スラムダンク | ナノ

 7

この世界での私という存在はちゃんとあるみたいで、安西先生……もとい、伯父さんに詳しく説明してもらった。
ちなみに、安西先生は私の父親の兄っていう設定になってるらしい。
だから叔父さんではなく、伯父さん。

体育館の管理は、私がいないときは伯母さんがやってくれるらしく、普通に学校に通ってもいいんだそうだ。
それを聞いたら嬉しくて、思わず伯父さんに抱きついた。

……たぷんたぷんしている肉が気持ちよかった。

学費などの心配もないようで、湘北高校の編入試験を受けたわたくし、無事に合格しました。
自分の世界で高校中退したのは最近のことだったし、学業面でも全く問題はなかった。

ということで私、蜂谷亜子は、今日から湘北高校の二年生!!


「転入生を紹介します。蜂谷さん、どうぞ」

担任の言葉に続き、私は教室へと足を踏み入れた。

「え!?亜子!?」

「亜子!?」

私のクラスは、2年4組。
誰がいるかなんて、当然知ってる。
リョータと彩子ちゃんは、二人揃って私を見るなり指差して名前を叫んだ。
それに対し、こちらは余裕のピース。
サプライズ成功、って感じ?
編入するなら、高校の体育館の改装が終わってからにしようと思って。
その方がみんなを驚かせることができるだろうと思っていたので、見事思惑通りだ。
知り合いという事もあってか、私の席は彩子ちゃんの隣の席にしてもらうことになった。






昼休みになり、彩子ちゃんとリョータと、三人でお弁当を持って屋上へ。
屋上の扉を開けると、気持ちのいい風が飛び込んできた。
学校の屋上なんて、二度と足を踏み入れることがないと思ってたのにね。
これも、神様(いるのかな?)と、安西先生……っとと、伯父さんのおかげだ。

「このへんでいい?」

「うん!」

彩子ちゃんに促され、適当な場所に腰掛ける。
そして、三人で弁当を囲んでランチタイム。

……と、思いきや。

「おお、マジでいるじゃん!」

「亜子さん……!!ほんとにこの学校に入ったんですね……!!」

三井さん、桜木くんがやってきた。
どうやら、リョータがみんなにメールで回したようだ。
来たのはこの二人だけだったけど、来てくれて嬉しかった。

当然のように私たちの輪の中に加わり、5人でのランチタイム。
三井さんと桜木くんは、購買で何かを買ってきたみたい。

「それにしてもなー、なんで黙ってたんだよ。練習のときはなんも言ってなかったじゃねーか」

「へっへ、みんなが驚くと思ってたから、何も言わなかったんだよー!現にリョータ、すっごいびっくりしてたじゃん」

「うっ、ま、まあそれは当たり前だろ!アヤちゃんだって、オレと同じだったじゃん!」

「そりゃーびっくりよ。亜子が来るなんて、安西先生も教えてくれたらよかったのに」

伯父さんには私が頼んでおいたんだもんね。
アッサリと了承してくれて、結構この人もイタズラ好きなんだ、って思っちゃった。

「で、お前、やるんだろ?」

「え?何をですか?」

三井さんに聞かれたが、何のことだか良くわからぬ。

「バスケだよ、バスケ」

「ああ、やりませんよー」

体育館の管理もあるから、部活は諦めている。
さすがに昼間はまかせっきりで、夜も、なんて、伯母さんに申し訳が立たない。

「ええっ、なんでですか!!あんなに上手いのに!!」

「それはねー、大人の事情ってもんなのだよ、桜木くん!」
「なーにが大人だ、オレより年下のくせしやがって。おっ、これいただき!」

「あっ、ちょっと、三井さん!」

私がバスケをやらないことに対し、あたふたしている桜木くんに偉そうに答えていると、その隙に三井さんにおかずを取られてしまった。

「おっ、うめーな。これ、自分で作ったのか?」

「そうですよ……って、リョータ!」

「おお、マジでうめぇ」

「ええ、どれどれ……」

「桜木くんまで!あっ、彩子ちゃんまで……!」

みんなして三井さんの言葉を真に受けたのか、私のお弁当へと手を伸ばしてきた。

「ほんとにおいしいわねー」

「ぐぬぬぬ、人が朝早く起きて頑張った弁当を……!!」

思わず呟いてしまったその一言。

「おまっ、キャラちがくねー?」

「うっさいリョータ!私は元々こういう性格なの!」

最初は、遠慮するさ。
誰だって。
でも、もう同じ学校の仲間になっちゃったんだし、遠慮してたら疲れるってもんよ。

「ぶはっ、おまえ、そのキャラのほうがいーわ」

「それ、褒めてんですか?三井さん」

「褒めてる褒めてる!あ、そーだ!その三井さんってのもやめろよ、他人行儀っぽいじゃねーか」

「あ、オレもそう思ってました!桜木くん、じゃなくていーッスよ!」

三井さんと桜木くんが、違う呼び方にしろという…でもさ。

「ええー、無理です」

「はぁ!?なんでだよ、宮城とマネージャーは普通に名前で呼んでるじゃねーか」

「二人は同い年だし、最初からそうだったから」

「ププッ、三井さん、断られてやんの!」

「うっせーてめー!宮城!生意気だ!」

「あははは!!」

こういうやりとりを見るのは凄く好きで、思わず声に出して笑ってしまった。
すると、三井さんの矛先はこっちに戻ってきたようで。

「元はと言えば、亜子!お前が呼び方変えないからだろーが!笑ってんじゃねーぞ!」

「ええ!ちょ、やめっ!わかりました、わかりましたよ!!」

以前リョータにやられたみたいに、今度は三井さんに首をロックされてしまった。
女の子に対してやることじゃないよ!?
了承の返事をすると、アッサリ離してくれて、しかも満足そうな表情になった。

俺様キャラだな……!

「じゃあ、寿先輩、でいいですか?」

「おお、いいじゃねーか。うんうん、よしよし、可愛い後輩め!」

寿先輩、というのが気に入ったのか、今度は頭を撫でられた。
一喜一憂して、可愛いのは寿先輩のほうじゃないのか?と思ったけど、また首をロックされそうだったから口に出すのはやめておく。

「亜子さん、オレは……!!」

蚊帳の外に出されてしまったような桜木くん。
かわいそうなので、彼も名前で呼ぶことにした。

「じゃあ、花道でいい?」

「おお……!!」


……嬉しそうだ。

「じゃあ、呼び名も決まったところで、話を元に戻すわね?」

「ああ、なんだっけ?」

「亜子が部活に入らないのか、ってことよ」

ああ……、その話に戻るのか。
ちゃんと理由を説明しないと納得してくれなさそうだな。仕方ない。

私に両親はおらず、あの体育館の管理をしないと取り壊されてしまうという事を掻い摘んで話す。
伯父さんにも同じような話をたくさんしたから、面倒になってしまって。
ちょっと端折っちゃったけど、通じたみたい。

「じゃあ、マネージャーも無理だな」

「何、私にマネージャーになって欲しかったの?」

「ばっ、ちげーよ!アヤちゃんが少しでも楽になればと思ってだなぁ……」

「はいはい、言い訳はいいって!」

「人の話を聞けよ!!」

「ぎゃっ、やめろリョータ!!」

リョータが私の首をつかみそうになったので、慌てて逃げた。
寿先輩や、花道が『やれー』だの『逃げてください!!』だの、はやしたててくる。

マネージャーでも良かったんだけどね。
あの感動が間近で見られるなら、自分でプレイできなくても……それでもよかったんだけど。

やっぱり、あの体育館は手放すことができないから。

こうして楽しく学校生活を送ることが出来てるっていうだけで、幸せだという事を……私は忘れちゃダメなんだよ。
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