牙をむく番犬






しばらくして、悠哉の存在を思い出して慌てて携帯を取りに行った。


俺が寝てた隣のベッドには上半身裸で寝転がってる獅子尾先輩の姿が。
・・・この人、風邪引くんじゃねえかな。




「倉田なんて?」



椅子に座り直したところで藤が聞いてきた

相変わらず、通知がすごいです。



最初の方からざっと見てみると、



<買い物終わった?>

からの

<ねえ、長すぎない?>

<携帯忘れてるわけじゃないでしょ?>

<ちょっと大丈夫?>

<駅まで迎え行こうか?>



というまるでちょっと頭の中が怖いことになってる彼女のようなラインが続いていた。
しばらくして夜11時を過ぎたあたりから、



<いい加減しろよ春也>



という、ゾッとするような文まで。




ひ、


ヒェッ…。





「倉田って、こいつといつも一緒にいる奴?」

「そう。幼馴染らしいよ。」

「こいつの幼馴染とか大変だな。」



てめえこの野郎
なにちゃっかり俺の悪口言ってんだよ



けれど、そんなことよりずっと俺にとってヤバイ状態が起こっている。




「悠哉、だいぶご立腹の模様。」



藤にラインを見せ、どうすればいいかの助けを請うた。
ズラーっと永遠に続く悠哉のターンラインを見せていく。


昨日ねる瞬間に送ったラインに対しては、


<は?なんで藤君?>


とかいうラインが続いていた。


あいついったい何時まで起きてたんだろう。




「とりあえず電話してみたら?」




藤のごもっともな意見に従うことにする

・・・まあ、それが一番いいわな。







今はだいたい朝の10時

悠哉起きてるかな…。


と思いながら電話をしてみたが、

1コール目で出た。



「あ、もしもしゆう…『春也?』」



俺の声ぶった切られた。


電話越しのせいなのか、あまり聞いたことのない悠哉の低い声
電波悪いせいかなとか都合の良いポジティブシンキングをしてみるけど、



絶対ちがう。


これまじおこぷんぷんまる



『俺にまず、言う事あるよね』


「・・・・・・ハイ。」



あの悠哉が、めちゃくちゃ怒ってるよ。

うわ、どうすればいいんだ俺・・。



「あの、ごめん、俺昨日いろいろあって・・・。」

『連絡取れない程の事が?』

「あ、…うん…その・・・。」

『しかも藤君と一緒にいるってどういうこと?まじで言ってる?』

「あ、それは、うん、ほ、本当です・・・。」


悠哉のマシンガンが止まらない。
それほど怒ってるってことなのか。


消え入りそうな声でボソボソ返事をする俺にニヤニヤしてる会長。
くそ!!他人事だと思いやがって!!!



『なんで藤君といるの?』

「話せば長くなるんだけどね、偶然その場所に藤がいて・・・ついでに会長も・・・」

『…会長って辻先輩?』



ああ、もう、絶対これじゃ収集つかない、どうしよう



もうこれ以上色々状況説明してったらとんでもないことになると思った俺、


即座に藤に携帯を投げた



なんで俺、みたいな顔してる藤にめっちゃ頷いてお願いする

これはもう藤に任せるしかない。あと悠哉怖いし。



そんな俺のビビリ顔を見たからかしょうがなく携帯を受け取る藤





「・・・ごめん、電話変わった。藤だけど、倉田?」

『・・・・藤君?』

「そう。一応ハルをあと1時間以内に帰させるからその時直接話した方が早いと思う。」

『会長がいるってのもマジ?』

「本当。俺の先輩が馬鹿ばっかりで色々あったんだよね。」



淡々と悠哉と会話する藤
うわー、助かった、藤がいてよかったと思いながらその様子を見守る


そして、1分も経たないうちに電話を終わらせてくれた
藤すげえ・・・。



「あ、ありがと藤・・・。」

「いいよ。倉田一時間しないうちにこっちの駅にまで迎えに来るって。」

「は?」



ど、どういうことだ…?
こっちの駅までくるって電車乗ってこねえとなのにそんな時間間に合うの?



「ラインの既読がついた時点で寮出てたらしい」

「まじかよ…」



想像以上に悠哉が悠哉だった。




ーーー


続きます。
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