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「担任どんな人なの?男だっけ」

「うん。大人の男ってかんじ」


何言ってんだこの子は…

冬彦の返答に笑ってしまいながら、俺もパンを口に含む。




「みんなのママが先生にむちゅうなんだってさ」



冬彦の一言に噎せそうになった



「どこで聞いたのそんなの」

「みんな言ってるから。カッコいいって」

「へえー」


イケメン教諭か。
そりゃあすごい。そんなドラマありそうだけれど。

母さんに言ったら帰ってきそうな内容だな。言ってみようか。


「でも千鶴ちゃんの顔のが俺は好き」

「まじで?俺も冬彦の顔大好き」


冬彦の言葉にデレデレしてしまった。顔好きってのも変な話だけど。
まだ幼いから冬彦は美少年って言った方がいいかな。


そんな俺にお構いなく冬彦は「だって」と続ける。


「雨森先生ってなんかカンペキすぎるんだもん」


テレビの中の人みたい、とおどけた冬彦。


その名前に、一瞬、表情が強張った自分がいた




・・・あまもり。



その名前に、小さく笑いながら煙草を吸う男のシルエットが浮かぶ





「・・・あまもり先生?って、いうの?」


「そうだよ。雨森先生。僕らの名字雨水(うすい)だから『先生と似てるね』って前に言われた」


「・・・そう。」



なんだか、嫌な気分だ。
例え他人だとしてもその名字を聞くと気分が沈む自分がいる。
・・・同じ名字の人なんてたくさんいるのに。


しかも言っている内容が彼と似ていて、昔を思い出させた。



「あー…、あ、冬彦早くしないと登校班に置いてかれちゃうよ」

「ん!そうだ。着替えなきゃ!」



俺の言葉に慌て始めた冬彦に笑う
牛乳で食べ物を流し込んで、立ち上がる冬彦



それを見て俺も立ち上がりお見送りする準備をした






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