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みっ、

みんなこっち見てるんですけど藤くん!!?(2度目)




「いやー若いねお二人さん!!」



静寂のみが漂う空間を獅子尾先輩がぶち破った

一人で大爆笑決め込んでる獅子尾先輩を他所に俺は唖然とする


なにこれ…

何この雰囲気…!!!



酔ってる俺でもわかる失態にブルブル震え出す体

公開キスされた。藤にキスされた。恥ずかしいってもんじゃない

なんかよくわからないけどやばいってことだけはわかる!


うるさい獅子尾先輩の方を見るとお腹をおさえながら爆笑してる。会長はそんな獅子尾先輩を黙らせ(物理)、呆れた目をこちらに向けてきた



「な、なんてことしてくれたんだーー!」



改めて藤の首元を掴んでブンブン揺さぶる

ばかやろー!このやろー!
俺はいま全力で恥ずかしいぞーー!!会長にあんな顔されたら俺は屈辱だー!!


「ハルが飲ませてって言ったんだよ」


呑気にそんなこと言う藤


た、確かに
確かにそんなこと言った気もしないでもない

けど今酔いで頭がグルグルしすぎてて何が何だかわからない

その上、藤がやたら普通でいるもんだから騒いでいる俺が変みたいじゃないか…え、俺が変なの?そんなことないよね??


「立てる?」

「うぁい…」

なにも言えずに床を見てグルグルしてる俺に手を差し出されたため大人しくそれに従った

藤の手を握りながらやっとの思いで立ち上がる


「なんか…やっぱ、しせんきになるよ、藤くん」


さっきよりはみんな注目しなくなったけど気まずそうにちらっと見てくんの止めてくれないかな

俺が一番気まずいから
なんで藤がそんな落ち着いてられるのか聞きたい



「みんな酔ってるから忘れるよ、大丈夫」

「ほ、ほんとうかなそれ…」

適当に言われた気がするんだけど…
明日俺忘れてるといいな…


「もう時間も時間だし、寝室で休もう。」

見事に話をそらされ、体を支えられながらヨタヨタ歩く

なんとか足を進めるものの、藤が歩きづらいと言うもんだから俺をおんぶする事に。

思考もかなり鈍ってるから、言われるがまましゃがんだ藤の背中に乗っかった

藤はやっぱり痩せてるのか、それともくびれがすごいのか、骨盤が太ももに当たる。痩せてるとしたらどこにあんな力があるのか。

落ちないように首に腕をきつくまくと、藤の匂いがした。


「藤、いい匂いする」

「そう?」

うなじに顔を埋めるとくすぐったそうに藤が笑った

俺もつられて変な笑みが溢れる


うーん…ねむくなってきた。
さっきまであんなに興奮してたのにあっという間に眠い。藤の体温と匂いに安心してるんだろうか。



「下ろすよ」


仮眠室にたどり着いたらしく、俺をゆっくりベッドにおろした藤

さっき目が覚めた場所か。なんか随分と前の話な気がする。


「カバンはそこね。あと、もっと水飲んどいた方がいいから取りにいってくる」

「え」

また、さっきみたいにお口移しをなさるのだろうか

藤の言葉にあからさまにギクッと固まる俺


「もう一回口移しがいいならそうするけど?」

「ふ、ふつうに飲みます!」


俺の反応に藤が笑った
こいつ俺が意識するってわかってて言ったんだろうな


「シャワー室もあるけど、明日の朝入った方がいいね。」

「ふぁい」

さっき藤が教えてくれたカバンの位置を見てみるとカバンがあった

それを見てか、藤が思い出したようにある人物の存在を話す


「心配性の誰かさん、心配してるんじゃない?」

「あー」


そう言い残して部屋を出てった藤

確かに。
もし連絡がきてて全く返信してないとなるとやばいかもなあ

かもじゃない。
やばい。

ズルズルとカバンを引っ張ってきてiPhoneを取り出す
藤の言った通りだった

んん・・・・。ラインの通知数・・。んん・・・・。

文字を読む気にもならなくて、『いきてる。藤といる』とだけ書いて送信。俺はそう打ったつもりだったが、『いきてるはじといり』と打っていた。もう直すのも面倒くさい。

ふじ
いる
とラインで送り直して、携帯を枕元に置いた。

そんな時が扉がを開いて、こちらを覗く人物がいた

「シュンシュン〜寝るの〜?」

獅子尾先輩だ。

「寝ます〜」

「そかー。んじゃまた明日な〜。」

先輩に手を振られたので俺も手を振り返した。

ソッと扉が閉められ意外と優しい獅子尾先輩の一面を見る。おかんだ。獅子尾先輩は俺のオカンにしよう。

いや待てよ…俺のオカンポジションすでにふたりいるんだけど。藤と悠哉。

三人もオカンいんのかよ俺…


「倉田に連絡したの?」


藤が戻ってきた。
コップを二個持ってる。


「んー、した。いっぱいラインきてたけど読んでねー」

一個は水で、もう一個のコップの中には、水ではないなにかが入ってる。茶色い。


「藤、まだのむんすか」

「まあね。でも俺もそろそろ寝たい」

藤が眠そうに小さく笑う。
あんなに飲んだのに酔ってないのすごいと思う俺
俺の横に腰かけて、「先輩たちに付き合わないと」と言っていた。なんだそれ、大変そうだな


「はい。」

「ありがとーございます」

またさっきみたいに駄々をこねたらやばい事になりかねないから素直に受け取った。一気に水を飲み干す。

せめて制服脱ぎたいな…と思っていると俺の横にスウェットが置かれて。

「俺のだけど、サイズ大丈夫でしょ?」

えっ、い、いいのか!?

「藤は?」

「俺は大丈夫。制服は皺になるし」

「いいの?」

「いいよ」

ま、まじですか…!


ありがとうございますーと深々と頭を下げ、シャツに手をかける。ネクタイいつの間に外したのかどっかいった

俺がなかなかボタンを外せないのを見てか、藤もボタンを外すのを手伝ってくれる。何故かやたら手際がいい。なんで。


スウェットに着替えたところで、藤が立ち上がった


「んじゃ、おやすみ。吐いて詰まると大変だから横見ながら寝なよ」


…すごい怖い忠告をされた気がする。

「はい」と素直に返事をして横になると、藤が微笑みながら俺の頭を撫でた


「また明日ね」


その言葉を最後に、部屋が真っ暗になってあっという間に眠りに引きずられていった





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