スラムダンク | ナノ

 4

どうやら練習が終わったようで、彩子ちゃんの手招きを受けた私はみんなの元へ近づいた。

「あんまり体を動かしてなかったようだが、いけるか?」

「はい、大丈夫です」

ゴ……いや、赤木さ……うん、もういいや、ゴリで。
ゴリから話しかけられ、返事をした。
っていうか練習しながら私の様子も見てたんだね。
さすがキャプテン、視野が広い。

「よぉーし!!3対3、行くぞ!」

「「「「おうっ!!!」」」」

私の返事を聞いたゴリは、彩子ちゃんにゼッケンを配るよう指示をしながらコートの中へと入っていった。

5対5じゃないんだ……と思いつつも、渡された15番のゼッケンを受け取る。
あはは、懐かしいな。15番なんて一年のとき以来だ。
湘北のチームメンバーじゃないしね、番号が後ろなのは当たり前だよね。

そして、どういうチーム分けをするのかと黙って見ていたら。

ゴリ、桜木くん、リョータVS三井さん、流川くん、私という結果になった。

どういう思惑でそうなったかはわからないけど、私、三井さんと流川くんの足引っ張らないかな……。
身長がさ……みんな、かなり大きいんだよ。あ、リョータ以外だけど。
でも、その反面すっごくわくわくしてる。
だって、あんなに実現させたかった夢が、叶ったようなもんだもん。
自分のチームでインターハイは目指せなかったけど、彼らと一緒にプレイする、という夢は叶った。
たとえ夢だろうが(まだ言う)、こんなに嬉しいことはないじゃん!

とりあえず、三井さんと流川くんに近づき、挨拶をした。

「あの、新参者ですがよろしくお願いします」

「……」

「ああ、こちらこそよろしくな!」

三井さんは、元不良らしからぬ爽やかな笑顔で返してくれた。
しかし、流川……くん?

何ガン飛ばしてんだコラ。

「……」

なんか喋ってよ、気まずいでしょうが。

「……よろしく」

ようやっと反応来たよ!
一体なんだってんだ。
女が出来んのかよ、みたいな感じなんだろうか。
さっきはみんなしてこっちを見てたくせに……!

くっそう、なめんなよ。

「おい、お前には負けねーぞ!」

「だっはっはっは、亜子さん!手加減無用ですよ!」

「手加減なんていらないっつの!」

「「…!!」」

すかさず強気の返事をする。
私が睨んだのに驚いたのか、強気発言に驚いたのか、リョータと桜木くんの目が見開いた。

女だからって負けてられるか!
燃やすぜ闘志!えいえいおー!


ゴリに促され、みんながコートに立つ。
3on3とは違うらしく、普通に試合形式でやるみたいだ。
ジャンプボールには流川くんと、ゴリ。
私の近くにはリョータがいる。
身長が近いせいもあるだろう、一応私のマークってわけだ。
こっちの作戦でも私はリョータにつくことになっているけど。
漫画で見たすばしっこさを想像したら、どうやって動いたらいいかが自然と思い浮かんできた。

……速攻、試してみるか。

ボールが投げられた瞬間、流川くんが右手を払う方向へと走る。
見事ゴリに打ち勝って、私のもとへとボールがこぼれる。

すかさず拾い、ダッシュ!

「うおっ!早!!」

「リョータに負けてないんじゃない!?」

外野の声が、ちらほら聞こえる。
これでもドリブルの早さは県内トップクラスだったんだ、男子にだってそうそう負てなかったもんね!

「へへっ、甘い!」

ボールを持っていると持っていないとでは、走る速度が違うのは当たり前。
稀に逆の人もいるけど、ここでは例外なくリョータに回り込まれてしまった。

その時、視界の隅に三井さんが入った。

足を止めた瞬間、三井さんにパス!
もちろん、顔はリョータを見たまま。

「何ぃ!?」

「おっ!!」

パシィ!!といい音が響いて、三井さんはその後すぐに3ポイントシュートを打った。

「「「「ナイッシュー!!」」」」

見事に決まったシュート。
先取点は、私達が3ポイントを頂いた。

「お前、すげーな!やるじゃん!」

三井さんが近づき、ハイタッチを交わしてくれた。
なにこれ、ときめくじゃん!青春じゃん!!

「えへへ、これでもインターハイ目指してましたから!」

「……ナイスパス」

「わっ!」

突然、後ろから頭をポンッと叩かれ。
振り向くと、流川くんだった。

わあ……!
あの流川くんに褒められちゃった……!
さっきは無言で見てたくせに、そんなこと言われちゃうとすっごい嬉しいんだけど……!!

ああ、やっぱりこの雰囲気、すっごい楽しい。

まだ始まって少ししか経ってないけど、私の心臓は早鐘を打っている。

私、バスケやっててよかったなぁ……!










それから、リョータも桜木くんも、ゴリも、もちろんチームメイトの三井さんも流川くんも、私のことは甘く見ないようになったらしく、マークが一層厳しくなった。
ゴリは私を誘った本人だし、元々舐めてなかったようだったけど。

何らかのいい刺激になるだろうと、誘ってくれたみたいだけどね。
結果そうなってるみたいだし……少しでもお役に立てたっていうんだったら、嬉しい事この上ない。

今は練習という事もあり、本来ならば20分ずつの前半、後半戦なんだけど、10分ずつの前半、後半戦で行っている。

前半は13対10と、ちょっとリード。
そして後半戦突入。

後半が始まって3分くらい経っただろうか、私の目の前でパスを受け取った桜木くんのボールをすかさず横取りし、それを流川くんにパス。
すると彼は、ゴリを振り払ってゴールまで一直線。
そのまま一人で突っ込み、豪快にダンクを決めた。

ドガァ!!と、結構な音が響き、ゴールはギシギシ揺れている。
男には負けない!と強気な私でも、流石にダンクは出来なくて。

身長も、ジャンプ力も足りないから仕方がないんだけど、それでもあのシュート方法には憧れが強い。
自分でダンクを決めることが出来たら、すっごく気持ちよさそうだ。

「おい、亜子!ボーっとしてんな!!」

「あっ、すみません!!」

ゴールをいつまでも見つめてしまっていたようで、三井さんから叱咤を受けた。
その瞬間、まわってきたパス。
ボーっとしていたがために、今度は桜木くんにそのボールを取られてしまった。

「亜子さん、油断大敵!!」 

「くああ、返せ!!」

「嫌です!!」

返せ、と言いつつも桜木くんを追いかけたが、早すぎて追いつけない。
そして、彼もまた見事なダンクを決めた。

きっと流川くんに対抗心を燃やしたな!

桜木くんの着地した背中を見て、やっぱりすっごくうらやましいと思った。
未だにゴールは揺れている。
揺れるゴールをずっと見ていたかったけれど、また三井さんに怒られるしな、集中集中!




それから、タイムアップが訪れて。

結局試合は、25対26で、一点差で負けてしまった。
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