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そんな時、隣の部屋の扉が開いた音がした。


そちらの方を見ると、会長と同じようにダル着の上にいつもより姿勢が崩れている藤が立っていて。



ふ、藤だ…!


一度、救世主が来たと喜ぶが、すぐに会長の一言を思い出して絶望する


そっ、そうだ…


俺藤と…



・・・。

うわあ。




「…おはようハル」




まだ眠いのか目を細めながら微笑む藤。
朝から、謎の色気が漂っている藤にウッと声が漏れる。


パッと見た感じ藤はなんの動揺も顔に見せていない。

けれど、俺は藤とは違う





「お、おはようございましゅ」

「…?」



頑張って返事をしたものの、思い切り噛んだ。



か、

噛んだーーっ
色々意識しすぎて噛んだーっ!


なんかドギマギしすぎて自分でもおかしなことになった事は自覚している


藤も俺の様子を見て「なんか変だな」と感じている様子。


けれどすぐ気付いたのか「ああ、」と声を漏らした。




「昨日のキス意識してんの?」

「身も蓋もない言い方しないでください!」

「寝る前は普通だったのに」


そう言って俺の隣に座る藤。

あれは酔ってたのもあったからね


でも俺今普通だから。
つか隣に座るんかい



「キスなんて酔った勢いでよくするって言ったじゃん」


藤にそう言われて、会長の方に視線を送った。
「俺かよ」みたいな顔した会長。他に聞くやついねーだろーが。



「俺はしねえ」

「…まあ俺もしないけど」


嘘じゃねえか!!

会長と藤がサラッと答えた所で俺は机に沈んだ

俺はうっすらだけど覚えてるぞ
キスをされた後シーンとした室内
注目される俺

よりによって藤と…
かわい子ちゃんとじゃなくて藤と………!!!!


「みんなみんな藤のせいだ…」

「言ったじゃん、みんな酔ってるから覚えてないって。ねえ辻先輩、覚えてないよね?」

今度は藤が会長に話題を振った

わかりやすく眉間にしわを寄せる奴。非常に面倒くさいという顔だ




「……そうだな」

「・・・」



この人記憶飛ぶまで飲んでただろうか。

戸惑う俺を他所に、藤が「ね?」と無理やり俺を信じ込ませてきた

単純な俺、「そうかもしれない」と頷く。むしろそう思わないとやってられない。

いいや、どうせもうここの人たちと会うことないだろうし


「そうだハル、気持ち悪くなったりしてない?頭痛とか」


うまく話をはぐらかされながら、藤が心配そうに俺の顔を覗いてきた。ちなみに俺机に沈んだまま。


「あ、うん、吐いたらすっきりした。頭は少し痛いけど」

「え、やっぱり?大丈夫だった?」

「会長が、介護してくれた」



こいつに借りを作っちゃうなんて俺の汚点だぜ畜生

会長は特に気にしてないみたいだけど



「あ、つか藤ありがとな。下着とか…歯ブラシまで。いくらだった?」

「別にいいよ俺の奢りで。先輩たちが無理やり巻き込んじゃったし。」


藤が小さく笑った。
おいおいやめろ。発言までイケメンじゃねえか。今に始まったことじゃねーが。




「奢りは悪いから、せめてお金を…」

「あー…じゃあ昨日のあれでいいよ」

「?どれ?」

「キス代。」



「・・・。」


「冗談だって」




今もしコーヒー口に含んでたらまた吹いてたわ。


お前そういうキャラじゃねえだろ






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