マイペースの王様


「ほら、冬馬。着いたぞ」

「…んー…」



俺のとなりで寝ている冬馬を軽く揺すって起こす
帰りは、空港から家までタクシーを使う事になった


冬馬曰く「これ以上人混み入るとか考えただけでうんざりだわ。」らしい。王様か。


まあ一応疲れてるだろうからとタクシーにしてやった。俺優しい。


そして案の定疲れきっていたらしく、ものの10分で爆睡し始めた冬馬
俺の肩に頭を乗せてきたので、俺は下手に動けずにストレスが超溜まった。



やっと解放されるときがやって来たと言うのに、こいつはなかなか起きない



…まったく…




「冬・馬、起きろ!!」


ワシャワシャーって頭をぐしゃぐしゃにしてやった
久しぶりに触る柔らかい髪


「…………………なに。ついたの。」

「さっきからそう言ってる。」



寝起き独特のガラガラした声で俺にそう聞きながらうっすら目を開ける冬馬

起きた起きた。

こいつ引きずって歩くとかまじ勘弁だからな。
その事に一安心しながら頭を押し返す


左肩が一気に軽くなった



「…ひでえ、乱雑。」

「ずっと肩貸してあげてたんだから感謝しろ」


俺の言葉に借りてた記憶ねーし、と唸り声をあげる冬馬
そして今度は俺の腕におでこを擦り付けてきた

全然嬉しくない。



「お金払い終わって、今タクシーのおじさん荷物下ろしてくれてるから。」

「…ん」


窓の外を見つめると、せっせと荷物を引っ張ってり出してるおじちゃん

重そー…



「あれ何入ってるの。」

「…いろいろ。」


冬馬に聞いてみたが相変わらずのガラガラした声でそんな大雑把な返事をされた。
そうだな。ちゃんとした答えを期待した俺が馬鹿だった。


おじちゃんを手伝おうともう一度冬馬を押し返し、俺も車の外に出る


タクシーの中を覗くとちょうど冬馬は欠伸をしていた






………お前の荷物だろーが

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