スラムダンク | ナノ

 3

同い年の女の子と喋るのは、学校を辞めてから久しぶりだった。
だからもう少しだけ彩子ちゃんと話をしたかったけれど。
彼女はマネージャーだから、仕方ないよね。

彩子ちゃんはごめんね、と言いつつタオルとドリンクの準備に行ってしまった。

残された私は、というと。
別段やることもないので、コートの半面でボケッと彼らの姿を眺めていた。

コートは二面ある。
しかし、とりあえずは一面しか使わないという事なので、使われてないこっちにいるってわけだ。

試合形式の練習になったらこっちも使うんだって。
だったら、それまでは私も体を動かそうと思って。

せっかくみんなと一緒にいるんだもん、どうせなら同じコートに立ちたいじゃない。
同じ空気の中で、同じ気分を味わいたいじゃない。

夢、だけど。



準備運動、そして体をほぐすダッシュ等が終わり、パス練習が始まった。

高校生男子の力強い動きが、目に焼き付けられる。
それを見ている私自身も、体がうずうずしてきちゃった。
俗に言う、触発ってやつ。

さっき転がしておいたボールを取りに行って。
そのボールを軽くもてあそびつつ、ドリブルを始めた。
それから、ゴールを目指してシュート!

邪魔するものは誰もいないし、入って当たり前。
当たり前だろうがなんだろうが、『スパッ』というネットを切るボールの音は何度聞いても好きだ。

それを何度か繰り返したあと、今度はシュートだけを繰り返した。
近いところから、徐々に離れて、最後はスリーポイントラインから。

ボールはリングに当たることなく、綺麗な弧を描き、理想の形でネットを切った。

ああ、やっぱり気持ちいい。

バスケットボールって、なんて楽しいんだろ…!



……あれ?


……なんだろ、この静けさ……。




隣のコートで練習しているはずなのに、妙な静けさが気になり、チラッと見てみる。

「うわっ!な、なんですか!?」

静かだと思ったら全員が動きを止めて、こっちを見ていたのだ。
ちょ、心臓に悪いって!!
そう思っていると、赤木さんが近づいてきて。
うお、ほんとにゴリ……!なんて考えていたら、そのまま声を掛けられた。

「蜂谷……キミは、バスケをやっていたのか?」

「え、あ、まあ……はい」

「そうか……良かったら試合形式の時に、チームに混ざってみないか?」

私の動きを見て、素人じゃないと判断したらしいゴリ……もとい、赤木さんは、一緒に試合に混じれという。

そりゃあさ、たくさん練習もしてインターハイ目指して頑張ってきたよ?
でも、高校生にもなれば男女の差って結構きついと思うんだよ。
だから、この話はなかったことに……なんて、さ。

「はい、是非!!」

頭で考えていることと、口から出た……出てしまった言葉は全く正反対のもので。
理論的に考えちゃダメダメ。
あんなに憧れていた彼らと一緒にプレイができるなんて、夢みたいじゃない!!

って、夢なんだけど!
でも、もうそんなことどうでもいいや。
やばい、舞い上がっちゃう!
嬉しすぎ……!


とりあえず、私の返事を聞いた赤木さんは、自分たちの練習を再開するため隣のコートに戻っていった。

私も心を弾ませながら、再び自分の練習へと集中することにした。



……どうか、まだ夢が覚めませんように。
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