あえての悲報を言うとだな。





「今日神崎先輩見ること出来なかったんですけどぉおおおおおおお」




ダンッと自室の机に拳をぶつけながら叫んだ。拳痛い

あ、なんとかスポ大一日目終わりましたよ



つか、んなことより


なんでなんですかっ
どこを見ても神崎先輩いなかったんですけど!

どういうこと何ですかあああ!




「役員は一日目と二日目で交代で出るからね。今日生徒会室にいたんじゃない?」


「そうなのっ!?」


「むしろ知らなかったの?」



呆れたように隣で藤が呟いた

普通に知らなかったわ!



「生徒会はいろいろ忙しいんだよ。勝敗のまとめとか点数記入とか。」

「…なるほど…」


それで一日目働くやつと二日目働くやつとに別れたのか
だから神崎先輩いなかったんだね!じゃあ明日は会えるんだね!


「藤は詳しいな」

「いや、ここの生徒ならわかるでしょ」

……そういうもんなのか?



ふーん、と相槌を打ってカメラに視線を移す
俺ぜってープロのカメラマンになれるって。見てこの輝かしい写真たち
被写体が眩しいよ



「てか、どうしたのそのピン」

「もらった!」


みんなして気にすんのなこのピン
可愛いからか?まあ島井ちゃんのチョイスに間違いはないぜ!


「いいだろ?」


羨ましいか、と鼻で笑いながら流し目をすると笑う藤



「いいね。似合ってる」



そう言って、俺の前髪を優しく撫でた
いつもより挑発的な少し低めの声で俺に言う



お、ぉおう、

こいつ突然謎の色気を出しやがったな…

つかよくよく考えれば声に艶が、ある、っつーか




「……藤くん、声やらしーね」


「よく言われる」




冗談っぽく言ったのに藤が静かに笑うもんだから冗談に聞こえなくなった。

だからなんなんだよその無駄な色気!顔見せてみろオラァッ!どうせ平凡なんだろ!

なんか悔しいな!悠哉を相手にしてるような敗北感がある




「よく言われるってお前そんなに交遊関係あるかって!」

「さあ?」


あ、こいつまた秘密主義者になりやがった
ムムム、と唇を歪める俺


「…俺の事はどうでもいいけど、今日どうだったの?勝てたってことは知ってるけど」

「……予想以上にドッチボールってハードだった」



何かはぐらかされた気がするけどまあいいか。
俺も興味ねーし。



「藤は?バスケ」

「そこそこ。まあ勝ったけど、俺なにもしてないしね。」

「そこは何かしようぜ!お前地味のイメージばっか植え付けられちまうぞ」


なんか酷いことを言ってる気がするが、相手は藤だし藤もそこまで気にしないだろう


藤は小さくハハ、と苦笑して「なにかってなに」と聞いてきた


「んー、なんかギャップのある行動」

「ギャップって…」

「3p決めるとか」

「…えー。」


俺ですら出来ねーのにこんなヒョロっこができるわけねーだろうけどな

ハッ、と馬鹿にしたような笑いを浮かべた俺に藤も微かに笑う
馬鹿にしてんのか!って怒らないところが藤らしいというか



ほんと寛容な奴だなー、と思っていたとき



「じゃあ、明日試合の時やってみる。」


藤が何気無くそう呟いた




「え、」


まじなん?
ちょっと藤のその決意表明にびっくり


「もっかい言って」

「だから、ハルが試合見に来たときに3pやってみるから。」


…聞き間違いじゃなかったのか。
無理だと思うけどなぁーと思いつつ「そうか」と言っておいた

まあ軽い冗談だったし本気にはしないでおこう



「あ、じゃあもしも俺が3p入れたら何か奢ってね」

「おっ、いいぜー。じゃあ一回につきお前の好物でいいよ」


一回入るかも謎だけどな。



「じゃあ泡盛でよろしく」

「了か……………」




ん?
泡盛?



思わずギョッとして藤を見る



が、いつも通り前髪が邪魔で表情がわかんない藤からは冗談か本気なのかが読み取れなかった。




じょ…………


冗談だよな?

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