恵まれない朝





翌朝





結局二人が帰ったのは1時くらい
迎えを呼ばせて、泊まりそうな勢いだったのを無理矢理帰していった


さすがの高田さんも志水の飲みっぷりにはついていけないみたい。

あいつの酒好きさは異常だと思う
お陰で俺も頭が少し痛い


ダルい体を起き上がらせて、スケジュールを確認する


爽快じゃない頭
それに比例して髪の毛もモッサリとしてるよ。
すごくダサイ。


コンタクトの俺は眼鏡のまま歯磨きシャコシャコ



今日は11時までにスタジオ行って、撮影ね。
インタビューだっけ…、うん。そうだな。



ボロ出ないようにしよう。





今は8時



まだまだ余裕。



欠伸をしながら郵便受けへ。
手紙とかは事務所を通してくるけれど、スポーツ新聞とか芸能系の新聞は読むようにしてるからそれを取りに。有美ちゃんが現状知っとけってうるさいし。




あ、あの共演者さん結婚したんだ


TOP記事には電撃結婚という文字が。



「ふぇー…。」


28で結婚。普通か。



…俺は結婚できねぇんだろうなー。
女性にあんま興味ねぇし。


一生独身。
それはそれでまあいいか。


とりあえず口の中すすぎに洗面所へ。

ついでにシャワーも浴びた



風呂上がってからリビングのゴミ達を片付けていく
空き缶の数がすげえ。なんじゃこりゃ。
ほとんど志水のなんだろうけど…。もう二度と家に呼びたくない。


思わずため息が漏れた



掃除が終わって一服。
9時30過ぎ


さっき作った紅茶をゴクゴク飲みながら新聞を捲る
コーヒー飲めないから紅茶であって、別に格好つけてる訳じゃない。コーヒー飲めないのも格好悪いけど。


「ん?」


さっき郵便受けから取った手紙類の中にはなんだか少し分厚めの封筒が。


………。

事務所からかな、って思って裏を見てみるが名無し。


書いてあるのは俺の住所とたくさんの切手にたくさんのハンコ


「・・・?」


え、なんだろうコレ


カチャリ、と紅茶を置いてジ…と封筒を見つめる



上にあげて光に透かしてみるが、特に違和感なし。
なかに何か入ってるのは確かだけれど。



「んー…。」


まぁ大丈夫か。
さすがに危険物はこんなのには入らないし。


ちょっとドキドキしながら、ベリベリと封筒を破ってみる




「うわ。」


中身を出してみた瞬間、思わず声が漏れた。



「……え、」



理由は、たくさんの写真がバラァと机を埋め尽くしたから。




え、え?



なんの写真?
パチクリしちゃう俺の目


それにしても多いな…
30枚くらい?もっと?



その中の一枚を拾ってみると、なにやら風景写真




「………は?」



他のも見てみるが、どこのかわからないお城の写真やどっかの村の情景

俺でもわかるのは、日本の物ではないということ。




「???」


ワケがわからず、全部の写真を見ていってみた


橋から溢れる綺麗な朝焼け
こちらまで涼しくなってくる外国の子供達の水浴び風景
屋根上で寝てる黒と白の猫
時計塔に反射している太陽の光
緑の中に一輪だけ咲く真っ赤な薔薇



など、


どれもこれも、感嘆の息が漏れるような写真ばかり






これって…………?





不思議に思いながらも頭にチラつくある人物


最後の写真には青のマジックペンで「back→」と書いてあって。



……裏?



ペラ、と裏を捲る




すると、




『来週な。』






真っ赤な乱雑な字で、それだけが書いてあった。






「…………まじかよ。」





その言葉だけで何の事だかすぐに理解してしまう自分が憎い


あの意地悪に笑うあいつの顔が声と共に溢れ返ってきた




朝から、気分が悪くなった瞬間。




[ 28/86 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]