スラムダンク | ナノ

 16

「四校交流試合を開催することになりましたよ」


始まりは、伯父さんのこの一言だった。
四校とは、我が湘北高校、陵南高校、海南大付属高校、翔陽高校のこと。
神奈川メインの高校勢揃いじゃーん!と昂った私の耳に次々と入ってきた言葉は、私を喜ばせるもの以外の何物でもなかった。

「交流試合といっても、今回はお遊び感覚のようなものです」

何がどうお遊びなのかと言うと。
今回の交流試合では、選手が各校ランダムに選ばれ、オリジナルのチームが出来上がる。
スタメンだけじゃなく、補欠選手もその対象で。
何チームかを作り、しかもその中には私も混じっていいという事だった。
『キミも、今回は参加だからね』という伯父さんの言葉に目を見開き。
嬉しさと同時に、いいのかな?っていう気持ちがあって。
素直にそう聞いてみると、お遊び感覚だって言ったでしょう、と返された。
伯父さんがそう言うってことは、各校の監督にも…多分、OKは貰ってるんだよね?

やばい、すっごい楽しみ……!
何が楽しみって、今まで出会ってないキャラ達に一気に出会えちゃうことが楽しみなのだよ!
このままだったら、試合がない限り出会えないキャラもいるんだろうなって思ってたから…それが、こんな形でみんなと会えちゃうなんて。

最高です有難うございます……!


話を聞き進めるうちに、もう一つ、楽しみが増えた。
私の他に、もう一人女の子の参加者がいるんだそうだ。
翔陽の藤真さんの妹さん。
現在高校二年生。
藤真さんに妹……それも、年子なんていたかな?と記憶を探ってみたけれど、そんな覚えはなく。
まあ、私がここに存在すること自体イレギュラーなんだし、原作と違う設定もあってもおかしくはないか。
それか私がそこまで詳しくなかったか、だな。
自分自身で勝手に納得し、それならそれでその子と仲良くなれたらいいなぁ、なんて思った。






伯父さんから話を聞いた次の日、私の機嫌は一日上がり調子。

「亜子、機嫌いいわねー。もしかして例の話?」

「うん、そう!もう嬉しくって嬉しくって!」

彩ちゃんに話しかけられ、満面の笑みで答える。
すると、『笑顔すぎて気持ち悪い』と言われてしまった。
けど、今の私にそんな言葉は効かないね!!

「いいんだもーん、嬉しすぎて顔が壊れたんだもーん」

「……頭までおかしくなったみたいよ?」

「いいもーん!」

「あっそ」

彩ちゃんは呆れたように笑って。
それでも、彩ちゃんも私が交流試合に参加できることを一緒に喜んでくれたのが嬉しかった。


それから、休み時間に廊下でばったり会った寿先輩ともその話題で盛り上がった。

「おう、亜子!お前、聞いたか?」

「聞きましたよー!もう、すっごい楽しみですねー!」

「だよな、こんな事って普通有り得ねえよ。それによ、聞くところによると、なんらかの賞品も出るって話だぜ?」

「え、嘘!?」

「嘘じゃねーと思う……けど、噂の出所が怪しいっちゃ怪しいけどな」 

「誰ですか、その出所っていうのは」

「あん?桜木だよ、桜木」

「ああ……それは、確かに怪しい……」

だろー?なんて笑う寿先輩と、もうちょっと話をしていたかったけれど。
予鈴が鳴ってしまったのでそこでさよならした。

試合に出れる上に、賞品までもらえちゃうなんて……!
なんて素敵なの!
ああ、でも、確かな情報じゃないんだっけか。
花道のところに行って確かめてみようかな。





そんなわけでやってきました昼休み。
噂の真相を確かめようと、花道のクラスへ出向いた私。
同じ学年ならまだしも、他の学年の教室って……ちょっと緊張するよなぁ。
彩ちゃんにでも付き合ってもらえばよかったかな……。

入口付近でこそこそと花道の姿探した…んだけど、教室の中には見当たらない。
あの赤坊主は目立つし、探しきれないってことはまずないしね。
どっか行っちゃったのかな、他を当たるか。

そう思ってUターンすると。

「あれ」

「ん?」

私の後ろに人がいたらしく、振り返った私を見て『あれ』って……。

「あんた、亜子さんでしょ」

「そういうアナタは水戸くんじゃないですか」

そうなのだ。
桜木軍団の一人、水戸洋平に出会ってしまったのだ。
バスケが好きな私は、バスケ部のことしか頭になくて。
花道の周りにはたくさんの友達がいるっていうこと忘れてた。
今更ながら実際会ってみると嬉しいもんだなって実感する。

「オレの事知ってんっすか?」

「うん、花道とよく一緒にいるしね、水戸くんこそ私の事知ってるの?」

「オレも亜子さんと同じ理由っすよ、バスケ部に結構来てるでしょ」

「っていうか、今まで会わなかったのが不思議だよねー」

「ああ、面と向かって会うのは初めてっすよね、見かけた事なら何度もありましたけど」

え、マジでか。
私は『花道とよく一緒にいるしね』とか言っておきながら、今まで桜木軍団は目に入ってこなかったぞ。
………それだけバスケに夢中だった自分も、どうなのよって思う……かな。

バスケが好きっていうことには誇りを持ってるけど、視野が狭いっていうことにも結びつくよね。
まだまだダメじゃん、自分。

「そんで、花道に用事っすか?」

「ああ、そうそう。探したんだけど教室にはいないみたいねー」

「アイツなら屋上にいますよ、オレ、今まで一緒に居たけど……クラスに忘れ物しちゃって」

「え、ほんと?有難う!」

「あ、亜子さん」


じゃあ、と行こうとしたら、水戸くんに呼び止められた。

「ん?」

「オレもすぐ行くんで、良かったら一緒に行きません?」

「いいの?」

「いいの?って……オレが誘ってるのに、いいも悪いもないっしょ」

くはっ、って笑う水戸くんに……一瞬ときめいちゃったじゃないか……!!

「じゃあ、待ってマス」

「はい、お願いしマス」

桜木軍団の中で、唯一モテそうなキャラだもんね、彼は。
ときめいてもおかしくないよ、……多分。


それから水戸くんに花道の過去の面白い話などを聞きながら、屋上までを共にした。
屋上についてからは桜木軍団の他のメンバーを紹介してもらい、お近づきになることができた。

実際にこの目で見てみると、外見的には本当に不良そのもの。
でも、性格は変わらなくて。
話をするのがすごく楽しくて、一緒になって花道をからかってやったりもした。
で、そんな事をしていたら何をしに来たのか忘れてしまい。
結局、花道から賞品うんぬんの話が聞けたのは放課後のことだった。
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