スラムダンク | ナノ

 63

ところがどっこい、よ。
どうやら私は然程デリケートでもないらしい。

あの後悶々としつつも、服を着替えてベッドに潜り込んだら、いつの間にか眠っていた。
良く眠れるおまじないは、逆効果どころか効果が抜群だったってことだ。

お風呂は入る気になれなかったけれど、今からシャワーを浴びる。
今の時期に朝シャワーは寒いので、脱衣場はしっかり暖めておく。
一人の時にヒートショック起こしたら誰にも助けて貰えないもんな。



私が悩んでいる間も、どんどん時間は過ぎていく。
神さんが言っていた通り、このままでは皆との時間を無駄にしてしまう。

恋愛は……、インターハイが終わるまで置いておくとして、さ。
自分の心に素直に生きよう。
もし、突然元の世界に戻ることになっても、後悔のないように。

神さんの他にも望くんっていう相談相手も出来たし、立場は違っても健司くんだって話を聞いてくれる。

健司くん……けんじくん……。


…………。


ああああぁぁ〜……やらかしたよねぇ、盛大に。
おまじないもビックリしたけど、それ以前に泣きついてしまったようなものだ。
昨日のアレコレを思い出すだけで、顔に熱が集まっていく。

次に会うとき、顔に出なきゃいいけど……。


ああ、そうだ。
神さんにも望くんの事、伝えておいた方がいいかな?
望くんに聞いてからの方がいいだろうか。
どっちが先でも大丈夫だと思うから、二人同時に連絡しておくか……っとと、今日はクリスマスだった。
誰かと約束していたら水を差すのも何だし、そのうちでいっか。

あと、私が知っているのは越野くんの妹、なつきちゃんだけど……神さんと望くんが同じだったからって、なつきちゃんも同じとは限らないよね。
原作に出ていないだけで、兄弟がいる人なんていっぱいいるだろうし。

なつきちゃん、越野くんと一緒に居て幸せそうだったし、同じだったとしても変に拗らせても悪いし。
……うーん。
とりあえず、現状維持、かな。


今日は体育館も休みだし、食材の買い込みでもしようかな。
クリスマスに一人なのは虚しいけれど、イブである昨日にはしっかりパーティーしたもん。
藤真兄弟と親睦を深めたもん。

自分に言い訳をして、シャワーを止める。


用意しておいた服に袖を通し、それから自室の机のアクセサリーボックスからネックレスとブレスレットを取り出す。
激しい運動とか、バスケをしない時には出来るだけ身に着けておきたい。
宝物だけど、大切にとっておくだけじゃ勿体無いし!

制服だとブレスレットは難しいかもだけど、ネックレスならワイシャツで見えないから、毎日着けられるよね。

どうせならこの二つに合わせられるよう、イヤリングかピアスも欲しい。
ピアス……穴、開けてみる?
あれって痛いのかなぁ……でも自分で開けたり出来るんだよね。
挑戦してみようかな。



外に出て、自転車を走らせる。
今日が本番なだけあって、街中のクリスマスムードは盛り上がりを見せていた。

どこに買い物に行こうかなあ。
彩ちゃんのクリスマスプレゼントをまだ買っていないから、まずはそれを優先して……それから食材だな。

突発的に餃子が食べたい気分。
冷凍庫、割とスカスカだったよね……大量に作って冷凍しよう。
そしたらいつでも好きなときに焼ける。
餃子と……コーンスープでいっか、卵入りのやつ。





「亜子さん?」

「ん?」

プレゼントと食材と。
両方あるところを目指して大型のショッピングセンターに到着し、店内をうろうろしていると。

「あ、水戸くん!」

声を掛けられて振り向けば、私服姿の水戸くんが居た。

「こんにちは。一人……スか?」

「はいこんにちは。一人だよ?何で……ああ、クリスマスか。いいんですー、私のクリスマスは昨日終わったんですゥ」

「ぶっ、いや……別にそこまで言ってないっしょ」

言ってなくても言いたそうな顔してたじゃないか。
つーかお互い様じゃん。

「水戸くんこそ一人じゃん」

「俺も昨日騒いだんで、今日はいいかな」

「じゃ、お仲間ですね?」

「はは、ですね。何か買い物ですか?」

「んー、彩ちゃんのプレゼントと、自分でピアスを買おうかなって」

「アネゴも亜子さんも、ピアスの穴開けてないッスよね?」

アネゴって彩ちゃんの事か。
桜木軍団、彩ちゃんの事アネゴって呼んでるんだっけ?
凄いな彩ちゃん、ヤクザの元締めみたい。

「あー、彩ちゃんとピアスは別!私は開けてみようかなーと思っててさ。まだ悩んでいる段階だけど」

「へー、じゃあとりあえずピアッサーの置いてある店行ってみますか」

行ってみますか、と言いながらも先導して歩き始める水戸くん。
あれ、一緒に行ってくれるのかな?

「水戸くんの買い物はいいの?」

「俺は気儘に歩いていただけだから。あ、付いてったらメーワクですか?」

「いやいやとんでもない。時間が大丈夫なら是非」

「あざっす」

そう言って微笑む水戸くん。
水戸くんもさー、イケメンさんだからさー、様になるんだよね。
どうしてこう、この世界はイケメンが多いのか。
桜木軍団と一緒に居るとおふざけなノリが多いけど、水戸くん一人だとだいぶ落ち着いてる雰囲気なんだよね。
大人っぽい人だと思う。

「ここスね」

「おー。アクセサリーいっぱい。ピアスは……あの一角だね」

ピアスも、穴を開けるピアッサーも、色んな種類が置かれている。
ピアスは自分の好みのものと、ネックレスとブレスレットに合うものを選ぶとして……ピアッサーはどんなのを選べばいいのかなあ。

「水戸くんはピアス開けたことある?」

「いや、俺はないけど。ダチが自分で開けてるのを見たことはあるかなぁ……」

「そっかー、これ、このまま自分でバチン!ってやるのかな」

「あー、そっスね。自分でやるの怖かったら宮城サンとかに聞いたらどースか?つーかもう買う気満々じゃん」

「見たら可愛いのたくさんあるんだもん、欲しくなっちゃって。そっか、リョータってピアス着けてるもんね……買うだけ買っておいて、開けるときに聞いてみようかな。水戸くんナイスアイデア!」

「いやいやそれほどでも。だったらこれ、最初から石が付いてるヤツがいーんじゃないですか?亜子さんだったらこれっぽい」

水戸くんが取ったのは、小さなアレキサンドライトの石が付いたピアッサー。

「これっぽい?」

「似合いそうな色かなって。ホラ、耳に当てて鏡見て下さいよ」

言われるがままにピアッサーを耳に当て、鏡と向かい合う。
試しにアクアマリンやガーネットの物を当ててみたが、アレキサンドライトは控えめでいいかもしれない。

「それとも誕生石で選びます?」

「ううん、これにする。折角水戸くんが選んでくれたし」

「そりゃ良かった。ピアスも買っちゃうんスか?」

「うん、買っちゃおうかな。勢い大事!あと、彩ちゃんにもここにあるイヤリングから選ぼうと思ってて……彩ちゃんに似合いそうなやつ、一緒に選んでくれる?」

「俺でよけりゃ、喜んで」

あれでもない、これでもないと二人で話し合いながら物色して。
彩ちゃんには真ん中からクリスタルとローズに別れているハート型のイヤリング。
それのピアス版もあったので、私の分のひとつは真ん中からクリスタルとサファイアに別れているやつにした。
ネックレスとブレスレットに合いそうなものはこのお店には無かったので、別のお店に行くことに。

水戸くんとは最初のお店でサヨナラした。
水戸くんの携帯に連絡が来て、大楠くんからの呼び出しが掛かったそうだ。
一緒に選んでくれたことに対してお礼を言うと、俺も楽しかったから、と大人な対応で返してくれた。

二つ目のお店では何もピンと来ず、三つ目のお店で短めのチェーンピアスを見つけて、一目惚れで購入。
チェーンの先に虹色の小さなお花が付いていたので、一目惚れというよりもこれしかない!って感じだった。  

一人だったらもっと時間が掛かっちゃってたかもしれないし、偶然とは言え水戸くんが一緒で助かっちゃった。
あとは食材を買って、家に帰ってからひとり餃子祭りだ。

そうそう、リョータにも連絡しておこ。
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