怖いぞこれは



ヒヤリ、としながらボールの行き来を見る
やっぱ三年生って勝ちをとってくるよな。もうバリッバリ狙ってきますよ弱い奴。特に俺


おまけに俺を狙ってくるの神崎先輩の親衛隊の方々ですからね




「杉本大丈夫?」

「いや、この汗の量見てわかんない?ギリギリだよ?」


さっきから動き回りまくって汗と息切れハンパない
なんで俺可愛い子ちゃんに敵視されなきゃいけないの?俺は君たちの味方なのに!!!!


ハアハアしてると、信介がボールをキャッチしたのち相手チームの一人にボールをあてるとその子が軽く悲鳴をあげた


「ギャンッ」


………変な声だな



「うわ、信介手加減なしで行ったね」

「先輩だからって容赦しねーぞ」



腕をまくる信介。こっちも本気で勝ちを取りに行くらしい
えええー、やめろよ怖ぇじゃん!

ちなみに当てられた人は神崎先輩の親衛隊さん
さっきから俺を狙ってくる内の一人だ



………怖い人が外野に来ちゃったじゃねえか……!




「信介、俺を、まもってくれ」

「やめろよ気色悪ぃ」


ひしっと信介のジャージの裾を掴んだら嫌そうな声を出された。つか顔が全力で断るといっている


「杉本さっきから狙われてるもんねー、なんか弱者オーラすごいもん」

「戸田は喧嘩売ってるのかな?」


戸田にまで言われた
ギリィッと歯軋りしながら睨むが戸田もなんだかんだ動ける

あれ?もしかしたら俺の回りってみんな運動できる系?
いや俺も、で、できますけどね?


そんな時ホイッスルが鳴って一度試合が止まる
5分経過したから、元いた外野の人が内野に入るように言われた



「おー、お疲れ城野」

「おう」


城野とは俺らのチームの元いた外野



ちなみに敵チームの元外野さんは、神崎先輩


つまり?
つまりですよ



神崎先輩がコートに入るということですよねまじテンションあがるんですけどぉおおおおおおお



俺のテンション上昇と共に歓声がすごくなる
許されるなら俺も愛の叫びをしたいところですけどね!!!!



目の前で神崎先輩を見れる感動

疲れとは逆に息が荒くなるのがわかる


ハァー、先輩好き好き好きその顔が好き




「お前そんな顔してっから狙われるんだよ」


どんな顔だよ、とか思ってると口許に涎が垂れた。あ、こういうことか。



「お前な、俺が今どんだけ幸せな気分かわかんねーだろ?」


涎をジャージでぬぐっていると「見りゃわかるわ」と言われた。
つまり顔でわかるっていいたいのか?


それにしても神崎先輩ほんと素敵すぎてやばい
ボール普通にキャッチしてるし。さすがですね


神崎先輩のボールになら当たってもいいや、と思うが先輩は外野にパスを回した。チラリとこちらを見たけれど当てる気はないらしい。
控えめ!素敵!


はぅ、と甘い吐息を吐く
先輩優しいよ…!ああ、先輩のジャージになりたい。つか先輩が欲しいです先輩やっぱ俺の嫁になりましょうよ先輩


熱い視線を送り続ける。もうストーカーでもなんでもいいや



「先輩は俺のだ!!!」

「声でけえよ……」


呆れたように隣でそう呟く信介
知らんがな!このときめきを俺は伝えるのだ!





この時俺は忘れていた




先輩が回したボールがすぐ側の外野にある事を。




「杉本!横!!!」


誰かの慌てたような声が響く
その声につられて神崎先輩も俺の横に視線を移した



俺も神崎先輩から目線を外し横をみる



が、




『バコォッ』



という音が響いて俺の思考は停止する




バコォ…………?




視界も真っ暗で脳が揺れる感じがする
同時に一気にきた顔への痛みに、俺は何が起こったのかわからなかった





これ…………は…………?








「いってぇええええええっっ!!!!!!!」





反射的に漏れた自分の叫び声にあ、自分顔面にボール貰ったんだな、と気づく




「す、杉本ォオオオッ」

「グフッ、だ、大丈夫かぁああ」

「あぁ゛あああああっいたいいいい」


誰だ笑ったやつ出てこい!って言うことすら出来ないくらい痛い
床にバタンバタンと転がりながら悶える

痛い、え、超痛いんだけど。
顔面にってひどくない?ねえ、ひどくない?


耳の奥がワンワンする
つか今なにがどうなってんの




「ぅうう、い、痛い……」


当てた奴誰だと思って見てみたら、さっき外野にでた神崎先輩の親衛隊の人だった。すげえドヤ顔してる


………まじか…!



「だ、大丈夫かまじで?」


「……顔全部ジリジリする」


ただでさえ低い鼻が完全にぺしゃんこした。




「いや、そうじゃなくて……」


「?」



「…………鼻血、出てんぞ」



え?



その言葉に手を当ててみると、確かにヌルッとした



「・・・」


若干引きつつ手を見たら、確かに赤く染まっていて




・・・・。





『てか、春也間抜けだからさ、気抜いてあの人みたいに保健室連行されそ うで心配。気を付けなよ?』




クラクラする視界のなか、悠哉の言葉を思い出した。







こんなことって、有りですか?

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