スラムダンク | ナノ

 48

文化祭まで後四日。
いよいよ校内は慌しくなってきた。

ウチのクラスでもほとんど準備は完了しており、後は前日の飾りつけや微調整をするのみとなっている。
買出しも再び花道と水戸くんに手伝ってもらい、彩ちゃんと四人で行って来たので心配はない。
だいぶ進みが速いほうらしく、他のクラスはまだまだ終わってないところもあるみたいで人員貸し出しなんかもしている。
学校全体で団結力があるのはいいことだ。
入った高校が湘北で良かった。
他の学校もそれぞれいい所なんだろうけど、なんていうか落ち着ける場所になったっていうのが一番かな。

文化祭の二日前……明後日から全部活動も休止となる。
体育館やグラウンドも飾りつけ準備をするためだ。
休みといえども各部手伝い場所が決められているようなので、帰っていいというわけではない。
文化祭までは龍之介さんが体育館の管理をしてくれるということなので、私もバスケ部の手伝いに参加しようと思っている。

今日はどのクラスがどんな出し物をするのか、事前に配られたプリントと照らし合わせつつ校内を見回ってみることにした。
暇人といえばそう言えなくもない。
や、ほら、手伝えって言われたら喜んでお手伝いするよ?
でも今のところ誰からも声がかからないからいいかなって。


邪魔にならないように場所を選んで廊下を練り歩く。
つきあたりの角を曲がったところでなんとも懐かしい青田先輩に出会った。
校内で見かければ挨拶くらいはするが、こうやって面と向かうのは久しぶりである。

「こ、こんにちは」

「や、やあ!亜子ちゃんじゃないか!」

出会って瞬間的に青田先輩の顔が赤くなったので、思わず挨拶に出した声がどもり、一歩引き下がる。

「ちちち丁度良かった、さ、探してたんだ!」

そんな赤い顔してどもるなよ、気持ち悪いじゃないか。
多分さあ、この人こんなんじゃなければイイ顔している類だと思うんだよね。
こんなんじゃなければ。
……一部の人にはモテそうだよな、絶対本人には言わないけど。

「探してた……?私のことですか?」

「何も言わずに受け取ってくれ!」

「あ、ちょ!」

オイコラ青田!
何も言わずに受け取ってくれって言いつつも思い切りの押し付けじゃないか!
持っていた箱を私に押し付けた青田先輩は、じゃっ!と一言残して颯爽と走って行ってしまった。

なんなんだ一体。

もらった箱を何気なしに開けてみると。

「「うわ……」」

「!?」

声がハモッたことに驚き、後ろを振り返るとそこには怪訝な顔をした流川が。

「ビックリした、流川か。気配がないのよ気配が!」

「気配を消して歩いてたから」

「嘘!?」

「嘘」

「……無意味な嘘つくのはやめてくれるかね」

脱力気味に言うと、フン、と笑う流川。
なんなのこの意地悪そうな感じ。

「簡単な嘘に騙されるほうが悪いとオモウ」

「あんたが失礼なのはよくわかった」

人を小馬鹿にしくさって。

「で、何か用事があったの?」

「イヤ、亜子先輩とジュードー男が見えたから来てみただけ……ていうか、それ……」

なんだ、もしかして何かあったらと思って助けに来てくれたのだろうか。
意地悪とか失礼とか言ってごめんよ、前言撤回するよ。

「ああ……これ……ね。なんであの人がこんなもん渡してくるんだろうね」

箱を開けた中に入っていたのは、ヘッドドレス。
これって、少なくともウチのクラスの出し物が仮装喫茶、そしてメイド服を着るっていうのを知ってるから持ってきたんだろうけど。
メイドって言っても服だけで小物なんて……小物……これをあの人が自分で買ったんだろうか。
想像するだけでちょっとなんか……うん……あはは。

「ソレ捨てれば?」

「あー、それもいいかもね。」

話しながらの自然な流れで流川と一緒に廊下を歩く。
すると、そこに通りかかったのは同じクラスの一人の女子だった。

「あっ!なにそれ!なんでそんな可愛いもん持ってんの!」

「えっ、コレ……?」

「いいねー、このヘッドドレス!小物の計画なんてしてなかったけどヘッドドレスくらいなら今からでも間に合うんじゃない!?ちょっと貸して、衣装班に言ってくる!」

「え、あ、ええー!?」

私の手から箱を奪い取って、我がクラスのほうへとダッシュして行ってしまった彼女。
呆気にとられた私の足が動くはずもなく、追いかける気にもなれなかった。

「……ご愁傷様……」

「ほんと……ご愁傷様としか言いようがないよね……」

小さなため息をつくと、流川に頭をぽんぽん、とされた。
ちょっと気分が落ちたので有難く受け入れることにした。

「ところで、私これから色んな場所を見て回ろうと思ってたんだけど、流川は何も用事ないの?」

「オレは特にな「あ、いたいたルカワ!!てめーなにサボってんだよ!オレらのクラスまだ全然おわってねーんだぞ!!」

「…………チッ」

「なるほど、クラスの手伝いに戻るのね」

察するところ流川は自分のクラスの手伝いをサボって抜けてきたというところだろう。
追いかけてきた彼が流川ににらまれる姿は少々不憫である。

「睨んだって無駄だかんな、手伝ってもらうかんな!」

「……へいへい」

「じゃあ頑張ってね流川!」

「ッス」

ダルそうにしながらも、流川は素直に呼び戻しに来た彼の後ろについて行った。
流川が暇だったら一緒に見て回ろうと思ったのに、ちょっと残念である。

仕方がないのでもう一度プリントを見つつ、一人で歩き始めることにした。


ちなみに知り合いの中では花道のところがたこ焼きで、流川のところがジェットコースター……ジェットコースターってどうやるんだろう?
教室内で大掛かりなものを作っているんだろうか、それだったら一人でも人手が欲しいっていうのも頷ける。
赤木先輩と木暮先輩のところが演劇。
演劇……別段何をするかは聞いてないんだけど、赤木先輩と木暮先輩は何か役をもらってたりするんだろうか。
そうだったら面白そうなので覗いてみたくもなる。
寿先輩のところはクレープ。
先輩がクレープ作ったりするのかな、なんかその姿を想像したら可愛く思える。
後はクッキーやポップコーン販売、ミサンガ・ストラップ販売、お化け屋敷や体育館ライブなど、様々な出し物が書いてあった。

こういうのを見ると今から楽しみすぎてしょうがない。
知り合いのみんなも一生懸命準備に取り組んでいたので、邪魔しちゃいけないと思いつつ声はかけずにちょっとだけ見学してから次へ次へと歩いて。

一周終えて自分のクラスに戻ると、衣装班がヘッドドレス製作にとりかかっていたのは言うまでもない。


青田……今度会ったら赤木先輩に叩きのめしてもらう……!!
prev / next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -