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全員の着替えが完了し、コートに集結。
今までにも団体でイベントやレクリエーションを理由に使用してくれた人たちがいたけれど、この大人数は初めての事で。
しかも、ほとんどが憧れのプレーヤー…それが紙面上ではなく、現実に。
思わず鳥肌が立つのも仕方ない。
こんな最高の場面に、自分が立っているのが不思議でしょうがない……けど、紛れもない現実。
ほっぺたをつねったところでやっぱり痛いし。
「お前何してんだよ」
「え?あ、あははは!なんかこんなの夢みたいだなぁって思って、思わず自分に手が出ちゃいました」
ほっぺたをつねっている私を見つけて、寿先輩が近寄ってきた。
そうだよね、寿先輩は私がこの世界の人間じゃないってことは知らないんだし。
この感動を理解してもらえるのは難しいよね。
「まあ、こんなに集まるって滅多にねぇしな。試合でもなんでもない時なら、なおさらだな。だが!」
「うあっ!」
だが!という言葉を強調しながら、やはり私の頭を掴む寿先輩。
「お前は湘北だかんな、他校のヤツらに目移りしてんじゃねーぞ!」
えぇ。
いや、確かに湘北の一員なのかもしれないけど。
「寿先輩、今日は交流試合だし、他校も何もごちゃ混ぜじゃないですか」
「バカ!そういう事を言ってんじゃねえ」
「あっ、またバカって言った!」
「バカにバカっつって何が悪い!オラ、安西先生の集合かかった。行くぞ!」
「えっ、あ、はいはい」
結局寿先輩が何を言いたいのかはよく理解できなかった……けど、寿先輩にバカ呼ばわりされる筋合いはない!
ということで、勝手に羽目をはずしすぎるなよと言いたかったんだな、と解釈しておくことにした。
伯父さんの集合がかかり、全校整列。
現在会場にいるのはかなりの人数なのだが、さすがにこんなに大人数での試合は不可能なため、各校のレギュラー及び控え選手以外の人達はみんなギャラリーへと移動してしまった。
残念な気もするけど、仕方ない。
こうしてみると交流試合なんて簡単なものじゃなくて、今から普通に四校対抗試合が始まりそうな雰囲気だ。
交流試合といってもみんなそれなりに気合が入っているような気がして、それに飲まれてしまいそうになる。
けど、本来の公式試合であればもっとすごい気迫なんだろうなぁ。
一度はその舞台に一緒に立ってみたいものだ。
それが叶わないという事はわかってるから、絶対に口にはしないけど。
「では、これから四校合同交流試合を開催したいと思います」
伯父さんの開催の言葉から始まり、田岡先生の諸注意に続き。
それから、みんなお待ちかねの高頭先生から賞品についての説明が。
「では、今から試合の賞品についての説明を行う」
「おおお!待ってました!」
「うるさいぞ花道、黙って聞いてろ!」
「そーだー!黙れ赤毛猿!」
「なんだと!リョーちんはともかく、野猿は許せん!コラ、じい!ちゃんとしつけしておけ!!」
「なにおう!?しつけとはなんだ、しつけとは!」
「黙れない人にはどんなに頑張っても一切賞品無しですよ。ホッホッホッホ」
賞品と聞いて耐え切れなかった花道が騒ぎ出し、それにつられてノブも便乗。
他の人たちもざわめき始めたところに、伯父さんの一言。
決して大きな声だったわけじゃないのに、その一言が放たれた途端誰もがピタッと静かになった。
そんな中、私は一人で吹き出しそうになってしまったのだけれども。
あ、一人じゃないか。
彩ちゃんも同じく堪えてるっぽい。
みんな子供みたいで面白すぎる。
静かになったところで高頭先生の話が続く。
「えー、まずは優勝賞品。チーム全員に八景島ランドのご招待券だ。しかも、奮発して一人につきペアチケット!」
「「「おおおおお!!」」」
みんなから沸き起こる歓声。
こんな遊び感覚の試合と言っておきながらその賞品はものすごくオイシイと思うんだけど!
すごい、これは是非ゲットしたい…!
といっても、ゲットして自分で使うんじゃなくてお世話になっている伯父さんと伯母さんにあげたいっていうのが理由なんだけども。
「二位は、NIKEのリストバンド。色は二種類用意したから、メンバーで分け合って欲しい。と、まあ、優勝賞品を奮発してしまったものでな、賞品はここまで……と、言いたいところだが更にもうひとつ。MVPとして、バスケットボール一個。以上だ」
うわお、リストバンドとか、ノブや神くんと話していた事が本当になっちゃったし!
意図せず神くんと目が合って、クスリと笑われたような気が……気のせいじゃないな、あれは。
きっとあの時の女の子発言を思い出したに違いない。
あとで軽くつねってやる。
MVPは絶対にとれっこないのは分かっているから、ボールは諦めるとして。
第一私はこの体育館を好きに使えるわけだし、ボールなんて全て自分の物みたいなもんだ。
本当は公共のものだけど、まあそれはいいとして。
二位のリストバンドは普通に欲しいなぁ。
「では、公平なチーム分けを行うため、今からくじ引きをしてもらう!各チーム順番に、私のところに来なさい」
くじ引きでチーム分けをするというのは前からわかっていたことだけど。
くじを作ったのは私だしね、でもね、これって運次第でどんなチームになるかわからないってことよね。
公平って言えるのかなぁ。
遊びだからいいのかな。
運も実力のうちって言うしな、それはそれで仕方ないか。
湘北のみんなと一緒に私もくじを引かせてもらった。
箱から紙を一枚取り出し、開いてみると中には『E』の文字。
体育館には既にチームごとの集合場所の紙を貼ってあるので、くじを引いた後は自主的に自分のチームの場所へと移動する。
つまり、私はEチームの場所へ移動するというわけだ。
「あれ、亜子もEチーム?」
「ん?」
いつの間にか隣を歩いていたリョータが、Eと書かれた紙を見せながら問いかけてきた。
「おお!リョータもEチームなんだね!一緒一緒!」
私も自分の持っていた紙を見せて、リョータとハイタッチを交わす。
同じ湘北から一緒のチームになれるって、安心する。
何度も一緒にプレイしたし、リョータの癖とかも少しはわかっているからパス出し合ったりするのもやりやすいと思う。
どうやらリョータ以外のメンバーは他のチームになってしまったようだ。
それぞれ別の場所へと移動している。
湘北メンバーの後他校の選手もそれぞれくじを引き、各チームへと散らばって。
「あれー、偶然だねぇ。蜂谷ちゃんと一緒のチームなんて、嬉しいじゃない」
「仙道くんじゃん!うわー!すごい、心強い!」
「仙道とは対決したかった気もするけど、これはこれで凄い面白そうじゃん」
「宮城と組むなんて有り得ないしな、よろしく頼むよ」
「こちらこそ、だ!」
「私も混ぜて!」
三人でがっちり握手を交わしていると。
「俺も一緒のチームだ、仙道」
「池上サン!これまた心強いですね〜」
「俺はお前が居ることのほうが心強いよ。宮城と蜂谷さんも、よろしくな」
「はい、こちらこそ!」
「同じく、よろしくお願いします」
池上さんも輪に入り、更にがっちり握手を交わしていると。
「俺も、Eチームだ。よろしくしてやってくれないか」
「花形さん!」
ひらりと紙をこちらに見せる花形さん。
当然、すかさず握手を交わす。
もちろん他の三人も花形さんとも握手して。
「なんか、普通に凄いメンバーだと思うのは俺だけじゃないよな?」
「いや、私も凄いと思うよリョータ」
「これで全てのチームが揃ったな!それではこれより、各チームのポジションを決めて貰いたい。時間は〜……そうだな、10分もあればいいだろうか。その後、30分程練習して、試合開始するからな!」
リョータと話をしていると、田岡先生の声が体育館に響き渡った。
「ポジションか……花形さんはセンターで決まりでしょ。他のメンバーはどうするよ?」
仙道くんのその言葉に、みんなうーん…と首を捻ってしまった。
私が思い描いているポジションがあるんだけど…言ってもいいかな。
いいよね、一応チームの一員だし!
「あの、提案なので却下でもいいんですけど。仙道くんはポイントガード、池上さんはパワーフォワード、リョータがスモールフォワード、最後に私がシューティングガードっていうのはどうでしょう。シュートにそこまで自信があるわけでもないんですけど、私みんなみたいに力があるわけでもないし。本来ならばリョータはポイントガードのほうがいいんだろうけど、万能的でもあるから、スモールフォワードでもいいかなって。今回は仙道くんに任せてさ」
「ああ、俺もそれに賛成だ」
「そうだな、蜂谷ちゃんのシュート力は俺が保証するよ」
花形さんに続き、仙道くんも賛同してくれて。
しかも嬉しい事まで言っちゃってくれたり。
池上さんもリョータも特に不満はなかったようで、そのポジションでOKということになった。
「よし、じゃあウチのチームはこれで決まりだな!最初はどのチームと当たるんだろーなー」
リョータが言うと、みんなで周りのチームの観察を始めた。
観察といっても、どのチームに誰がいるかを見ているだけだけれども。
その時、隣のFチームにいる藤真さんの妹、望ちゃんとバッチリ目が合って。
「何見てんだよ、テメーには負けねーぞ」
物凄い勢いで啖呵を切られました。
どれだけ強いのか、お手並み拝見!
そう思いながら、
「私だって、負けないよ!」
と言い返してしまったのだけれども。
よくよく見てみると、Fチームのメンバー…凄くない?
ゴリ、流川くん、神くん、伊藤くん……これはこれで強烈なんじゃないのか……!
何気に流川くん、こっち睨んでる?
神くんも、表情は穏やかだけど……なんか、こう、オーラが凄いっていうか……言葉では言い表せられないというか。
ゴリと伊藤くんだけは普通なのだけれども。
このチームと対戦するの、ちょっと怖いなーとか思ったり。
試合はトーナメントじゃなくリーグ戦だから、どのチームとも確実に当たる。
一番の要注意チームはこのFチームかもしれない。
ま、負けないぞ……!
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