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「…まあどうでもいいけどよ、いい加減杉本立てよ。三年生に注目されんぞ」
あ、それは恥ずかしい
さっき回転したあと床にゴロゴロしていたので、慌てて立ち上がり戸田と伸介の後ろをついてく
コート上には島井ちゃんとかその他もろもろのクラスメートが居て「今度も勝つぞ!」みたいな感じで盛り上がっていた
俺は神崎先輩の事でお腹一杯ですわぁ
円陣を組んだあと、タイマーの準備とか運営の準備が終わるまで神崎先輩を探す
……ぶっちゃけ探すまでもない…
フッ、と一人で笑いながら、手を目元に当てる。厨二病ポーズだ。
誰か他の生徒と談笑しながら腕を伸ばし軽い準備運動をしてる一人だけ眩しいお方
その存在を発見した瞬間俺の目はその一人だけにピントを合わせて周りの人間の存在を削除した
………これぞ、二人だけの世界。
あぁああああぁああっあこれは運命としか言いようがないですよ神崎先輩ぁああい!!!!
やっぱ先輩はジャージ姿でも十分素敵。
シュッとしてるお体に少しダルッとしてるジャージが…なんとも…言えません…そのジャージになりたいです先輩。
そしてあわよくば腰を鷲掴みたいでふ……
「……おい」
なんでそんなスタイルがいいんでしょうか…背も俺より高いですし…そういえば、以前乗馬を経験していらしたとか…あなたはどこの王子様なんですかね。でも先輩は俺の嫁なんで姫になりますね。あっやだっ、なんか恥ずかしい姫とかっ
「杉本お前立ったまま寝てんじゃねーよ!」
「ハッ!寝てないよ!」
信介に大声出され我に返る
断じて寝てたわけではない、ちょっと意識が神崎先輩にしか向いていなかっただけだ
控えめに先輩をチラリと見る。どうやら俺の失態は見られてないみたいだ。良かったホッ。
気づいたら三年生も二年も整列して、試合が始まる寸前だった
『ピッ』とホイッスルがなって、握手するようにとみんなが駆け足で真ん中に集まる
そこで俺は気づいた
握手をする……
これは、
チャンスなのでは。
と。
奇跡的に先輩は俺の前の方に立っている
先輩と握手できる…そう認識した瞬間俺の体はおかしくなり始めた
握手が……できる……
だと?
や、やばいやばいやばいよ
心臓がいきなりバクバクいい始める
ぶっちゃけ、全神経が先輩にしかいってないよ
あぁ、ふ、あ、なん、っもう、
神崎先輩超ファンです!!!!!!!!
主審が笛を吹いたのでバラバラと握手を始めるみんな
でも俺ごときが神崎先輩のお手を握るとなるともう緊張で汗が止まらない。どうしよう、こいつめっちゃ手汗ばんでるよキモイとか思われたら
とか考えてる時間もなく、ぇぇいっ男なら手くらい握れ!と自分に言い聞かせ「よろしくおねがいしますっ!」と手を差し出した。まるで告白だ。
緊張マックスで目を瞑ったままの俺
「…よろしくね。」
そんな俺に柔らかな声が聞こえてきた
目を瞑ってるからわからないけれど、声には微笑が含まれていて。
サラリと肌心地の良い手が俺の手を握る
「っ!!!!!!!!」
その瞬間全身が歓喜で鳥肌が立った
せ、せんぱっ、
先輩と俺、手、握ってる!!
てか先輩の生声!すっげえ優しいっていうか穏やかっていうかもう…!抱いて良いですか!
けれど、それだけでなかった。
「頑張ってね杉本くん」
…………え?
静止した俺にニコ、と微笑んだ先輩はそう言って手を離す
神崎先輩が俺から離れても俺は唖然としていたまま
………今、
俺の幻聴じゃなければだけれど…
名前呼ばれた?
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[mokuji]
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