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「ん…」



あ?


どうやら俺は寝てしまったらしい。


ぼんやりとしながら、目を開けると白い天井に血のついた手の甲


…なんか、さっきまで神崎先輩といた気がしたんだけど…。

夢?



とか思いながらカーテンをあけると保健の先生がそこにいた。

起きた俺に気づいたのか「おー」と言いながらイスをギッと鳴らす。

そして、早々に


「君、神崎のセフレ?」


と聞いてきた。


「・・・」


保健の先生が言うようなことじゃない


せ、セフ………



「んなわけないじゃないっすか!」

「冗談だっつの。」


真っ赤になりながら否定すると馬鹿にしたように鼻で笑ってきた彼

こ、こいつ…!



「鼻はもう大丈夫なのか?」

「え、あ、はい。」

「あ、Tシャツは今週中に返せばいいから」


…そうだ、Tシャツも借りてんだった

「……わかりました」


つか、神崎先輩の名前が出てきたってことは先輩がいたのは夢じゃないんだな

でも、セ、フレとか、ねえ?
そんな俺は体だけじゃなくてちゃんと先輩と両思いになりたいしぃ?

恋人か、と聞かれてたらイエスって答えたんだけど。




神崎先輩の事を考えてたらジワジワ体温が上昇してきた
それを見かねてか先生が「あとは部屋戻れ」と言ってきたのでその通りにする




そして、神崎先輩の事ばっか考えながら歩いていたら気づいたら部屋にいた。

体育座りで悶々と考えている俺



ふわふわする…。なんじゃこれは…。
心音がドキドキと耳を占拠してる
思い出すだけで息が苦しいです



何度目かわからないが、おでこをゴシ、と擦る
想像していたよりも柔らかかった
せ、先輩の唇………せんぱいの、唾液が、俺の、でこちんに、


ハアハアハア、と息が荒くなる俺



そんな時ガチャリと玄関が開いた音がした


思い当たるのはただ一人。

結局閉会式出なかったなぁ、と思いながらゴロンとソファに横になる

あ、電気つけてないから真っ暗なままだ。




「ハル?いないの?」


「いるいる。電気つけてないだけ」



電気つけることすら忘れてたってどういう事だ俺、とツッコミながら同室者の藤に存在を教える


電気がパチ、とつけられ突然の明るさに数回 目をパシパシさせた

まぶしい…。



「ただいま」

「おー…お帰り」



ソファに寝転んだまま適当に返事する
藤の声がいつもより気だるげだったので見てみると、いつもの5倍くらい疲れきった藤がいた。
髪がいつも以上にボサボサして、服装もよれよれしてる


「…どした藤」

「疲れた。やっぱらしくない事するもんじゃないね」


はあ、と大きなため息をついて俺の足元に座った藤


…らしくないって、バスケのか?

「俺としては、まさかお前が本当に3Pをいれるとは思わなかった」

「はは。お酒買ってくれなきゃだね」


そうだ、泡盛。なんで泡盛をチョイスしたのかわかんねーけど。
今更ながらその存在を思い出す

……どうやって買うか考えておかねーと…。



「冗談だと思ってたのによぉ……」

「ハルがやれっていったんじゃん」

「そうだけど…」


まさかこんな奴がいれると思わねーじゃん?
しかも一発で。


項垂れる俺に藤が楽しそうに笑う

…あ、そういえばバスケつったらもう一つ大事なことがあるじゃん。


「…藤試合中さ、」

「んー?」

「顔さらしたよな。」

「・・・。」


しかも眼鏡とって、前髪とめて…


藤は俺のその言葉に動きを止める


つかなんで、



「なんで俺には見せねーのに、ほかの奴にはさらしたんだよー!」

「…いや別にハルが俺の顔見たって面白くないでしょ…って、ハル!」

ガバァッと藤に後ろから抱きつくと、反動で藤がソファから落っこちた


顔を近づけたらパッと顔を反らしてきたので後ろから肩を掴んで顔を覗こうとする


こいつ……!


「それなら俺に見せたっていいじゃん!」

「無理無理」

他の生徒に3Pするだけでイケメンに思われたんだから、俺だって顔を見ておきたい


「どんなにブサいくだって嫌わねーよ!!イケメンだけだよ嫌いなのは!!!」



ブサイクだったらちょっとうわあってなるくらいだよ……たぶん

どうにかして藤をひっくり返して押さえつけようとするがどうも上手くいかない


ソファの下でモチャモチャする



「ハルと気まずい関係にはなりたくないよ」

「いや、俺はさらに親睦を深められると思ってる」

「ちょっ・・・!」


いつの間にか藤の体の上に馬乗りになってた俺
してやったりとニヤリと笑うと藤がうんざりしたようにため息をつく


前髪に手を伸ばすと掴み返された
俺の手首をすっぽり包む力強い手のひら



「……俺は嫌だ。」

「でも見たい!」

「どうしても?」

「うん。」


俺の返答にもう一度藤はハア、と息を吐く
諦めたのか、俺のTシャツに手を伸ばしてきた


……お、これはイケるかんじ?


と内心喜ぶ


が、しかし。



「うぎゃっ」



突然藤が俺のシャツを引っ張ってひっくり返してきた

形勢逆転。



藤が俺の体に馬乗りになる




「残念だねハルくん」


「……っ!」



藤が俺を見下ろしながらニヤリと笑った
次いで俺の腕を押さえつけてくる


今の藤はどこか雰囲気がまがまがしい

な、なんか怖ぇ…!!




「い、今のは気抜いてただけだし!!」

「はいはいそうだね」


俺を抑えられた事がおもしろいのか、小さく笑ってる藤

くっ…!
こ、こいつ完全に俺をバカにしてるな!

しかも結局顔を見せてくれないと来たもんだ!!!



「ふ、藤のバーカ!」

「なんでそうなるのさ…」



呆れながらそう言うとソファにドサッと倒れ込む藤


……あ、藤疲れてんだっけ


「お前バスケやっただけでそんなんなんのかよ。体力ねーな」

完全に負け惜しみにしかなってない。


「…いや、バスケやってる方がマシだったな」

「・・・?」


藤を馬鹿にしようとしたら、意味わかんないことをいう藤
バスケやってる方が楽って …。

他に何か疲れる原因があったんだろうか。



「でも俺よりハルの方が大変だったんでしょ?」

「え?」



突然の話の切り替えに頭が「?」となる。
大変って、俺別に…。


少しだけ考えると思いついたことはただ一つ


か、

神崎先輩の事かっ!?



「な、にが…?」


反射的におでこをパッと抑えながら聞く
いやいや、え?でも、藤が知ってるって事あり得なくないか?

でも俺思いつくのそれしかないし…



しかし突然おでこを抑えた挙動不審の俺とは裏腹に、藤は不思議そうに首を傾げた


「ボール。鼻血出たんでしょ。」

「あ、あぁ!」


そっちか、ビビった。
……うん、つまり、勘違いなのね。


俺の勝手な考え違いにカカカ、と熱が顔に溜まる


そういえば、俺確かに、鼻血出したんだったよな…

まじはっずかしー。うわー。

藤に悟られまいと顔を手で隠す


すると。藤が俺の顔に腕を伸ばしてきた
何だ何だ、と思っていたらおでこに指が触れて。


「、?」



さっきまで俺がおでこを擦ってた場所をピンポイントになぞる
俺の顔が熱いのか、藤の指がいやに冷たかった



「あとさ、」

「う…ん?」



「神崎先輩とも何かあったんだって?」





藤の静かな声とは対象に、俺は勢いよく体が反応した

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