最悪な朝

朝。





何時かわからないけれど意識が一気に浮上した。

同時にやってくる気持ち悪さと頭痛。


うあー…
なんだろ、すごい気持ち悪い

頭もなんかガンガンするし


俺昨日何したんだ、

…………っけ




「・・・」




ふと瞼をあけたら真っ黒な世界が広がっていた。その上やたら息苦しい。

瞬きをして状況を理解しようとするがそんな事より気持ちが悪すぎる

…ああ、そうか俺昨日すげえ飲まされて…


「いってえ…」


ズキズキする頭を抑えようとする
が、腕がやたら重い

なんだこれ…


もう一度目を開けて状況を確認する。どうやら俺はこの黒いものに右半分埋もれている状態らしい。


なんか、…布っぽい。というかTシャツ。





…誰のだ。





「…あ…?起きたのか…?」


身動ぎする俺にその黒Tの主が声をかけてきた。ひどく掠れた声。藤の声では、ない。



嫌な予感がする



頭を恐る恐るあげて目に飛び込んできたのはあの金髪と美貌の持ち主。眠そうな顔でこちらを見ている



!?



「っか、むぐぐっ」

「他の奴ら寝てんだから、叫ぶな」


会長!!!?と叫びそうになった俺の口を一瞬で封じた。さっきまで重かった腕が一瞬で軽くなるあたり、こいつ、俺の体に腕乗せてやがったなと気づく


そもそもなんで俺こんな奴と一緒に寝てんだよっ!!ゾッとするわ!!


「ふぁんふぇふぉふぉふぃ!?」

「…はあ?なに言ってるかわかんねえよ」

そりゃお前が俺の口塞いでるからな!この野郎!!

睨み付けるとそれに気づいたのか、

「後ろで藤も寝てるんだから暴れるなよ」

と囁かれながらパッと手を離された


えっ藤?

その言葉に後ろを振り向くと静かに寝息を立てている藤が。

う、
うおぉおお、本当だ、藤が寝てる…!初めて見たぞ藤の寝顔。死んでるみたいに静かだから気づかなかった。

そっと藤の頬を触ってみたが温かいから死んでない模様。
驚くほど綺麗な寝顔をしているのが憎い。


俺のそんな様子を見ながら、

「死んでたら吃驚だな」

と会長がおかしそうに呟いた。


馬鹿にしてるなこいつ…

なぜこんなにもこいつの一言は俺を苛立たせるのか。

ムッとしながら会長の方を見ると会長がいつのまにか起き上がってた。

…つかなんでこいつ俺の隣で寝てるの。藤なら全然ゆるすけどだれの許可とって寝てんだオラ。

そんな気持ちを込めながら会長にメンチ切った。なんかぼーってしてるから思いつく悪口を心の中で繰り返す。

すると、俺の視線に気づいたのか奴がこっちを見てきた



「なに…見てんすか」


「お前が俺を見てんだろ」



…そうとも言える。

すると、喋った拍子にか頭がズキズキッと鳴った。思わず「ウッ」と唸る

い、痛い。地味に痛い



「…二日酔いか?」



そう俺に声をかけてきた会長

お前にも人間の心があるのかと驚いていたら、なんと、そのまま俺の頭を撫でてきた。サラリと髪だけを触るような撫で方。


その行動があまりにも意外でギョッとする




「吐き気は?」

「あ、…る、ます」

「…あるます?」


それを自覚した途端、一気に気持ち悪くなってきた。
口元を押さえながら慌てて起き上がる


思い出した俺すげえ気持ち悪かったんだ
会長が隣にいたショックで忘れてた


会長もそれを見てまじかよ、といった感じで慌ててベッドから立ち上がる


「トイレ行けトイレ」


会長に肩を支えられながら(屈辱)バタバタとトイレへと突入した。まだ酒が抜けてないのか足元がおぼつかない俺

そして、トイレについた瞬間思いっきり吐いた。会長に背中撫でられながら。


最悪だ。
なんでこいつにゲロ吐いてるところ見られなきゃならないんだ


一通り吐きおわった俺は半泣き状態でうがいをした

お酒ってあんな気分を悪くさせるの
気持ち悪すぎだろ ゲロはいてもはいても止まらないし


「すっきりしたろ」


俺がうがいし終わったのを見て水を渡してきた会長

すっきり…まあ、すっきりした。


「もうお酒飲みたくない…」


半泣きでそう伝える
本当最悪だよ!確かに飲んでる最中はいいけど!いいけど終わったら最悪だよ!


しかも何が最悪って、こいつにゲロ介護されたってことだよ!


「それがいいわ。…シャワーまだだろ、浴びてこいよ」


新品の下着とタオル類を渡されびびった

えっ、使っていいのかな?
びっくりしながら会長を見上げる。


「藤が昨日コンビニで買ってきたヤツだから気にせず使え」

「あ、あざす…」


こ、こいつ意外と面倒見いいな…会長の癖に…

不覚にも俺の中の会長株が上がってきている気がする。さすがにゲロの介護してもらったらちょっといいヤツって思ってしまうだろ

いや、わざわざ起きて俺の介護しちゃうんだからやっぱ普通にいいヤツなのか…?

どっちなんだ、とチラリと会長を見上げたら会長が突然笑い出した。


仏頂面だったのが突然笑いだすんだから普通にビビる


「は…?」

びっくりしすぎて「は?」以外言えなかった。

肩を震わせながら、クククと笑っている会長

なんだこいつ…怖…
つか俺の顔見て噴きださなかったかおい


ドン引きしてたら、会長の笑いがやっと止まった



「いや、悪ぃ…あんまりにも表情が変わるもんだから。やっぱお前、コマそっくりだわ」


コマ

確か…こいつん家の犬の名前




「・・・」



俺やっぱりこいつ気に食わねえわ




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