不必要な挨拶





ってな訳で俺は今空港にいる

そろそろあいつもここに来ていいはずなんだなんで来ない


マスクをしていてもさすがにバレるもんはバレるらしく、外野の視線が痛くなってきた今。


まずいまずい
ここで捕まったりしたら嫌だな



俺も会計をすませ、そそくさとカフェから出る


とりあえず入り口付近のイスに座ってることにした。




うーん…
さっきより人混みがすごいから、そろそろだと思うんだけどなぁ



とりあえず携帯を弄りながら待つことにしよう。




やっぱ携帯やるっつったらサイト巡りだよね
更新されてるかなあ、されてるといいなぁ


とか思いながら一人ニヤニヤする
マスクしといてよかった。



そういえば最近高田×島崎みれてない…
俺萌え不足で死んじゃうよ…


しかも忙しさのあまりにBLゲーできてないし。
新発売されたの買ってすらいないし。
ネットで頼もうかな。畜生そんな時間すらない。



よりにもよってあいつが泊まりにくることによってさらに俺の時間が消費される気がする。てか絶対そうだ。

本気で泊まりに来るんだろうか…


携帯弄る手をとめてハア、と小さくため息をつく




するとその時





「もしかして、モデルの篠原さんだったりしますか?」




という男性の声が頭上に響いた






「………え。」





からだが一瞬にして硬直する

え、え、

え。



お、俺?いや俺だけど…




「…ひ、と違いだと思いますけど」


顔をしたに向け声を変えながら返事をする


まずい。




一気に冷や汗が出た


やばい、どうしよう。
逃げれば済むんだろうけど、ここで騒ぎになったりしたらやだしなあ…



まじで悩む
マスクの範囲をさらに広げて顔を出来る限り隠した



すると




「なあにマジで焦ってんだよ」




フハッという笑い声が聞こえて。





こ、


の声は……





「冬馬…!」



聞き覚えのある声に顔をあげると案の定予想していた人物が居た。





赤茶色の髪に、端整な顔立ちの青年
見慣れている顔なのに、何度みても慣れないイケメン




俺の待ち人である、幼馴染みがそこにはいた





「ちゃんと来てくれたんだな、偉い偉い」


俺のほほを叩きながらそう言う幼馴染み



っこの…!




「色々ツッコみたいことあんだけど、まずビビらせんじゃねえよ馬鹿!」



「そうかっかすんなよー。いーじゃん別に。」



よくねえよ俺はガチで焦った

ジロリと睨むとニヤリと笑う彼。
こいつはいつも、俺がいやがると嬉しそうな顔する


…相変わらずってことね。



「俺、仕事忙しいんだからな。」

「なに、誉めてほしいの?」

「ちげえよお礼を言え!」



冬馬に褒めて貰っても嬉しくない。
むしろ子供みたいに扱ってくるからイラっとくるだろし


俺のとなりに腰かけた冬馬を相変わらず睨み付ける
…イケメンなのは認めるが。


すると何故か顔を近づけてきたこいつ



は?




パチクリする俺をよそに顔を少しずらし耳元に口を近づけてる
マスク越しだけれど頬と頬がくっついた


な、なになになに…



「うわっ!」



そして突然『チュッ』というリップ音が聞こえてきた。



!?




聞こえてきたっつーか耳に近いところでチュッて音がしたもんだからなんか耳にキスされてるようなあああ




そのリップ音のあとにきれいな外国独特の言葉が聞こえてきて。
流れるような発音

いろいろ言ったあとに「Thank you」ってのだけはわかった




!!




「お、おま、なにして、」


「何って、お礼いっただけだけど。」



離れた顔を見上げると、ケロリとしてる様子の冬馬

いやいやいや



「リップ音ならす必要あった?」

「そういや挨拶してなかったなーって思って。」



「ここ公共の場だけど」

「挨拶だから気にすることなくね」


「ここ日本」

「…もしかして照れてる?」


「そんなんじゃねえよ!」


くそっ…!


ニヤニヤ笑ってる冬馬に言い負かされる

なんも言えない…!





「もう行くぞ。」



とりあえずそうとだけ言って立ち上がった。




……はやくこの場から立ち去りたい。






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