照明がかなり眩しいスタジオ
そして数台に及ぶカメラ


別に、普通にバラエティーにだって出てるし慣れてる。
慣れてる…けど…



「まさかこういう形で篠原くん共演することになるとはねぇ。」


「あはは、本当ですね。」



爽やかな笑顔を向けてる高田さん
…に対して俺はひきつり笑顔



素直に喜べない自分がいる。
何故だ。




撮影内容は、ゲストと協力して二人で完成させる
で、雑談とかも交えてやるらしい

話題とかははカンペが出してくれるから心配してないけど……



高田さんと二人だけってのは、なんかさすがに緊張する。



カメラのランプが点いたところで撮影開始
俺がまず挨拶と自己紹介を始めて次いで高田さん



今回、なんで俺みたいなモデルがこんな番組に出ることになったのか。
有美ちゃん曰く、若い女性などの興味を引いて視聴率アップを狙うためらしい。ゲスト高田さんだもんね。



「いやー、第一回目のゲストが俺なんかでいいのかな。」

「何言ってるんですか。むしろ高田さんだからこそなんじゃ…。」


苦笑しつつさっそく料理に取りかかる。
高田さん使えば女性の視聴率なんてホイホイだよなぁ…イケメンだもん。すごい隣に居たくねぇ!俺より背高いし!



「高田さんは普段料理とかするんですか?」


「んー、最近忙しくて自炊はあんま出来てないかな。だから家事出来る子とかすごい尊敬するっていうか、好みっていうか。」



…………はいー。タラシ。

気を取り直して質問したというのに、激甘スマイルをこっちに向けられ撃沈


てかこっち見ないでカメラ見たらどうなんですか。
女性アシスタントさんなんて、生で見たから悶えてますよ。


俺なんて大人しく玉ねぎ切ってるのに。
なにこの差!


「…好きな人のために努力してるってだけでキュンてしますもんね。」


高田さんの笑顔に押されながらもなんとか保って笑顔を向ける


つか玉ねぎ染みる。おい玉ねぎふざけんな
シャキシャキ切りつつ玉ねぎを罵倒


ぐず、と鼻を啜ったのに気づいたのか、高田さんが笑った


「目、染みたの?」

「ちょっとだけ………って、」


近い近い近い!!!!
近いよ何事!



俺の顔を覗いてきた高田さんとの距離にギョッとする

ふわり、と微かな煙草の匂い付き

だからその匂い頭が痺れそうになるんですけど…?



慌てて体を引くと高田さんがフッと口許を緩めた
な…なんですか……


「俺人参で良かったわー。」


クククと笑ってる高田さん
…まあ……高田さん涙流してるとか俺想像できないけど…



てか、その顔絶対俺の反応見て笑ってるよね。




数分後下準備完成しここからが本番



「はい、下準備が完成したところで軽く炒めていきます。最初は牛肉からやっていきまーす。」

「はーい。」



カンペとレシピ通りにことを進めていく
高田さんもなんだかんだ言って一般並みに手際は良い。野菜だってスイスイ切ってたし

イケメンは完璧だってか…っくっ…。
なんだそれ羨ましいな!



「篠原くんは普段から手料理?」


「ええ、まあ。作ってくれる子いないんで。」



苦笑しかでない。言ってて本当に悲しくなる。

「えー意外だなあ」なんて驚いてる高田さんは実に優しい



「そんなこと無いですよ。…あ、色変わり始めたら野菜もいれましょう。形崩さないように注意してくださいね。」


「あ、もう入れていいのね。」


俺の言われた通りせっせと行動していく高田さん

その間俺は隣でポイントとかの説明。
まんま表示されたの読んでるだけだけど


説明終了後、次はどうしようかと思ってチラリとカンペを見てみると「理想の子は誰」という質問が。…えー……。

それに気づいたのか高田さんも苦笑を浮かべている




「あー…高田さんの理想像は、どんな子ですか。」



おいおい。いいのかこんな質問して、とか思いつつ聞く


あれじゃないか?結構生々しい答えが返ってくるんじゃないか?

島崎君みたいな子とか島崎くんとか島崎くんとか




「そうですねー…。パッと見クールそうに見えるんだけど実はほんわかしてるとか…」


「…ほぉ。」



あれ?モロ島崎くんじゃねこれ。
パッと見クールイケメンだけど実際すっげえほんわかしてますよね。え?



「あと気遣い上手とか?笑顔が自然だとか。そういう子好きです。」


「わかります。」
「え?」


「あ、いや俺も、そういう子、いいって思うって意味です。」


ちょっ、まんま島崎くんじゃん!思わず返事しちゃった恥ずかしい。でもさ、島崎くん超気遣い上手じゃん!笑顔とか天使じゃん!ピタリ賞じゃん?じゃん?うっわまじ飯ウマー!



ハアハアと心の中で荒い息をしつつも平常心平常心



今日の収録で一番の萌え来ました来ました



「篠原くんは?」

「…え、俺ですか?」


まさかの返し技
ここで俺かよ!ぶっちゃけ最近恋<BLだからなぁ


現実あんま見てないし…



「歳とか、見た目とか。」


あー。歳か。


「そうですね……んー、同い年がいいですかね。まぁ話が合えば年上でも年下でもいいんですけど。」



そんな俺の答えに「同い年か」と苦笑してる高田さん

付き合った女の子が同い年ばっかなだけで特に決まってる訳じゃないけど。



「じゃあ、年上と年下だったら?」

「えー…」



俺に顔を向けながらニヤッと笑った高田さん



なんだその悪戯っぽい顔

いちいち無駄に格好いいのやめてほしい。



んーでも年上か年下かかぁ。うーん。
あんま考えたことなかったな…

でも年下って可愛がっちゃって恋愛視とかできなさそう。


「年上ですかねー。年下は可愛く思えちゃうんで。」

「年上?まじで?」


「…どっちかっていったらですけど…」

「そっか。」


え、なに…


なぜか、今度は引いちゃうくらい爽やかに微笑まれて戸惑う
イケメンフラッシュパネェ…!!

眩しい!眩しいぞ!!




「……えーとじゃあここで調味料類いれてきます、よ。」



イケメンフラッシュをこれ以上浴びまいと視線を手元に戻す

間近でこれ食らってみろ、女だったら失神するぞ。


分量を説明しながら用意された酒とかだし汁とか入れていく



なんでかわからないけど、高田さんはさっきより積極的になった。なんなんだ。自ら動いてみりんとかいれ始めたし。おいおい。



カメラにもイケメンフラッシュが飛び交ってますよ。

女性アシスタントの方の顔真っ赤ですよ。


このイケメンどうしようとか思ってたら、
「はいカット」っていう指揮監督さんからの声が。







「えーとじゃああと煮つくの待つだけだからそれまで休憩入っていーよ。」


まじか!やった!

「わかりました。」



プロデューサーの声に安堵の息を溢す


隣にいるの居たたまれなかったもん。
一気に色気ぶわぁってなられたし。



「意外と料理番組ってたのしーね。」



「え、そうですか…?」



休憩に入って、高田さんが笑いながら言ってきた
俺としてはあんま賛同できないんですけど…


俺料理に全く集中してなかったし。手が勝手に動いてたようなもんだよ。


説明とか、大雑把だし。あ、でもあとで編集で画面横に写ったりするのかな。



「しかも篠原くんのエプロン姿見れたし?」




はい?



「い、意味わかんないですよ」



世辞。それともからかわれてるのか。
むしろバカにしてんのかなぁ…!



「あんま見れない篠原くん見れただけじゃなくて、なんか一生懸命野菜切ってたり説明してたりして可愛かったし。」


「いやいやいや!!何言ってるんですか!」



全力否定だよ!



可愛いって…なにそのあり得ない言葉。やっぱ俳優って演技力すごいからさ、にっこり微笑まれたら嘘なのかがわかりづらいね!


嘘に決まってるだろうけど!!!



「フォローしてくれてありがとうございます……」



「フォローじゃなくて本音だっつーの。篠原くん謙虚だからなぁ…」



クスクス笑う高田さん



なおさらあり得ん。
フォロー以外の何者でもない。



てか、本番前と違ってなんでこんなテンション高いんですか。



あ、本番前と言えば…


「……高田さんってタバコ吸うんですか?」

「え。………匂う?」



高田さんが俺の言葉に驚いたように目を見開く
匂うっていうか


「あ、えと距離近かったりした時ふわってして…この前までしなかったなぁ、って思って。」


不思議と甘く感じるからそれが謎なんだけど。

そういう銘柄?なのかな。



「あー…。いや一回禁煙したんだけど最近また始めちゃってさ。色々あって。」

「色々…」


ストレスかな。
ちょっと心配。


「あるヤツにイライラして、気づいたら吸ってた。」


「・・・。」


前言撤回

口だけ笑ってる高田さんだけど、今さりげなく怖いこと言わなかった?

…た、高田さん…がイライラする相手って……。

怖いぞ。なんか怖いぞ。


「篠原くんはタバコの匂い嫌い?」

「いや、別に嫌いじゃないですけど…あ、さっき高田さんからしたタバコの匂い、微かに甘い匂いしたんですけどなんて銘柄ですか?」


なんか頭が痺れるっていうか、大人っぽいっていうか。
いい匂いっていうか…

タバコ吸う気はないけどちょっと気になる


「んー…と…」

けれどもなんだか戸惑ってる高田さん


え?


「え、あの…」
なにか不味いことでも…。


「甘い…かはわかんないけど、銘柄は普通だよ。赤マル。マールボロ。」

ああ、あの赤い模様の奴か。


……じゃあなんで甘いんだ。
良い匂いしたし……


「香水つけてます?」

「つけてねーけど。」

即答。


ん?

どゆことだ。


タバコの匂いでは絶対なくて、香水でもなかったら…



「俺の体臭じゃね?」


苦笑して首を傾げた高田さん


・・・。え。




確認がてら、「ほら」と出された腕あたりの匂いをかぐ


作られた匂いじゃなくて、人独特の甘い匂い



「えー、と…」


つまり、俺…

高田さんの体臭にドキドキしてたってこ…と…………


・・・。



っだあああああああッ!!!!!





「す、みません!!!っそ、っか。高田さんの匂いだとは思いませんでした!」


恥ずかしくて顔が熱い!俺は変態か!!
もう変態で良いよ!!

必死に手とか頭を振って謝罪
引かれる!!どうする!俺!


「いや気にしてねーよ。むしろありがとう。」


イケメンスマイルで笑った高田さんに余計恥ずかしい思いが沸く
クスクスと微笑みながら俺の頭をぐしゃぐしゃしてくれた


帰りてぇ。



人の匂いを誉めてたなんて……まじで、

恥ずかしい。


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