「…………あんた、顔死んでるわよ」

「え。うそーん。」

「・・・。」

「ごめんなさい。」




有美ちゃんの心配を笑って流そうとしたら睨まれた
怖ぇ。



そんな顔暗かったかなぁ…
モミモミと顔を揉んでみるけれどわかるはずもなく。



「インタビューと撮影でクタクタになっちゃった」



今日の仕事は雑誌の掲載物の撮影

あまり心配させたくないので、事実をすぐに言っておいた



調子こいて格好良いことばっか答えてたよ。







Q;普段何をしてますか?


A:BL小説漫画ゲームをすること。まじホモうめえハアハア



ではなく、




A:空いてる時間は大抵お店巡りですかね。今話題に出てるスイーツとかカフェとか巡りに行ったりしてます。



どやぁ

普通だろぉ…?




ケーキとかは実際好きだからよく行くけどね。
つっても大抵はほとんどサイト巡りしてるけど。もちろんホモ的なアレで。




女の子受けしそうな事を考えるのはちょっと苦労するんだよ



「今日はまだ夜も打ち合わせあるんだからシャキっとしときなさいよ。」



げ。



「え、なにあるの?」


「CMの撮影内容」


「……あぁ………」




そういえばそんなのあったな……



まだまだ続く一日に遠い目をする




今日は朝からいろんな事があった



つか朝のアレのせいで大分精神的にやられた。負傷した。
あいつが戻ってくるのか、って思うだけで先行き真っ暗



あとは昨日の夜に片付けで肉体的疲労もあったし?



今は夕方





差し入れをもっちゃもっちゃ食べてたら眠くなってきちゃった
昨日寝たの遅かったしな…

あの飲んべえが…



うつらうつらと目蓋を閉じ始めたら有美ちゃんが口を開く



「そういえば昨日どうだったの?」


「………きのう……?」




ちょ、俺ねむいんですけど
まさかの質問来たよ




「志水と酒飲んできたんでしょ?」


「あぁ…」



ぶっちゃけかなりどうでも良い話に力が抜ける

酒飲んできたっていうか飲んでったっていうか



「俺んちで騒いでっただけだよ」

「…あんたの家で?」



驚いたような声色の有美ちゃん

まあ俺普段いれないしね、家に。




「そう。高田さんも一緒に。」

「高田……?」

「志水が誘って、そんで俺が晩飯?ツマミ?作って酒のんで帰宅ー」



なんでそんな事知りたがるんだろう



俺そんな疲れきった顔してた?確かにねむいけど
目がしょぼしょぼするけど



「ふーん」


不思議に思ったら、含んでるような何かよくわからない声で返事された
チラリと有美ちゃんを見てみるけれど顔が見えない

なんなんですか



「俺寝てても良いかなぁ」



我慢できない。まじで眠い

ソファの方によたよたと歩み寄る



「七時には起きてね。」

「・・・。」




笑顔で答えてきた有美ちゃんにゾッとした


………え、何か良いことあったのかな…


気持ち悪い




「何かあった?」

「は?」


ジャケットをもそもそ引っ張っていたら有美ちゃんにまた質問された
足をぶんぶん振ってスニーカーを脱ぐ


「昨日の夜、何もなかったの?」


昨日の夜………?
なにって?


「いや、なにも、特には…」


酒飲んでただけだしなぁ


正直にそう伝えたら呆れたようにため息をつかれた

え、なんで?



「つまんな。」


「・・・・」




はい?



「ま、いいわ。七時にまた起こしに来るから」



一方的に俺に言って、ヒールの音を響かせながら部屋を出ていった有美ちゃんの後ろ姿を黙って見送る


………何を、期待してたんでしょうか彼女は




考えれば考えるほど思い付くのは良からぬこと

いやいやまさかね
まさか有美ちゃんが腐……いやいや



考えるな、俺。


これはパンドラの箱だよ。まじで。





頭をブンブン振って頭からすべてを抜け落とす



……まずは寝よう。
まじでねむいし



目蓋を閉じたら真っ暗になる瞳の奥





気づいたら、ものの5分で爆睡してた。


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