いや、そもそも、藤があの藤なのかわからない
ここはどうみても不良の溜まり場だし、藤ちがいかもしれないし。なんだ藤違いって。


あ、そういえば宮本言ってたな、会長どっかの不良チームの長やってるって

え、てことは、そういうことなの?
ここ、もしかして、結構ヤバイところなの?


「藤って、あの、同じ学校の奴で、すか」

「あぁ。お前知ってて探してたんじゃないのか?」

「いや…でも、なんか藤のイメージとちがくて…あいつ大人しい平凡キャラだし、優しいし」


そういうと会長は苦い顔をした
「こういうことか」と言いたそうな感じだ。


「えwwなんつったww?大人しい平凡キャラ?ww優しいww?」

「獅子尾、空気読め」


獅子尾?すげえ名前だな赤毛


「つか、お前藤の何?ツレ?それともタレ?」

「あれだろ、ほら、同室者の」

「アーッ、あいつか。へぇ、まあ、見ててアレだもんな」


さっきからなんなんだ!アレとか何とかばっかでなに言ってっか全然わかんねぇし日本語しゃべれ!タレってなんだよ焼き肉のタレか!?
つか、藤の同室者だからなんだよ!


「お前、藤に料理作ってもらってるって、マジ?」


茶髪が興味津々になって聞いてくる
ち、ちけえ、つかこの人唇にピアス開いてるうわぁあ…


「ま、じっすけど…」

「マージーで!!すっげえクソウケんだけど!」

「え、他には、他には?」


他に…?
なにしてるか聞けばいいのか?


「掃除、とか、洗濯とか」

「オwwwカwwwンww」


モロオカンやん、と三人が爆笑しながら倒れ込んだ
なんでこんな爆笑してるのかわからない


「辻知ってた?あの同室者ってこいつだったってこと」

「あー、まあ、学校ですれ違った時気づいた。藤と一緒にいてやけに藤が甲斐甲斐しかったから」


その言葉に、あの自販機での事を思い出す
ああ、だからあの時俺と藤を交互に見てたのか

藤は会長との関係を知られたくなかったからあんな態度を?



「お前相当気に入られてんのなぁ」


何がいいんだ?と顔をベタベタ触られたから、体が固まった
ひっ、な、なに、


「この情けない顔が庇護欲を誘ったのか藤の」

「俺も垂れ眉にしてみっか?」

「いや、ちょい猫目だから動物に変換されたんじゃねーの」


ジロジロ観察されて穴が開きそうになる
会長はと言うと、こちらに携帯を向けて何やら撮影中
なにしてんだテメエ!!


「名前なに?」

「……、」

言わなきゃダメなのか
いやぶっちゃけこんな不良と関わりを持ちたくないっつーか、
でも言わなかったらリンチ?


「すぎ、もと、です。」

「え?下は」

「春也っす」

「はー、スギモトシュンヤね。」


「あ、俺、獅子尾ね」

「俺 芳賀」

「須山」


上から、赤毛、茶髪、こげ髪と名乗っていった
いや、もう関わる気ないんすけど、あの、


「あだ名なにすっぺー。シュンシュン?モトスギ?すぎもっちゃん?ヤーシュン?」

「いいね、シュンシュン。そうしよ」


あだ名つけられちまったよ悠哉助けて。



「つかシュンシュン、制服でここ来んのあぶねーぞ。来っときもいたべ、すげえ怖い顔した兄ちゃん達。まあ、俺らの敵なんだけど」

「えっ!!!あ!!!」


やっべかんがえてなかったー!
帰りどうするの俺
今ぜってえ夜じゃん!
朝ならまだしも!
うわあ!


「ハハハつか、ネクタイまでつけて真面目クンかよ」


ネクタイを引っ張られてグエッとなる
なんなんだこの人たち
俺ってそんな絡まれやすい体質してんのかな、それとも藤の同室者だから?


「朝までいれば問題ねーべ」

「確かに!」

「よし、今日はシュンシュンの歓迎パーティだな!おいお前らコンビニ行って酒買ってきてー♪」


えぇええええええっ


勝手に事が進んでいってポカーンとしていると、ソファに引っ張られていった

そこに5人くらい人がいたんだけど、サッと退いてく
え、なにこの人たち偉い立場なの?
余計断れねーじゃん!


「あ、あの、俺、酒は」

「まーまー、たまには真面目の殻をむいちゃいましょうよお兄さん」

「あ、煙草吸う?」


えええなにこれまじヤンキーすぎて!!!!
タバコを出され、口に近づけさせられる

ノォオオオオッ


「いや、俺、まじで、」


「ハルに悪影響与えないでくれませんかね」




その声に、この場にいた全員が固まった


この声、って、


俺の背後から聞こえてくる少し上がってる呼吸
近くにあったタバコを先輩の手から抜き取りグシャッと潰した



「ふ、ふ………………じ?」



後ろを振り向いた時、こんなに安堵した事はないだろう
隣の先輩たちは震え上がっているけど

銀色の髪に、こいつもまた私服で。
なんだよ、お前、ジャージ以外に服持ってたのかよ
つかシャレてるし。ムカつく。足なげえな


でも、やっぱり藤だったんだ。

……なんでここにいるのかは、全然わかんねぇけど………




「ごめん、ハル、大丈夫だった?」

「…………うん」

「そう。……先輩、ちょっと邪魔です。」

「あ、うん、ごめんね藤くん、おこんないでね、てかなんでもどってきたの」

「写メを辻先輩からもらいました」

「あいつめ!」


逃げてった先輩に軽く舌打ちを打つ藤
…し、舌打ち…
そして俺の隣に座ってため息をついた




「・・・何から話せばいいかな?」



軽く笑ってるらしい藤

うん、あくまで「らしい」なんだ

何故なら、


「なんでお前マスクとグラサンかけてんの?」


完全に顔を隠してるこいつだったから。



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