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交流試合の最後に残った大きな疑問。
その場にいる誰かに話を聞けばよかったものの、なんとなくタイミングを逃してしまって。
そもそもどうやって聞けばいいのかもわからないし、まずは質問する内容をまとめなければいけないだろう。
今が9月で、本当だったら高校3年生である赤木先輩や木暮先輩は引退してて。
寿先輩だけは冬の選抜があるから、まだいるのはわかるけど。
でも、引退するのってウチの学校のメンバーだけじゃなかったはず。
魚住さんとかも引退……だったよね、確か。
つまり、ウチの学校だけじゃなくて全体的にまだ引退してないということだから……
こっちの世界では全員冬の選抜まで残らなきゃいけなくなったとか?
しかしそれだと、受験勉強をする人にとってはかなり不利だよなぁ。
そうじゃない理由が他にあるとしたら…………あー、考えてても全くわからない。
駄目だ。
ベッドに体を預けたその時、携帯電話の着メロが鳴った。
「はい、もしもーし」
『もしもーし、じゃないわよ!アンタ今どこ?学校来ないの??』
「えっ」
『それとも風邪でも引いた?』
電話の主は彩ちゃんで。
言葉の意味を理解し、部屋の時計に目をやる。
「どあああああああ!!!遅刻!行く、今から行きます!!」
『え、あ、ちょっ……』
暢気に電話している余裕なんてない、どうして学校の時間まで忘れて考え事を続けてしまったんだろう。
彩ちゃんが何か言ってたにも関わらず電話をぶった切り、急いで制服に着替えた。
着替えた……はいいが、彩ちゃんには今から行くと言ったものの、やっぱりさっきの考え事が自分の頭の中を支配してしまって。
なんか学校という気分じゃないというか……サボリたい、とか思ってしまったり。
この疑問さえ解決できれば喜んで学校に行くんだけど。
この世界で生きていく上で結構重要な問題だと思うんだよ。
学校で誰かに質問したら、ちゃんと答えてもらえるかな。
花道なんかに言ったら『知らないんすか!?俺でも知ってるのに……!』とか言われてしまいそうな気がする。
寿先輩やリョータには馬鹿にされるのがオチだ。
となると、やっぱり頼りになるのは我が伯父さん!
よし、やっぱり今から学校に行こう。
そして伯父さんのいる所を探して、伯父さんに話を聞いてもらおう。
鞄を手に取り、ダッシュで学校に向かう。
完全に遅刻なのは仕方がない、家を出たのがHRが始まる時間だったから。
学校に着くなり伯父さんのいそうな場所に移動する。
その間授業は普通に行われているわけだから、他の先生にはみつからないように、と。
伯父さんの姿を探すこと10分、体育教官室にその人を発見。
こそこそと入って、小さな声で伯父さんに呼びかけた。
「お・じ・さーん!」
「……んん?」
ちょいちょいと手招きをすると、伯父さんも私に気づいて外に出てきてくれた。
「亜子くん、今は授業中では……」
「そうなんですけど、どうしても伯父さんに聞きたいことがあって!伯父さんじゃなきゃ駄目なんです。私の事情を知ってる人じゃなきゃ、きっと馬鹿にされちゃう」
「…………ふむ。話を聞こうか」
教室に追い返されることも多少は覚悟していたけれど、伯父さんは私の切羽詰った顔を見て察してくれたのか、話を聞いてもらえることになった。
「あの、赤木先輩達は3年生じゃないですか?」
「ああ、そうだね」
「いつ引退するんですか?」
「…………ああ、なるほど」
一人納得した様子の伯父さん。
相変わらず、私にはさっぱりわからない。
すると、伯父さんはにこやかに笑ってこう言った。
「この世界はね、今年から高校4年生制度が導入されているんだよ」
こっ、高校4年生制度!?
「そ、それ本当ですか?!」
「私が亜子くんに嘘をつく必要はないでしょう?ほっほっほっほ」
それはそうなんだけど。
あまりにも有り得ないことにビックリしすぎて、思わず挙動不審になってしまう。
補足として、と言いながら私が納得できるように色々と教えてくれた伯父さん。
その内容は驚きの連続だった。
今年から高校4年生制度が導入されるので現在4年生はいないけれど、来年の赤木先輩達が初の高校4年生になるそうだ。
何故この制度が導入されたかというと、簡単に言ってしまえば学生のうちにもっと学べということ。
それと、高校4年生制度導入に伴い、今年のインターハイや冬の選抜など大きな試合は一切なくなって。
来年からまた復活するそうだけど。
……いまいち理解不能なことも多々ある。
別にインターハイをなくす必要とかないんじゃないのかなぁ。
まあ、でもそのおかげで先日みたいなお遊び感覚の交流試合ができちゃったりするのかな。
本当だったら、この時期にそんな遊びみたいなことが出来るわけないし。
んん、待てよ。
つまり、あと一年近くは同じメンバーで一緒に部活が出来るってこと?
湘北だけに留まらず、他校の選手も、みんな一緒にバスケが続けられるってこと?
……それって、凄く素敵なんだけど!!!
本来だったら私がこの世界に来た時点で、赤木先輩をはじめとする3年のみなさんは引退してしまっているはずだったんだ。
けど、まだまだ一緒にバスケやっていられるなんて……!
ああ、どうしよう。
この世界に来て最大の喜びかもしれない。
「納得してもらえたかな?」
「あ、はい!有難うございました、これでスッキリしました!!」
「じゃあ、早く教室に戻りなさいね」
「あ」
喜びをかみ締める間もなく、伯父さんに笑顔で戻れと言われてしまった。
流石にここに留まるわけにもいかないし、伯父さんにペコリと頭を下げて教室へ。
途中の足取りはとても軽やかだったが、授業中の教室に入る度胸はなかったので休み時間になるまでトイレで過ごすことにした。
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