8(島崎SIDE)

(島崎君目線)



あの野郎絶対狙ってやがった。



篠原さんの言葉を聞いて一気に苛立ちが急上昇する。ふざけやがってあのストーカー野郎




『島崎ー。お前篠原くんの家行ったんだってなぁ』

『そうっすよー。飯めっちゃうまかった』

『ふーん。…ま、それぐらいで優越感浸ってんじゃねーぞ?』

『…はぁ?』




……あの時のあのムカつく笑顔はそういう事だったのか。





ディレクターにコネ使ったなあいつ




「あ、でもね、俺も今日初めて知ったんだ。」



慌てたように付け加える篠原さん
俺の顔色を何故か伺いながら言ってきた


上目使いかわいなぁ、もう…!


……じゃなくて、



「ふーん、俺も出てみたいなぁその番組」

あいつになんか負けてらんないし



「島崎くんなら出れるよ。」


余裕余裕、と笑う篠原さんにちょっと苛立ちが飛んでった
ほんと、この笑顔はすげえ破壊力だよ


それにしてもあいつしつこいな



「?そういえば島崎くん、収録大丈夫?」


「あ。」



そうだ忘れてた。
時計を確認するとそろそろ危ない



「すみません、疲れてるときに引き留めしちゃって…!」

篠原さん優しいから…。



「ううん、全然。次の収録頑張ってね。」

「ありがとうございます!」

「え、島崎これから収録なの?」

「ああ、はいまぁ………」



…………ん?



どう見ても篠原さんのじゃない声が二人の間に落ちる
俺の後ろ辺りを見上げて目を見開いている篠原さん




この声………。





ま さ か





「あ、高田さん」



なんでこいつがここにいるんだよ。




「今俺篠原くんと同じ収録してたからな、ね?篠原くん」

まるで俺の心情を読んだかのような言葉



「あ、は、い。そうですね」

「それはお疲れさまです」


くっそこいつナチュラルに篠原さんの肩に腕回してんじゃねぇよ殺すぞ
ニヤニヤと笑ってる高田さんがムカついてしょうがない



「ま、お前は仕事頑張れや。じゃ篠原くん帰ろう」

「!?」

「え、ちょ、あの…」



こいつ…篠原さん独り占めする気だ…!

思いきり高田さんを睨むけれど鼻で笑われて終了。
くそ!俺仕事あるし!


あからさまに俺から遠ざけようとしてる




「俺このあとマネージャーと話あるんで…」


「え?まじで?」



ざまあああ高田ざまぁああ
呆気なく断られた高田さんが不憫すぎて仕方ない

さっきの高田さんのように鼻で笑ってやる


「え?」

「なんでもないですよ。」

そんな俺の様子に篠原さんは目をパチクリした。可愛い。




「あ、それじゃあ俺仕事行きますね。さよなら篠原さん、高田さん」



とりあえず、まあ、ひと安心
笑いが吹き出しそうになるのを必死に押さえて二人に頭を下げる



「うん、頑張ってな島崎くん。」

「……!」




ふわり、と頭に触れた温かさ



まさかの篠原さんの手で。




っ、


「は、はい頑張ります…!」


篠原さんに頭撫でられちゃった…しかも今日二度目
高田さん、すっげぇ不機嫌そうな顔してるし。ざまぁみやがれ。
今にも舌打ちしそうだな。



「ん。」


俺のお礼の言葉にフワリと微笑む彼
きっと俺が後輩だからこういう顔をしてくれるんだろう


それはそれで幸せ。






あー…でも





今度は『可愛い』じゃなくて『格好良い』って思われたいけど

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