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まじで………?
俺、
まじで、
名前呼ばれたの?
“杉本くん”
そう呼ばれた自分の名前が頭のなかで何度も繰り返される
あの形のいい唇で、
あの綺麗な声で、
俺の名前を…。
「これは夢かっ!?」
「ボサっとしてんじゃねーよ!!」
どうやら夢じゃないらしい
信介に思いっきり頭をどつかれ現実だと知った。普通に頭痛い
けどさ、俺、だって、そんな、
そんな簡単に信じらんないよ!!!!!
しかもあの微笑み!
名前を知られていたことも驚きで目んたま飛び出そうになったけど、あの笑顔を身近で見られたってだけで死ねる。つかさっきから心臓をワシッとされてる感じがして苦しい。苦しいです。
これ以上ボサッとしてたら信介に何をされるかわからないので、顔に熱を感じつつ現実に返る。ボールには当たりたくないです切実に。
そんなこと思ってたらすぐに試合が始まった。
全力で端の方に寄る
敵チームには小柄な子がいればバリバリ運動部ですって人もいる
おまけに先輩だから体格もいい。ちょっと怖い。
ちなみに信介もハンドボール部だからヒュンヒュン動いてくれる
ぶっちゃけ信介がほとんど敵倒す。鬼のような形相でな。ちょっとヤンキーっぽいからあんま近寄りたくないと思う。
あちらこちらから歓声が聞こえるが、どっちかつったら3年の応援の方が多い。
しかも、神崎先輩の親衛隊の子達。
前もいったと思うけど、これ、びっくりしちゃうほどのハーレム部隊なんですよね。先輩だって綺麗なのに、ファンの子だってくっそ可愛いんだぜ?なんじゃここはぁって思ったね。最初はね。
でも悠哉から神崎先輩の親衛隊が一番過激だと聞いた。
先輩に色目使う男を集団リンチするらしい
集団リンチとは恐ろしい。その話聞いたときブルッたが、所詮噂。
こんな可愛い子達がそんな事する悪魔だなんて信じらんない!
「おいっ、杉本テメー避けてないで投げろよ!」
「ボールとれませえええん!」
はっきり言うぜ!
俺あんなに会長さんに威張ってたけど、ボールとると言う技術はありませんから!
きっぱり言うと信介はおもいっきし舌打ちした。
鬼かお前は。
あとは俺、神崎先輩見るので忙しいからね!!!!!!
敵外野ってことは、俺らのコート付近に立っているってこと。
先輩の位置を暇さえあれば確認する
ぶっちゃけさっきからいろんな事を考えながら先輩のことをチラチラ盗みみてた。つか無意識のうちに視線が行ってしまう。
先輩を見ながらファァ…と熱いため息をつく
やっぱりさっきの杉本くん呼びが頭から離れない。あれはやっぱり幻聴だったんだろうか。もし幻聴じゃなかったら、ちょっと期待しちゃうじゃないか。だって名前を知られてるんだぞ?ちょっとチャンスがあるのでは?
とかなんとか思うけど、そんな上手い話はあるわけないので妄想だけにしておく。もしかしたら幻聴かもしれないし。
何度目かになるかわからないけど先輩を再び盗み見る
ああ、その立ち方素敵です。つか先輩事態が好きです。先輩マジラブ
さっきのことを思い出してポッと頬を染めたそんな時、俺に凄まじいボールが飛んできた
「わぅあっ!!!!!!!」
まるで俺が気を抜いたときを狙ったかのようなタイミング
頭横を掠めましたよ隊長!!!!!!!!
ボールが通ったことで髪がなびく
……今の時速何キロ……?
ビックリして今投げてきた人の方向を見ると驚きの事に、小柄なにゃんこちゃんだった
「……??」
今のは、偶然かな……
瞬きを数回したところで、その子を見つめると目があって睨まれた
いや、もしかして俺の事見つめてるだけかも…。そう思って手を振ってみたが、こちらにまで聞こえてくるような音で「チィッ」と舌打ちされた事で違うと判断する
!?
な、ななにごとですかい!?
本日二度目の舌打ち
「すごいボールだったな今のー」
戸田が呑気にそう言いながら俺に「大丈夫?」と問いかける
………下っ腹がキュッてなりました…
「だ、大丈夫…」
けれど戸田にそんなだっせぇ姿は見せられないので親指をかろうじて立てる
何が起きたんだ本当
てかあの子、たぶん神崎先輩の親衛隊の子だよな…?
さっきの噂が頭にチラつき思わずゾッとする
いや、でも、そんな偶然かもだし…
ビクビクしながら神崎先輩を見てみた。
懲りてないんじゃなくて偶然だと信じたいから神崎先輩を見るんだよ
するとパシッと目が合った
「っ!」
っっぎゃああ目が合ったぁあああああ
その事実に再び俺の心臓はわし掴まれる
一瞬撃沈しかけたけど先輩と目が合ったから復活した。やっぱ先輩は俺のエネルギー源だということがわかりましたね。
そうするとなると俺はどうすればいいのか
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