それは今日の深夜の事だった





『〜♪』




すでに0時を回った深夜





そんな時間に俺の携帯の電話が鳴った









………は?






もちろんまだ真っ暗な部屋

静かな空間のなかで煩い着メロがガンガン響く





「……嘘だろ、今1時じゃん…」



さっきやっと眠りについたのに、と思いつつも携帯を拾う





霞む目をなんとか細めて相手を見た




「………。」



……………うわ。




ディスプレイに表示された四文字の名前






『宮崎 冬馬』





その名前に苦い声が出たことは仕方のないことだろう。




相手が相手だからこの時間帯に電話が来たことを納得できる



「………はぁあ……?」



ふっざけんなよ……1時ってお前…1時って……

ため息を吐いて項垂れる




一瞬でるか迷ったが、後が怖そうなので出ておいた






「……もしもし。」



出た声はとんでもなく掠れた声で。

寝起きなんだからしょうがないでしょ。







だというのに、





『こんばんわ?』




電話の相手はとても元気そうで。




「………。」



むかつくクツクツ笑いも全く変わってないね。







「おまえ何時だと思ってんだふざけんなよ」

『だからこんばんわつったじゃん。』



悪態をついても飄々としてるこの男






言わなくてもたぶんわかるであろう、




イギリスにいる幼馴染みだった








つかこいつわかっててやってたのか。

最低だ



冬馬の言葉に「性悪」と呟くと「今さら。」と鼻で笑われた
チクショウ




『あ、つか通話料金やばくなるの嫌だから大人しく話聞いとけよ』


…そっか海外料金


「………あんだよ。」


めちゃくちゃ気にくわないがおとなしく聞いてやることにした。
俺って優しい



やっと冴えてきた体を起こす



『手紙見た?』

「…おう。」

ちょうど一週間前にな。




そろそろイギリス出まーすってか。
そんな事にわざわざこの時間ってクズすぎんだろ。



何か大事な話なんだろうなって冬馬の話に耳を傾ける



けれどもその話はあまりにも唐突すぎた










『今日の16時に○○空港来て』








「は?」







え、なん、え?

なんつった?




『だから、今日の16時に日本着くから空港に迎えに来い』


「なんでそうなる!」



急すぎんだろ!
え、待て待て、え、どゆこと?


『ちなみに今こっちは16時で、17時にここ出る。たぶんフライト14時間くらいだから。』



いや知らねぇよ。


一人で家に戻ってこいや




『な?いいだろ。ついでに泊めて』


は?泊める?


「いや、よくねえって。つかおまえの家は」

『家事すんのめんどい』


「………。」



迎えに来いの上に家泊めろって…

お前急にもほどがありすぎる…っつーか、



「俺仕事!」


今日とか無理無理
ただでさえ最近忙しいんだ


『抜けてこい』

「芸能界なめてんのか」


なにこの俺様ふざけんな!!!!
とんでもない言葉に唖然とした

絶対無理、と断固拒否しようとしたら遠くで「トウマー」とカタコト言葉が聞こえて。



しかも女の声




おい。女ってお前。




空港に女連れてお別れかなんかか?




「おい、呼ばれてんぞ」


『そうだな。んじゃ、切るわ。15時間後にまた会おうな』


「はっ、いやだからっ…!『ブチッ、ツーツーツー…』」





無理矢理終わらせられた電話



悲しい終了音が鼓膜を揺らす





……………いや、




ちょっと待て?







「ざっけんな泊めろとか嘘だろぉお」



迎えにはたぶんいけない
いやいけるはずがない



慌ててスケジュールを確認する



えっと、
今日は……




辿っていた指が止まった位置





今日の予定





9時〜11時 打ち合わせ





のみ。







「………なんでよりにもよって午前中だけなの………」






運がよかったのか
悪かったのか




午後はすっからかんのスケジュール





なんか





気分最悪すぎて寝れそうにない。

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