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獅子尾先輩にこれ以上飲んだら頭が爆発しそうなくらい飲まされた 椀子そばのように。
いろいろ話したけど内容は覚えてない 好きなAV女優の話は覚えてるけどね!


「…飲みすぎ。」

「そんなこと、ない、です!」

「そんなことあるって。」


俺の返答にあきれたようにつっこみながら、俺のグラスを奪う藤

たしかにいまの俺はさっきの俺に酒をさらに飲ませたやつだから倍うるさいとさっき会長に言われた気がする

若干気持ち悪いが初のお酒という事もあって止まらないでいたらひどい有様になっていた

まあ、いいでしょう!悠哉にはバレなければOK!!バレたらたぶんもう2度と学園の外に出してもらえないけどね!


「ししおせんぱいー!藤が!俺のお酒うばったー」

「藤君だめだぞ〜飲みたかったらそこのやつ飲みなさい!」

「のみなさい!」


獅子尾先輩の言葉を繰り返して、藤をズバッと指でさす。完全にいまを楽しみすぎて調子乗ってる。獅子尾先輩が先輩であることもヤンキーであることもぶっ飛んでる。

藤はうっとおしそうに目を細めたが、俺らの言葉を無視して俺のお酒を一気に飲みほした


くそっ!よくも俺を無視しやがったな!



「ふじー!このやろー!」


最後だったのに!一番おいしいやつ!桃!

おこな俺は、ソファに座っている藤に覆いかぶさるようにして襲う
コチョコチョの刑だ覚悟しろよ!

「やだぁ〜しゅんしゅん狼〜」と何故かオカマ口調の獅子尾先輩の声が聞こえたが、藤は特にリアクションせず俺に大人しく乗っかられている

なにその余裕なかんじ!笑ってるし!


「怒りのてっついをくらえー!うははは!!」


同時に藤のわきに手を差し込んで指をわしゃわしゃと動かす。してるほうの俺が爆笑してるけど

が、一向に藤の爆笑は聞こえてこない。なんでだ!えっもしかしてコチョコチョ効かないタイプの人!?通りで余裕なわけだくそ


「残念でした。」



ふふ、と意地悪そうに笑って俺の腰に手を当てる藤
藤って笑うときこんなに人懐こい目するんだなあとしみじみ思う。お酒パワーで視界ボヤけてよく見えないけど。

あまりにもガン見してたのか、「なに?」と藤が聞いてきた


「いや、なんでも・・・・ん?」


ふと脇腹に感じた、なんだか生暖かい感触。何かが直接肌に触れている。


なんぞこれ…?


疑問に思ってそちらを見ると、藤の手ががっつり入ってて。


「!!??」



い、いつのまに!?
Yシャツだったのに俺!え!?どゆこと!?

てくにしゃんてやつか!何すっとぼけて「なに?」とか聞いてんだよお前なにしてんのよ!


俺がびっくりして脇腹と藤の顔を交互に見ていると、藤が俺の耳元に顔を寄せてきた



!?



「そういう子供っぽいくすぐり方より、もっと焦れったいヤツの方がくすぐったいんだよね。俺。」



吐息八割の甘い声でそう囁かれた。



なっ、ななな!
なんだその声はぁあ!!!

ぞわぞわと全身に走る痺れを必死に耐える

藤も酔っぱらってるのか、それとも普通に俺をからかってるのか。


酔ってる俺にはどっちかなんて判断できずにグルグルしていたら、俺の肌を少し掠める程度に指をスライドしてきた藤


じれったいとは、こういうことを言うのか。藤くんは、ドMなのか。


俺を試すように、首をわずかに傾けながらこちらを見上げてる藤。

やっぱりその触り方は絶妙で、ゆっくりと俺の背中へと指が這ってゆく
そのわずかな感触に、思わず震えた


「…っ…、ぁッ」


唇を噛みしめて耐えていたというのに、なぜか聞こえてきた、変な声



・・・ん?




お互い顔を見合わせる。
藤は驚いたように目を見開いている。なんだ、その顔は。



「お、俺!!!?」


お、俺の声今の!?
んはぁ、変な声出たーー!!!
藤もびっくりしてるー!!!!

大きい目がさらに大きくなってるー!!!!!



「ふ、藤のスケベーー!!!」



女の子(?)にもやられたことないのに!!
藤の頬をぱーんと叩いて、ソファにゴロゴロ転がりまくる

『ぁッ(はあと)』て!俺もうお婿にいけない!



「・・・まさかハルがそこまで敏感だとは。」

「お前の触り方がやたらえろいの!」


グラグラと揺れる視界の中
顔を手で覆いながら指の隙間から藤の顔を覗くと、叩かれた頬を抑えながら笑いをこらえている藤がいて。


んなあ!?



「こらあ藤!しゅんしゅんがおこだぞーこのエロ大魔神め!」

「あんたに言われたくない」

「あれっ途端に真顔!?」


ずっと見てたのか獅子尾先輩が藤につっかかるが、藤は冷たい対応

えってか藤エロ大魔神なの!?意外とむっつりなの!?


「ほら、ハルがまんまと信じちゃってる。どうしてくれるんですか?」

「ごっ、ごめんな藤!しゅんしゅん、人間ていうのは嘘をつく生き物なんだゾっ 痛てっ」

「ウス!」


俺も獅子尾先輩も酔いがひどいのか、お互い何を言っているのかわからなくなってるが今完全に会長に叩かれているのは理解できた。いたそうである。



「藤、むっつりなの?」

「今の聞いてた?」


あれっ、すれ違い通信しちゃったかな



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