まずは僕に好きって言ってごらんよ(宮城)


おとなしくて、小さくて。
《女の子》っていう代名詞が似合う、そんな子。

そんな、認識だった。

そして



「みっ、宮城くん!!あなたは、わたしを好きになるーーーー!!」


オレの、好きな女の子。



「…………え?」

彼女は、そう叫んだ後、だぁっ、と、走って逃げていってしまった。

これから部活の時間で、体育館に向かおうとしていたところだったんだけど……。
周りには誰も居らず、オレと、彼女と、一対一。

突然目の前に現れたと思ったら、さっきみたいに叫んで、走って逃げた。


一体、何事だぁ?

「オーッス、宮城!なんだよ、やるじゃんおまえ!」

「どわっ!?三井サン!!」

ボーゼンとしていたら、横からひょこっと現れた三井さんに、ガシッと肩を組まれ。

「誰もいないと思ってたのか?あめーよ、オレってばなんてタイミングのいい男なんだろーか!」

「ちょっ、ニヤニヤしてんじゃねぇ!!」

「はっはっは、いいじゃねーか、で?お前、どうすんの?」

「はぁ?なんですか、どうすんのって?」

ウゼェなこの人、絡んでくんなよ!

「何って、今の告白にどう返事すんだよ?」

こ……くはく……?

「今のって、告白だったんすか?」

そう言うと、三井さんは《お前馬鹿だろ》って言いたそうな顔。

「おまえ、馬鹿だろ」

……言われたし。

「あんな顔真っ赤にしちゃってさ、可愛いじゃねーか。あれを愛の告白ととらずにどうしろっつーんだ」

……そうか、オレ、告白されたのか。

今まで女の子に告白したことはあっても、告白されたことなんて……ねえぞ!?
しかも、相手は河合ナツ、オレの好きな子。

え、マジ?

マジで!?

マジかよ……!!


それから、部活に向かったオレは、色んなヤツに《なんだそのニヤケ顔は》とか《気色悪い》だとか言われまくったけど、そんな事を言われたって、ちっとも怒る気が沸いてこなかった。

今のオレは最強なんだぜ?

なんたって、両想いなんだぜ!?

あー、明日どうすっかな!
なんて返事すっかな!

ちきしょー、河合の顔見るのが楽しみすぎるじゃねーか!!!





次の日、世界はオレ中心に回ってるといっても過言ではないくらいにタイミングがよかった。
部活の朝練は無いし、河合は日直。

あいつが日直の時は、いつも早く教室にいることを知ってる。
前に朝練が無かったときに、オレが間違えて来ちまって。
そのとき、河合が日直だったから、偶然知ったんだけど。


心を弾ませながら、教室へ向かった。
そしてドアを開けると、やっぱりいた。

「……あっ」

「……オス」

第一声、どうやって声をかけようかなんて全く決めてなくて。
自然を装ったつもりだったけど、やべぇ、すげぇ緊張してる、オレ。

教室に二人きり。
微妙に、空気がぎこちない。

「「あの」」

お約束のようなこのパターン。
オレと河合の声が同時に出た。

「あっ、ご、ごめんね、先にどうぞ!」

「えっ、あ、いやいや、お前こそ先に!」

「「…………」」

何やってんだ、オレ。
緊張しすぎて、動きまでおかしいぞ。

しばらくして、河合がポツリと口を開いた。

「き、昨日はごめんね」

「えっ、ああ、いや、おう!」

しっかりしろ、オレ!

「あ、あの、昨日の、……その、罰、ゲームで」


…………。



ばつ、げーむ?


「だ、だから、ほんと、その、ごめん!」

顔を真っ赤にして俯く彼女。

罰ゲームってことは、あれは告白でもなんでもなかった、って、ことだよな?
罰ゲーム……そうか、罰ゲームか。


……なんか、オレ……


「馬鹿みてぇ」


そう思ったら、急激にイラッとした感情が沸きあがってきて。
もう、この場にいたくないと思った。

あー……今日はもう、サボるかな。

教室を出ようと、机に置いた鞄を手にした時だった。

がツッっていう音がして、河合がオレの元へ走り寄り、オレのシャツをぎゅう、っと握った。
河合は近くにあった机に膝をぶつけたようだ。
なんでこんなに慌ててんだよ、今更。
弁解なんて聞きたくないんだけど。

「……何?」

今のオレの視線は、多分すっごい冷たい。
いくら好きな子でも、こんな形で馬鹿にされてヘラヘラ笑ってらんないし。

「ば、罰ゲームでも、好きな人に対してやる罰ゲーム、だったの!」

「!」

オレの目、めっちゃかっぴらいてんだけど。

頭が真っ白になって、河合に目をやると、彼女の顔は超真っ赤。

「どういうこと?」

一瞬にして自分の気分に変化があったっていうのがよくわかる。
きっと、今のオレ、ニヤけた顔してる。

「だ、だから、そういうこと……」

「そういうこと、じゃ、わかんないんだけど?」

「……!」

笑いながらそう言うと、河合は潤んだ瞳でオレを見上げた。
……やっべぇ、超可愛すぎ。

でも、一瞬でもオレを傷つけた仕返しだからな、これは。
ちゃんと言うまで許してやらんぞ。

「……いじわる」

「え、何?きこえなーい」

「あー、もう、いじわる!!宮城くんが好きだって言ってんのに!!」

「うおっ!!」

ヤケになったのか、河合はオレの耳元でそう叫んだ。

そして、とうとう感極まって泣き出してしまった彼女。

まだ誰も登校してこないのを確認し、オレは河合をぎゅっと抱きしめた。

「オレも、河合が好きだよ」

宮城リョータ、オレに人生初の彼女が出来ました。






「見たぞ、宮城!ヒュー!!ラブラブー!!」

「だああああ、うっせーなアンタは!!なんでいるんだこんな朝早く!!」
まずは僕に好きって言ってごらんよ(宮城)

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