「ふーーじ!」



次の試合が始まりそうになり、少し距離が近くなったところで名前を呼ぶ

すると気づいたのか軽く手を振ってきた。ほんとにちょっと手をあげただけだけど


あいつこんな時でも眼鏡にあの前髪かよ
俺のピン留め貸してやろーか
…あ、でもこれ島井ちゃんのだからやっぱ貸してあげない



「………お前らってさ」

「ん?」


試合開始のブザーが鳴り騒がしくなったところで江道が口を開く

お前らってどいつとどいつ?


「いっつもそんなベタベタしてんの?」


……あ、俺と悠哉か
ベタベタっつーのは、たぶん悠哉がずっと俺の背中に張り付いてるからだろう。重い


「そー、俺春也の保護者だからね」

「初めて知った」


なんつーポジション狙ってんだお前は


そんな答えに江道は「なるほど」と言った
なるほどじゃねーよ!


「それにしても序盤からすげーな。時間制限あっからか?」

「確かにすごいね」


…足音がすごい


こっち側にズダダダと来たと思ったらあっち側にズダダダダと走る
シャトルラン見てるみたいだわ


チラリと藤を見てみるが特に動こうとせずゴール下に突っ立ってる
おい、せめてカバーするなりしろよ

ちなみに俺達は敵側ゴール下にいます




「おい藤!動けよー!」

「…え、まだ始まって1分も経ってないけど」

「俺も暇じゃねーの!」



昨日会えなかった分俺は神崎先輩を激写したいんだ激写!
野次を飛ばす俺に藤は「横暴」と苦笑いした


いいじゃーん別にお前には泡盛賭けてやってんだから……って待てよ
俺が賭けに勝った場合の商品決めてない
しまった……あ、でも藤だからあとから決めても許してくれそう

よし決めた!賭けにかったらAV買って貰おう!


これで買いにいく手間が省けたね!




「そういえば何を賭けてんの?」

「あー、藤が3P入れたらあいつに泡盛で入れなかったら俺にAV」

「……ツッコミが追い付かねーわ」


たぶん江道がいいたいのは泡盛って酒じゃね?とかAVって考えが安直じゃね?とかだろ。いいだろ別に


「藤!ヘイ!サンピーサンピふぐうっ」

「変な言い方やめて」
「俺こいつと一緒にいたくない!!」


な、殴られた…!江道が俺を殴った!
ガンガンする頭を押さえてうずくまる


藤もうんざりしてため息をついてる
「ハアァ…」とかわざとらしいんだよ!聞こえてるかんな!


そしてこちらに近づいてきた


うっ、な、なんだ!
お前も殴るのか!


「じゃあちょっとこれ持ってて」

「っえ」


そう言って渡されたのは眼鏡


よ、予想外でーす



「動くとき邪魔だから」

「…目見えんの?」


「頑張ればね。あ、これ少し貸して」



そう言って今度は俺のおでこを触った


……ん?
これって………


スルリ、と前髪からなにか抜き取られた感触


!!


「それ俺の!」


藤の手元には予想通りうさちゃんのピン留めがあった
だめだめ!これはあげねえよ!


「ちょっと借りるだけだってば。わかるでしょ?前髪邪魔なの」

「えー!」

「なんか敵さん想像以上にプレーうまくてすぐボール奪われちゃうだろうから、動く必要があるし。」



それなら最初からピン留めやらゴムやら髪切るとかしろよ!
とツッコむが時すでに遅し

俺からピン留めを奪った藤はさっさとコートにへと戻ってった。





俺のうさちゃん!!


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