おれ



俺には、かなり大きな秘密がある。




『篠原 快 (22)

俳優かつモデル
ダークブラウンの髪に174センチの身長

バラエティー番組でも人気を誇っている超美形芸能人
時おり見せる蕩けるような甘い笑顔に全女性のハートが射ぬかれっぱなし!


今もっとも旬な男性です!』





ズラズラと大袈裟に書かれた文章と、
たくさんの自分自身の写真




俺が芸能界に入った理由を、普通の人が当てるのはかなり難しいと思う。

完全に俺の願望だし。





なんだかんだ言って、芸能界入り1年目です。



雑誌のページをめくっていく


街中の突撃インタビュー的なものには、





『カッコいいのに可愛いってのが良い!なんか中性的?とにかくヤバイ』
『男性なのに綺麗ですよねぇ』
『素敵!!!あの笑顔を間近で見てみたい!!!』



などが書いてあって。




そこまで褒められる顔でもないんだけどなぁ…。

画面を隔てて俺を見る人たちは何もわかっちゃいない。



本当の俺を知ったらどれくらい落胆するか。
特に普通の女の子はね。



ハァとため息をついて伸びをする


俺の斜め後ろでは、鏡越しにマネージャーがジト目でこちらを見ていた



「なあに、有美ちゃん。」

「なあに、じゃないわよ。人気がやっと出てきたってのに随分と余裕なのね。」



ヒールの音を鳴り響かせながら楽屋を歩く彼女は俺のマネージャー

とても有能な人で俺の第二の母親的存在



彼女の性格は、

ちょっと…いや、
かなり厳しいかな。


「確かに有名になるのは嬉しいけど、睡眠がとれないくらいの仕事が欲しいわけではないよ。」


今日寝たのは3時間
昨日は4時間だった


俺の唯一の娯楽を全然楽しめることができない


携帯でいつものウェブページを開く




……更新は…

されてない、と。



「忙しいのは今だけよ。すぐに慣れるわ。…さ、次の番組の収録があるんだから早く移動しましょう」


俺の嘆きの声をいとも簡単に流す彼女

まったく…。
有美ちゃんも忙しいはずなのになんであんなキビキビしてられるんだろう


「はーい。」


ため息を吐きながら立ち上がった

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