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風呂からあがったら、会長がキッチンでタバコを吸っていた。
起きた時と同じ黒いTシャツに下スウェットの恰好で、寝癖も気にせずに。



おいおい いいのかよ仮にも学園で王子様(笑)って言われてる奴がそんな感じで…。



他の人たちはまだ寝てるみたいでソファに寝てる人やら床で毛布に包まってる人と色々いた。
一晩経って見慣れたと思っていてもやっぱりカラフル頭が多くて普通に、怖い。


奴ら起きる前にはよ帰ろ・・・。




「あー…シャワー、どうもでした」

「おー。」




仕方なく、本当に仕方なく会長にお礼を言う。
つか藤とか獅子尾先輩起きてないってことは俺こいつと二人きり?

うげえ…嫌すぎる
昨日から俺が何したって言うんですか神様。



「コーヒーなら出せるけど」



会長がタバコ片手に、コーヒーポットを掲げた

飲むか?ってことか・・・
こ、こいつからコーヒー貰うのなんか嫌だわあ〜うわ〜

でも喉渇いてるから背に腹は変えられん



「い、ただきます」

「お前意外と敬語使えんのな」



…こいつ俺を完全に馬鹿にしてるよな?

呑気にコーヒーを入れてる奴にタックル決めたくなる気持ちになるが我慢してテーブルに座る。


他の人たち見事に起きないな。
何時まで飲んでたんだろ。




「気持ち悪さは落ち着いたのか?」



そう言って会長が俺の斜め前の席に座ってきた

同時に置かれるコーヒーと砂糖ミルク類



「大分マシ、です」

「盛大に吐いてたもんな」



そう言って人を馬鹿にしたように小さく笑う会長
おい、笑うな。
つか思い出させるな。



ズズズ、と会長がいれたコーヒーを飲む。・・・苦いから砂糖とミルクいれよう。





「ところでお前さ、」


「・・・なんすか。」


「藤とデキてんの?」




「ぶっっふぁあっっ!!!」




会長の突然のふざけた発言により口の中のコーヒーがすべて出てきた

それに対して「汚ねえな!!!」とキレる会長 おいゲロよりはマシだろ!




「俺と藤が!!?んなわけないねーだろ!その目は飾りか!?」


「なにムキになってんだよ」


「あんたが変なこと言うからだろ!」



いそいそと机の上をふきながら騒ぐ
俺と藤がデキてるとかなにがどうしてそうなった

勘違いにもほどがあるぜ!



「あいつが人目気にせずキスするなんて珍しいからな」



会長のその呟きで、原因を知る。



あっ…
昨日のチュー…



「・・・」



会長の一言のおかげでモワンモワンと蘇ってきた昨日の記憶。
色っぽい藤の目に、熱い唇。
手も足も出なかった。


・・・いや、
いやいやでもね


藤だって酔っ払いの男同士のキスなんてしょっちゅう?って言ってたし?


「あ、あんただって、あれだろうが、付き合ってもない可愛い子達とそんくらいたくさんしてんだろうが!」



なんか話の流れがずれた気がするがそう反論した

案の定眉を寄せる会長



「はあ?何の話だよ。」

「う、うう…これだからイケメンは…」

「・・・まだ酔ってんのかお前」



気づいたら敬語も外れて俺だけの世界に浸ってしまっていた。

憎い程整った顔を険しくしながら俺を見ている
やめろ俺を病人みたいな目で見るの



「つか、俺本当に藤と付き合ってないから。可愛い男の子か神崎先輩がいいですから。」


「・・・。」



もはや、会長は呆れて何も言えないらしい。
コーヒーを飲み始めた。


「…お前ホモなの?」

「女の子も好きですが?」


ホモではない。
というか可愛いオア綺麗だったら男だろうが女だろうが俺はいける。



「じゃあなんでこんな学校来たんだよ。」


「・・・。別に、あんたにゃ関係ないだろ・・・」



何故かモテないからなんて言えない。
そう思いながらまたコーヒーを飲む。
・・・もう一杯砂糖いれたら笑われるかな。



「そういうあんたは、ホモなのか。」


「んなわけねえだろ。つかいつの間に敬語外してんだよ。」


「え、ホモじゃないの?」


もう会長に敬意を表する気にもなれなくてガンガンタメ語で行く俺。
それよりもこいつがホモじゃねえのに驚いた



「ヤリチンの癖に?」

「お前そういうけど俺が校内で形振り構わず男抱くと思うか?」

「・・・・余裕で思う」


だって親衛隊の規模だってナンバーワンだし、
抱かれたい男ナンバーワンだし、
ヤリチンってみんな言ってるし、(童貞チーム内で)



「抱かねーから。そもそも俺女が好きだっつーの。男はあれだ…最終的にどうすることも出来なくなったら抱くけど。」


すげえしょうがなく、って感じで言われた。
ああ?っつーことはあれか?興味ないけど性欲がやばくなったら抱いてるってことか?



「どっちにしろ最低じゃねーか!!」

「うるせーな…あっちから来てんだからいいだろうが別に・・・。」


良くねーよ!!
あーあー嫌ですねーそうやってイケメンは流れ作業のように人を抱いていく!!
その子たちはお前の性欲処理道具じゃねえんだぞ!!




「あーもう俺あんたまじ嫌いだわ。あんたなんか知らん」

「お前恩を仇で返してきやがったな」

「俺の事抱き枕にした分チャラですう」

「してねーよ。何勘違いしてんだてめえ」


勘違いじゃねえし。
考えただけでもゾッとするけどな。



「つかお前、一度もしゃべったことない時から俺に嫌悪感抱いてたよな」

「なんで知ってんの・・・」


え、きもい
もしかして俺のストーカー?モテる男は辛いな


「おい調子乗ったこと考えてんじゃねーぞ。」


眉寄せられて舌打ちされた。
その表情に一瞬だけひぇっとなるが、どうにか耐える
別に…怖くねーし…!



「お前俺を見かけるたびに熱い視線送ってただろ。」

「あんたの方が調子乗った発言してんじゃん!」

「俺のは事実だろ」


・・・。まあそうですが。
意味が違いますよ。



「・・・・・あんたは、いつも、神崎先輩の隣いるし、なんか、顔がいいってだけでチヤホヤされてるし、ヤリチンだし、」


「・・・お前が童貞だってことは充分わかったからそのヤリチンってのやめろ」



会長がうんざりした声でそう俺に言ってきた。

おいお前の方が今すげー失礼な事いっただろ!!



「ど、どど童貞言うなー!!」

「人の話聞けないような奴のお願い聞くわけねーだろ童貞」

「あああー!!!もうやめろー!!」


俺だって好きで童貞やってんじゃねーんだよー!!!
机に突っ伏してわんわん騒ぐ
それを見ても動じずコーヒー飲んでる会長

なんだこれ
俺ばっかり馬鹿みてーじゃん

会長ノーリアクションだし。



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