おいモブ男






初めてあいつに声をかけられたのが中1の時
初めてであるのに関わらず、この呼び方



…………はい?



確かに中学の時は普通の学生だった。
背は小さめで、髪はちょっとボサボサ

ついでに言うと少しアニオタ




そんな俺でもさ、特に仲良くもないあいつにそう呼ばれたときはさすがにカチンと来るじゃん?


なんだこいつイケメンだからって調子のってんじゃねーぞ、ってね。




まさか、そんなヤツと腐れ縁になるとは、


思ってもなかった。






中2、3もむかつくことに同じクラス
俺は見事に腐男子デビューしてたよ。ありがとう妹よ。

俺がそっち系の漫画読んでたら、あいつはマジでドン引いた顔してた。「なんだこの野郎やんのか。」って言ったら、「……や、別に。」と珍しく静かになってた。こいつ黙らせるとかBL漫画ってすげぇってなってめっちゃ崇めたよ、はい。


でもまさか高校も同じになるとは思ってなかった。



え?てかお前学年一位だったよね?え?
って不思議に思いつつもなんとなくそれが日常と化したし。



ああ、男子高校行きたかったな。
全寮制はないとしても、男子高校に行きたかった。


そう嘆いてたら 俺いるのに不満なのか、とか意味わかんないこと言ってきたし。そういうのは他の可愛い男子にでも言ってろ


で、気づけば俺も背が伸びて調子こいて外見磨いたらあら不思議!そこそこの男子高校生になってるじゃあありませんか。


女の子がめっちゃ見てくるからめっちゃ怖かった。気が気でないよね。


それに比べたらあいつニコニコーって王子様面してたな。まじで女の子騙されてる可哀想って思った。俺はあいつと違って女の子に真摯に向き合ったよ?メールが来たらちゃんと返信したし。冬馬に馬鹿にされてからしなくなったけど。もちろん彼女はできませんでした。はい。



まああいつが女の子に取り囲まれてる時暇だし(俺逃げてる)なんか良い材料(ホモ的ななにか)がないかなぁって思って背小さめでいつもある男子と仲良さそうにしてるのを毎日ニヤニヤしながら見てたら、なんかあいつ不機嫌になった。わけわかんねぇ。



こんなに美味しいBL他にあるか?爽やか美形×美少年だぞ。最高じゃねぇか。爽やかくんスキンシップ多いよぅ、あぁ、そこ胸!そこ胸だよぉお、とかハァハァしてたら爽やかくんをガン見してると勘違いしたらしい。



しばらく荷物持ちにされた。



あのね、ふざけんなよ?って思ったんだけど、怖くて何も言えなかった。こえーんだもんあいつの鋭い目付き。「逆らったら殺す」っていう目付き。狼。怖い。



あれだな。独占欲強かったのかもしれない
パシリ取られるの嫌、みたいな?


おいおいその独占欲他に活かせよ
BLに活かして俺に提供しろよってガチで思ったね。



そんで、ムカつく所もある(むしろそれが80%しめてる)かと思いきや20%は優しいところもあって。

人の体調とかをいち早く察してくれてた。


まあそういう面に関しては良い友人だったのかな?


頭良いし。俺勉強教えてもらってたし。






っていうのが、あいつの説明なんだけど…





あれ、なんで俺こんな事思ってんだっけ。






『………ん………しの………くん……しのはら…』




なんか俺誰かに呼ばれてる気がするし






ん?




あれ、



なんでだ?





俺さっきまで、



休憩室にいて、




それで、






「篠原くーん」



「あぁあっ!!?」







俺、寝てたんだ!!








俺を呼ぶ男性の声に一気に意識が浮上する







夢か!!!
道理であいつの事考えてたわけだ!!!
畜生最悪な夢だなおい!!!





「…おー」




俺の大声にびっくりしたような彼



目がボヤけて見えないけれど、きっと事務所関係の人
え、もしかして七時過ぎてる?いやいや有美ちゃんが呼びに来るはずだし





「すっごい元気だね」


「えっ、はい、いえ、すいません、七時過ぎてますか!?」




「んー、いや過ぎてないけど…」





脳を無理矢理おこして体を起こす


過ぎてないか、良かった




てか誰だこの人。




コンタクトを寝る前に外さなかった馬鹿な俺は、乾燥のせいか瞼が開きづらい上に白く濁っていて見えづらい
ちょ、誰だろ



「すいません、俺、今、目がちょっと…」

「え?」



重心を前に傾けてジィッと顔を見上げる
…面影はだいたいわかるんだけど、



誰だかわかんね。


ギリギリまで顔を近づけていったら、肩に手を置かれてソファに戻されてしまった



「?」




「………あのね、篠原くん」







近いよ?







目の前の人がそう言って苦笑した









ふわりと漂うタバコの匂いと、
最近聞きなれた優しい声






あ。




この人、





高田さんだ。




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