これから君に恋してもいいですか(神)凸凹シリーズ1


午前中のけだるい授業が終わって、現在は昼休み。

クラスメイトと一緒に学食へ来てみたところ、面白い現場に遭遇してしまった。
オレのバスケ部の後輩である清田信長が、可愛らしい女の子と一緒にいるのである。

ノブの隣りに並ぶその子は、身長が150あるかないかというくらいの小ささ。
一般的に言う、小柄で華奢な女の子。

ジャージの色から、ノブと同じく一年生だという事がわかる。

二人して何をしているんだろうと見物していると、どうやら昼食を買うのに梃子摺っているらしい。

女の子の背が小さすぎるため、食堂のおばちゃん達に気づいてもらえないようだ。

あの子、ノブの彼女なんじゃないのかな。
それだったらノブが二人分買ってきてあげたらいいのに。

オレは自分の分の昼食は当然確保済み。
なので、こうして高みの見物をしているわけで。

なんか初々しいなぁ……と思ったら、ちょっとしたイタズラ心が湧き上がってきた。
滅多にこんなこと考えないんだけどな。

でも、面白そうだからちょっかいかけてみるか。

そう思って、クラスメイトに断りを入れ、座っていた席を立ち上がる。

そして、後ろからばれない様にノブとその女の子に近寄り……。

「きゃあ!!」

「ホラ、これで注文したらいいよ」

「じ、神さん!!何やってんすか!!」

オレはその子をおばちゃん達に見えるように持ち上げた。

当然、周りからの視線はオレ達に集まる。
けどまあ、こんなものは試合の視線に比べたらたいしたことないしね。
それよりも、ノブの面食らった顔……イタズラ成功ってとこかな。

「ちょ、ちょっと!離してよ!!」

「ん、ああ、ごめんね」

女の子が顔を真っ赤にして暴れるので、目的も済んだことだし、素直に降ろしてあげることにした。
いつまでも抱き上げたままっていうのも恥ずかしい話だしな。

「誰よあんた!突然何すんのよ!!」

降ろした途端、叩きつけられた言葉の数々。

……顔に似合わず、凄い言葉遣いだな。

「買うのに梃子摺っていたみたいだったから、お役に立てれば、と思って」

言いながらニコリと微笑むと。


パシーン!


乾いた音が響いた。

「え」

「あ、あわわわわ!!」

オレ達を見ながら慌てているのは信長で。
まさか、叩かれるなんて思ってなかったオレの口の中には、じんわりと血の味が広がる。

「初対面で失礼な人!!もう!あたし教室帰る!!」

「ちょ、ちょっとちょっと!待てよナツ!!」

ぷんすか怒りながら食堂を出て行くその子の後を追おうとしていた信長は、頭を抱えながらこちらに戻ってきた。

「神さん、すんません。でも、神さんも悪いんッスよ」

「ああー……ちょっとやりすぎちゃったかな」

「全くですよ。何であんなことしたんッスか!」

「いやぁ、ノブが可愛い子連れてると思って、ちょっとからかってやろうと思ってさ」

「『子』って……あいつ、三年ッスよ。神さんより年上!」

「え」


年上?

あの小さい子が?

あの華奢な子が?

「だってあのジャージの色……」

「あれ、オレがあいつの制服に水こぼしちゃったから、オレのジャージ貸してんすよ。ちなみに、オレのイトコなんすよ。先日引っ越してきたばっかで、神さんが知らないのも無理ないッス」

ノブの彼女じゃないのか。

三年……年上だったのか……。


年上に対して、オレはあんなことを…………。


思い返してみた自分の行動に、自然と顔が赤くなった。

「叩かれて当然だな」

自重するように呟くと、信長が『フォローいれときますから!』なんて言って、彼女の後を追いかけていった。

そもそも、女の子に頬を叩かれたなんて記憶にない。

しかも、あんな小さくて可愛らしい女の子に……


可愛らしい…………


ちょっと待て、オレの心臓。

一生懸命怒りを露にした彼女の顔を思い浮かべると、ドキドキしているのが自分でもよく解かる。

やばいな、ほんと。

なんだこれ。
これから君に恋してもいいですか(神)凸凹シリーズ1

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