心を追う





「冬彦起きろー!!」





いつもの朝


俺の朝は弟を起こす一日から始まる




16歳も歳が離れている弟を。




「冬彦ー!朝!」


「んー…今起きる…」





弟が寝ている部屋へと行って、布団にくるまっている弟を起こす
俺の声にうるさそうに顔をしかめる弟

柔らかい黒髪は枕の上でくるくると丸まっていた。




弟の名前は冬彦(ふゆひこ)。今小学4年生。
ちなみに俺は、26歳の社会人。塾講師をやっている。

16歳も差がある兄弟だけれどとても仲がいいと思う。俺は弟が大好きだし弟も俺が大好きだ。



その仲の良さを見てか、母親は俺がいれば大丈夫と言って父親の単身赴任先へとついて行ってしまった。



つまり、家に両親がいない状態。



さすがに母親を怒ったが弟本人が『千鶴ちゃんがいればへーき』なんて言うもんだから母親も『ほらね』なんて言って俺の意見を聞いてくれやしない


この人たちは本当に能天気というか楽観的というか…



そんなこんなで俺が、弟の保護者をやっている。





「おはよー、千鶴ちゃん」


「おはよう。冬彦」



やっと起きてきた冬彦は意外とすっきりした様子だった。
どうやら先に顔も歯も磨いてきたらしい。

手には学校の宿題の一つの音読カードが。



「千鶴ちゃん、音読カードにサインちょうだい」

「はーい、置いといて、プリントは?」

「あるー。出しとく。」

「ん。サインもしとくからご飯たべな」



弟から色々貰いながらそれらに目を通す。
夜は大抵帰ってくるのが11時とか見るのが朝に見ることが多い。

まあ、冬彦が机に出しといてくれれば助かるんだけど…。



「音読してるのちゃんと?」

「してるわけないじゃん」

「だよねー。」


俺も親の判子パクって自分で押してた。
俺にサインさせるあたりちょっとマメだ。


すぐに記入するべきプリントが無いようで安心する。それにしても冬彦ミニテストの点数悪くない?


「冬彦ー、なんだこの点数は」

「いいんだよただの練習なんだから」


冬彦がケロッとした態度で答えた。
確かに通信簿はいいらしい。





ちなみに家に俺らしかいなくなってからまだ2か月くらい。
学校が始まってからだと1か月かな。

まだまだ未知な事が多すぎて怖い。





「あっ!授業参観あんじゃん!」


受け取ったプリントに『授業参観のお知らせ』と書いてあった。


しかも保護者懇談会もそのあとあるらしいし
え、俺行くべきなんだろうか


「ママには来てほしくないけど千鶴ちゃんなら来てほしい」

「嬉しい事言ってくれるね〜でも俺浮かないかなあ?」


圧倒的奥様が多い中26歳男が行くのって…
でもスーツで行けばもう少し年増に見えるかな。


「んーわかんない」


冬彦が複雑そうな顔で答えた

まあそうだよね。
とりあえず母さんに聞いてみるか・・・

保留、と。





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