秘密主義なじみーくん





土曜日は基本、俺にとっては寝過ごしをするための日



家とは違って、起こす人もいなければ邪魔する人もいないこの至福の朝。最高だ。


しかも俺の部屋の相方は、金曜夜と土曜1日はいつもいない

気づいたら居なくなってる。あいつ実は忍者なんじゃねーの。




なんでいなくなるのかって聞かれても、俺がわかるわけがない。結構謎が多いし、顔もじっくり見たことがないくらいの関係だし。




まあとにかく土曜日はこの部屋を俺だけが独占できる

金曜夜はAV見放題抜き放題



やっべえまじ最高











…なのだけれど、

今日の朝はいつもと違った






バタン、というドアの閉まる音で意識が浮上する





あれ…





どっかの部屋で誰か出入りしてんのかな、と思って目を閉じたがそれだけでなく誰かの足音まで聞こえる



かなり音がはっきりするってことはきっと自室のドアなんだろう




え?




自室?







廊下から繋がる部屋のドアがあいたとき、確信にかわる






やべ






相方が帰ってきたと思って、一気に冷や汗が出た








昨日、俺は毎週と同じようにAV 観賞をしてそのままソファで寝てしまって、



それだけでなく、



愛がくるまっているティッシュのゴミとか、

AVのパッケージとかもろもろ、




目の前に転がっているわけで。











これは、









まずいぞ









慌てて体を起こしてみたが、遅かった










「…びっくりした。」




突然ソファから生えた俺を見て驚きの声をあげた地味男くん



「………藤…」

「おはよ」




案の定俺の相方くんがそこには立っていた









前髪が長くて眼鏡をしてるという顔不明のこの部屋の相方。

本名は藤 京介、だったか。
髪が灰色でお洒落か、と聞いたら地毛だ、といっていた。嘘つけ。



そんな不思議くんがこいつだ。






つかなんでお前今日ここにいんだよ!!!






「静かだからまだ寝てるのかと思った。」



静かな声で呟く藤



おう、寝てたぜ。安らかに寝てたぜ。
お前が来たんだから慌てて起きたんだよ。



「ソファで寝た。」

「…そうなの?だから制服なのか」


そういうお前も制服じゃねえか
とは思うがまずは目の前のこいつらをどうにかしなければ。


ススス、と体をゴミの方に寄せる
すぐ後ろでは制服のブレザーを脱いでる藤



「朝飯どうする?食べるの?」

もう昼だけど。と俺にいう藤に内心テンションがあがった

まじ?



「作ってくれんの?」

「いつも作ってるけど」


そうですけど…土曜の朝飯作ってもらえんのは初めてじゃん



「ぜひお願いします。」


そう言うとわかった、と小さく返事した




…こいつ、本当何なんだろう

料理できる男ってあんまいないのに、藤は簡単にやってのける。


あんま自分のことは話さないし、


口数も少ない




かといって性格も悪くない。




んー…



藤の後ろ姿をジッと見つめる
短めの襟足に意外としっかりしてそうな背中

なのに前髪長いというアンバランス








ほんとどんな顔してんだろうなこいつ



「………。」




ま、俺には関係ねえか。




そう思ってソファから立ち上がったとき、藤がこちらを向いた



「風呂いく前にテレビの前のゴミ片付けとけよ。」

「……」





バレてた。

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