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どうやら練習が終わったようで、彩子ちゃんの手招きを受けた私はみんなの元へ近づいた。
「あんまり体を動かしてなかったようだが、いけるか?」
「はい、大丈夫です」
ゴ……いや、赤木さ……うん、もういいや、ゴリで。
ゴリから話しかけられ、返事をした。
っていうか練習しながら私の様子も見てたんだね。
さすがキャプテン、視野が広い。
「よぉーし!!3対3、行くぞ!」
「「「「おうっ!!!」」」」
私の返事を聞いたゴリは、彩子ちゃんにゼッケンを配るよう指示をしながらコートの中へと入っていった。
5対5じゃないんだ……と思いつつも、渡された15番のゼッケンを受け取る。
あはは、懐かしいな。15番なんて一年のとき以来だ。
湘北のチームメンバーじゃないしね、番号が後ろなのは当たり前だよね。
そして、どういうチーム分けをするのかと黙って見ていたら。
ゴリ、桜木くん、リョータVS三井さん、流川くん、私という結果になった。
どういう思惑でそうなったかはわからないけど、私、三井さんと流川くんの足引っ張らないかな……。
身長がさ……みんな、かなり大きいんだよ。あ、リョータ以外だけど。
でも、その反面すっごくわくわくしてる。
だって、あんなに実現させたかった夢が、叶ったようなもんだもん。
自分のチームでインターハイは目指せなかったけど、彼らと一緒にプレイする、という夢は叶った。
たとえ夢だろうが(まだ言う)、こんなに嬉しいことはないじゃん!
とりあえず、三井さんと流川くんに近づき、挨拶をした。
「あの、新参者ですがよろしくお願いします」
「……」
「ああ、こちらこそよろしくな!」
三井さんは、元不良らしからぬ爽やかな笑顔で返してくれた。
しかし、流川……くん?
何ガン飛ばしてんだコラ。
「……」
なんか喋ってよ、気まずいでしょうが。
「……よろしく」
ようやっと反応来たよ!
一体なんだってんだ。
女が出来んのかよ、みたいな感じなんだろうか。
さっきはみんなしてこっちを見てたくせに……!
くっそう、なめんなよ。
「おい、お前には負けねーぞ!」
「だっはっはっは、亜子さん!手加減無用ですよ!」
「手加減なんていらないっつの!」
「「…!!」」
すかさず強気の返事をする。
私が睨んだのに驚いたのか、強気発言に驚いたのか、リョータと桜木くんの目が見開いた。
女だからって負けてられるか!
燃やすぜ闘志!えいえいおー!
ゴリに促され、みんながコートに立つ。
3on3とは違うらしく、普通に試合形式でやるみたいだ。
ジャンプボールには流川くんと、ゴリ。
私の近くにはリョータがいる。
身長が近いせいもあるだろう、一応私のマークってわけだ。
こっちの作戦でも私はリョータにつくことになっているけど。
漫画で見たすばしっこさを想像したら、どうやって動いたらいいかが自然と思い浮かんできた。
……速攻、試してみるか。
ボールが投げられた瞬間、流川くんが右手を払う方向へと走る。
見事ゴリに打ち勝って、私のもとへとボールがこぼれる。
すかさず拾い、ダッシュ!
「うおっ!早!!」
「リョータに負けてないんじゃない!?」
外野の声が、ちらほら聞こえる。
これでもドリブルの早さは県内トップクラスだったんだ、男子にだってそうそう負てなかったもんね!
「へへっ、甘い!」
ボールを持っていると持っていないとでは、走る速度が違うのは当たり前。
稀に逆の人もいるけど、ここでは例外なくリョータに回り込まれてしまった。
その時、視界の隅に三井さんが入った。
足を止めた瞬間、三井さんにパス!
もちろん、顔はリョータを見たまま。
「何ぃ!?」
「おっ!!」
パシィ!!といい音が響いて、三井さんはその後すぐに3ポイントシュートを打った。
「「「「ナイッシュー!!」」」」
見事に決まったシュート。
先取点は、私達が3ポイントを頂いた。
「お前、すげーな!やるじゃん!」
三井さんが近づき、ハイタッチを交わしてくれた。
なにこれ、ときめくじゃん!青春じゃん!!
「えへへ、これでもインターハイ目指してましたから!」
「……ナイスパス」
「わっ!」
突然、後ろから頭をポンッと叩かれ。
振り向くと、流川くんだった。
わあ……!
あの流川くんに褒められちゃった……!
さっきは無言で見てたくせに、そんなこと言われちゃうとすっごい嬉しいんだけど……!!
ああ、やっぱりこの雰囲気、すっごい楽しい。
まだ始まって少ししか経ってないけど、私の心臓は早鐘を打っている。
私、バスケやっててよかったなぁ……!
それから、リョータも桜木くんも、ゴリも、もちろんチームメイトの三井さんも流川くんも、私のことは甘く見ないようになったらしく、マークが一層厳しくなった。
ゴリは私を誘った本人だし、元々舐めてなかったようだったけど。
何らかのいい刺激になるだろうと、誘ってくれたみたいだけどね。
結果そうなってるみたいだし……少しでもお役に立てたっていうんだったら、嬉しい事この上ない。
今は練習という事もあり、本来ならば20分ずつの前半、後半戦なんだけど、10分ずつの前半、後半戦で行っている。
前半は13対10と、ちょっとリード。
そして後半戦突入。
後半が始まって3分くらい経っただろうか、私の目の前でパスを受け取った桜木くんのボールをすかさず横取りし、それを流川くんにパス。
すると彼は、ゴリを振り払ってゴールまで一直線。
そのまま一人で突っ込み、豪快にダンクを決めた。
ドガァ!!と、結構な音が響き、ゴールはギシギシ揺れている。
男には負けない!と強気な私でも、流石にダンクは出来なくて。
身長も、ジャンプ力も足りないから仕方がないんだけど、それでもあのシュート方法には憧れが強い。
自分でダンクを決めることが出来たら、すっごく気持ちよさそうだ。
「おい、亜子!ボーっとしてんな!!」
「あっ、すみません!!」
ゴールをいつまでも見つめてしまっていたようで、三井さんから叱咤を受けた。
その瞬間、まわってきたパス。
ボーっとしていたがために、今度は桜木くんにそのボールを取られてしまった。
「亜子さん、油断大敵!!」
「くああ、返せ!!」
「嫌です!!」
返せ、と言いつつも桜木くんを追いかけたが、早すぎて追いつけない。
そして、彼もまた見事なダンクを決めた。
きっと流川くんに対抗心を燃やしたな!
桜木くんの着地した背中を見て、やっぱりすっごくうらやましいと思った。
未だにゴールは揺れている。
揺れるゴールをずっと見ていたかったけれど、また三井さんに怒られるしな、集中集中!
それから、タイムアップが訪れて。
結局試合は、25対26で、一点差で負けてしまった。
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