった




「なんか飲みもんねーの?」


タオルでガシガシ頭を拭きながら近づいてくる冬馬
完全に我が家気取りな部屋着と態度

女の子だったら卒倒してしまいそうな風呂上がりの色気も俺には効かない



「水でも飲んだら」

「お。ビール見っけ。」


…予想はしてたさ。

上機嫌そうにビールを持ってソファに向かう冬馬を軽く睨む



「なあーなんか和食食いてえ」

「はあ?今さらおせえよ!」


ちなみにハンバーグ作ろうとしてた。
いまから和食つってもどう変えようか



「何作ってんの?」

「……ハンバーグだよ。おまえ、俺のハンバーグ好きって言ってたじゃないか。」


前の話だけどな
もしかしたら冬馬の好み変わっちゃったかもだし…


どうしようか、と思って手元を見る

するとリビングでフハッ、と笑う声が聞こえた


…何笑ってんだあいつ。




「前より可愛くなった?」


「………は?」



リビングから聞こえたその言葉にドン引く

正気かこいつ。つか何に対してそんな気色悪いことを思うんだ。と思ってソファを見ると機嫌よさげに何かを読んでいる冬馬


「俺、おまえのハンバーグ大好きだから全然いいよ。」

「そうかよ」


…人によって味ちげーのかな。とか思うけれどわからないし


「つか何読んでんの」

「漫画」


…漫画。
あいつ漫画なんて読むっけ。

とか思いながら覗く

遠目からじゃ見えづらいがタイトルは『庶務くんの秘密のお仕事☆』と書かれていた


………何か、って、




「うっわあああああああああ」

「うぉっ、びっくりした」



いきなり突進した俺に目を丸くしている冬馬。びっくりしたのは俺の方だ



「おま、なに、勝手に…!」


それは紛れもなく俺の宝ものの1つ

ひき肉で手がベタベタしているので下手に近づく事もできず手をワナワナさせる


「拾った」

「嘘つけ!」

「お前の寝室で。」


何勝手に入ってんだ
つかいつの間に!


「相変わらずこういうの好きなのね」

「うるさい。お前みたいな俗物が読むな汚れる」

「はあ?馬鹿じゃねーの…う゛っ!」


手は使用できないので足でお腹を蹴りあげると冬馬が呻いた

くそ、最悪だ。隠していたのに。
汚された。可愛い庶務くん受け


「えー俺何してればいいんだよ」

「知らない。テレビ見てれば。」


そう吐き捨て再びキッチンに戻る
冬馬をつまんなそうに舌を鳴らしリモコンを弄り始めた


……全く…。

つか暇なら荷物片付けるなり手伝うなりすればいいものを…


ビール飲んでテレビ見てる時点でないか。

冬馬の性格上すぐ諦めた。



再び料理に視線を戻す



ハンバーグとか、なんか久しぶりだな…


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