おお…
おぉお…



「やっぱ藤いると違うわぁ…」


「そ?」



目の前に並べられた手料理の飯たち
やっぱ藤なしと有りの朝は大分違う。…時間的に昼だけど。



あ、テレビの前のアレたちはちゃんと片付けしましたよ。




「つか、お前どうしたの?毎週いねぇのに。」


頂きますをしたところで藤に訊ねる



「…あぁ、ごめん。言っとけば良かったな…」

「いや、変に気を使わないでくれ。」



そんな気まずそうな雰囲気出されても…
こっちが恥ずかしくなるっつーの。


「なんか、約束してた人が忙しくて来れなくなっちゃって。その人がいないと意味がないって言うか…だから戻ってきた。」


「………ふーん…」


俺は毎週親元にいってんのかと思ってたぜ


つか約束?
毎週待ち合わせ的な?

え?

まさか、藤…



「ハルが予想してるようなことじゃない。」

「あ、そう……」



どうやら違ったらしい。
まさかこんな地味男までもがリア充だったらまじ訴えてたわ神様に。


「なに、友達?」

「………そんなもんでいいよ。」



なんだそりゃ。


藤の苦々しい声色に俺はふーん、とだけ相づちを打っておく

めっちゃ苦々しい声だった。なんだ今の。どんだけ嫌そうなんだよ。



…やっぱこいつはわかんねーわ。




「てかお前俺の名前わかる?」



ちょっと気になってたこと



「え、春也だろ…?」


「そう。俺はシュンヤだ。」



でもお前、なんで俺の事ハルって呼んでんの?




実は前々から気になってた。
こいつもしかして俺の名前ハルヤって思ってんじゃないのかって


…別にいいけどよ



「いや、特に意味はないけど…。間違えてると思った?」

「…おう。」

「やめた方がいいなら、やめるけど。」

「いや、わざとならいいわ。」



さすがに馬鹿じゃないか。



「ハルはシュンヤよりハルの方が似合ってるだろ?」


「……そうかあ?」


わかんね。

ふふ、という笑い声が聞こえてみたから顔を上げてみれば、楽しそうな雰囲気の藤


…なんだ、今日は機嫌がいいのか。
てかハルの方が似合ってるって、何。



「今日はいっぱい喋るな。」


「………そうかな」


いつもより雰囲気が軽い、と思ったことを口に出したら首を傾けられた。
サラリと流れる灰色の髪



「……ああ、面倒事がなかったからかも。」


「………面倒事?」


って、なんだ?

…土曜日曜といない理由か。




「何してんの、面倒事って。」



ノリついでに聞いてみた

だって今日明るいし、
答えてくれるかもーって思ったから。




けれど、現実はそう甘くなく。




「ひみつ。」




うっすらと口許に弧を描いて藤は笑った。






……っち、残念。

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