スラムダンク | ナノ

 13

最近、一気に色んな人と仲良くなれて嬉しいんだけど。
先日の仙道くんには参った。
あの人、どこまでが本気なのか……結局わからなかったし。

今日は体育館の休館日。

今までは休館日なんてなかったんだけど、伯父さんがね。
週に一回は休館したって構わないだろうって言ってくれたから。
バスケ部の練習も見たかったし、お言葉に甘えることにした。

それに、こっちの世界では状況が変わったのか、取り壊しの話なんて一切なくなったらしい。
だから、とりあえずは何も心配することがなくなった。


「こんにちはー!」

「あら、亜子じゃない!今日は帰らなくていいの?」

嬉しそうに出迎えてくれたのは、彩ちゃんだった。
先日、彩子ちゃんから彩ちゃんへと呼び名を変更。
リョータがアヤちゃんアヤちゃんうるさいから、移ってしまったっていうのが主な理由。
彦一くんの《仙道さん》と一緒。

「今日は休館日だからいいの!マネージャー業、手伝いに来たよ!」

「休館日か、アンタだって休んでないでしょうに」

「いいんだ、私は体動かすほうが好きだし。疲れたら適当に休むし!」

「あはは、そうね。アンタらしいわ。じゃあ、早速で悪いんだけど、ドリンク作り手伝ってもらえる?」

「おっけー!」

彩ちゃんはタオルの準備、私はドリンク作り、と二手に分かれることにした。


家庭科室から氷を貰って、大きいタンクにスポーツドリンクの粉末を入れる。
味付けは私の好みになっちゃうけど、味覚オンチじゃないから大丈夫だと思う。
それから、体育館近くの水道で水を入れる。
家庭科室でもよかったんだけど、水を入れての持ち運びはちょっと重いしさ。

水を入れようと、水道の蛇口を捻ったその時。

びしゃああああああ!!

「うわあああああああ!!」

蛇口に何かが詰まっていたようで。
思いっきり噴射した水は、見事私をびしょぬれにしてくれた。

誰だよ、高校生にもなってこんなガキくさいイタズラしたの……!
Tシャツに着替えておいてよかったよ、全く。
これが制服だったら、最悪だな。


カシャッ


……ん?

今、何か音が聞こえたような……


辺りをキョロキョロと見回してみたが、人影は見当たらなかった。
気のせい、か。

再び水道の蛇口を捻り、あることに気づいた。
やばい、これ、Tシャツ透けてんじゃん!
思いっきり水を被ったからだな。
着替えてこなきゃ。

「あっ、亜子さん!」

「うおっ!晴子ちゃん!」

誰にも見つかりませんように、と、その場を離れようとしたときに声をかけられたもんだから、ドキッとした。
幸いなことに晴子ちゃんだったからよかったけどね。

「わ、やだ!どうしたんですかその格好!Tシャツ!!」

「あああ、それ以上言わないで晴子ちゃん!あ、そだ!着替えてくるからさ、ちょっとこのタンクお願いできる?」

「わかりました、いいですよ!任せてください!」

快く引き受けてくれた晴子ちゃんを後に、私はそそくさと自分の荷物の置いてある場所へ。
念のために着替えを持ってきておいて良かったよ。


さっさか着替えて、体育館へと戻った。
そして、晴子ちゃんと彩ちゃんの元へ。

「ごめんね、晴子ちゃん!有難う!」

「いいえ、どういたしまして!大丈夫でしたか?」

「あ、うん、全然平気!Tシャツびしょぬれになったくらいで」

「アンタもドジだねえ〜」

カラカラと笑う彩ちゃんに、膨れ面で『私のせいじゃないもん』と反抗したが、『はいはい』と流されてしまった。
ほんとに私のせいじゃないのに!





「よーし、15分休憩!」

ゴリの声が体育館に響き、休憩の時間となった。

「あれ、亜子じゃん。来てたのかよ」

「さっきから来てますよー」

汗を拭きながら近づいてきた寿先輩に、ドリンクを渡す。
それに引き続き、リョータや流川くん、花道にも。
みんな練習に集中してたもんね、私なんて目に入らなくて当然さ。

「……なんつーか、みんなこっち見てんな」

「ああ、亜子が来てからずっとですよ?」

「なに、マジでか、アヤちゃん。すげーな亜子は」

「そうでしょうよ」

「んん?」

会話がほとんどアイコンタクトで成立しているから、私にはさっぱり何の話かわからぬ……!

「でも、本人自覚ないのよねー!」

ねー、と言いつつ、私に向かってニッコリ首を傾げる彩ちゃん。

「なんの自覚?」

「アンタ、モテる自覚ないでしょう」

「はぁ!?」

一体なんでそんな話!?
全く意図が掴めないんだけど!!

「いつもは見学者って女子ばっかりなのよ。でも、今日は男子もちらほらと。これがどういう意味だかわかる?」

「はっは、こいつに言ったってわかるわけねーよ」

「ですよねー!」

「ちょっ、寿先輩、私のこと馬鹿にしてますね?」

「おー、お前は馬鹿だろ」

「ひどっ!!」

話の内容を聞く限り、男子は私を見に来てると言いたいんだろう。
でも、そんなモテてるとか思ってないし!
偶然暇だったとか、ていうかアヤちゃん見に来てる人だっているでしょうよ!

「蜂谷」

「あ、ゴ……赤木先輩!」

話をしている中、ゴリが近づいてきた。
危うくゴリって本人に言ってしまいそうになった。
あせった……!

「………今からゲームをやるんだが。今日は欠席のヤツがいて、人数が足りんのだ。審判をやってくれないか?」


その間が気になるよ。
『ゴ』って聞こえちゃったよね、やっぱり。
そんな赤木先輩に対して、私に拒否権あるわけがないですよね。

「喜んで、やらせていただきます」

「うむ、頼んだ」

ホイッスルを渡され、お辞儀をするとゴリは頷いてコートの中央へ戻っていった。

「休憩終わりだ!ゲームをやるぞ!」

その声にみんなゴリの元へ集まる。
スタメンとそのほかのみんなをごちゃ混ぜにしたチームを作り、それで試合を行う。
いつもだったら私もゲームに入れてもらうんだけど……ここは学校の体育館だし。
他の生徒も見てるし、けじめってやつ、かな?
審判させてもらえるだけでも十分有難いけどね!

ジャンプボールのためにボールを一つ、彩ちゃんから受け取って。
ボールを投げて、試合が始まった。


審判することに夢中だった私は、あの時と同じ音が体育館の外から聞こえてたなんて。
少しも、気づくことはなかった。
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