H×H | ナノ


▼ 5:これからの新しい日々

「…きろ……ナオ!!いい加減起きるね!」
「わあ!!」

目覚めたら、目の前あったのはフェイタンの端正なお顔でした。

「ふぇふぇふぇふぇ、フェイタン!?」
「ふぇふぇふぇふぇ、じゃないよ。オマエ本当に女か?ヨダレ凄かたよ」

ヨダレー!?
がびーん…寝顔をフェイタンに見られたどころか、ヨダレまで…!
しかもフェイタン『ふぇふぇふぇふぇ』って真似した!可愛い!

「…って、そうじゃない!なんでフェイタンがここにいるの!?」

そう、ここはあたしの部屋。
昨日は盛り上がっている皆を放置し、学校に遅刻しないために早く寝たのだ。

「さき翔に会て、ナオを起こしてくれと頼まれたね」

頼まれたね、って。
…ああ、そうか。
フェイタンは昨日のクロロの『ナオと翔の言う事に従うこと』という言葉を忠実に守っているのか。
…そこは別にいいんじゃないかな、守らなくても。

「…それはそれは有難う。でもなぁ…寝顔を見られたなんて…ちょっとショック…」
「何がショクか。寝顔なんてどうせいずれは全員に見られるよ」
「え!?何でそうなるの!?」
「オマエ馬鹿ね。扉はこの部屋にしかない。という事はこの扉を使いたいときにはオマエが起きてようが寝てようが、この部屋に入ることになるよ」

そうだった。
このクローゼットしか繋がってないってことは、いつでも皆がこれを使うってことだよね。

ノー!
神様何故あたしの部屋に異世界の扉を繋げなすった…!!
こうなったらあたしの部屋、他のところに変えようかな。

……いや、まて。

昨日、皆に好きな部屋使っていいよって言ってしまったものだから、今は空き部屋が無くなってしまったんだった。
かといって大広間で寝るわけにもいかないし。
それこそみんなに寝顔を見られないはずが無いし。

「諦めるしかないのか…!」
「ハハ、そんなの気にすることじゃないね」
「気にするって!」
「別にワタシは気にしないよ、それより起きなくていいか?」
「え!?わーーーーーー!!やばい、遅刻だ!!!ごめんフェイタン、ありがと!!でも着替えるから部屋出てって!じゃ!!」
「何するか」
「おわっ!」

あれ、おっかしいな。
フェイタンの事をドン、と押して、扉をバタンと閉めて着替える予定だったんだけど。
するりと避けられてしまったよー?
ご尤もな話ですけどね。
旅団の一員であるフェイタンがあたしの攻撃を察知するのなんて朝飯前だよね。

「あの、着替えるから出てってください。クロロの命令遂行、お願いします」
「……チッ」

クロロの命令、という言葉は良く効くらしい。
無言でしかめっ面、しかも舌打ちをしながらもフェイタンはあたしの部屋から出てってくれた。
扉越しにフェイタンにお礼を言い、すぐさま着替えた。
きっとフェイタン怒ってるだろうな、と思いつつもそんな事を考えている余裕はないのだ。

くそぅ、翔のヤツ!
起こすんなら自分で起こしに来てくれ!
なんて、偉そうなこと言える立場じゃないけどさ。
でも、寝起きにフェイタンなんて心臓に悪いって!



部屋から出て大急ぎで階段を駆け下りる。
いつもの事なので、身のこなしは軽いぜ!
階段を降りた先でフェイタンに会ったので、一応身振り手振りで謝り、通り過ぎた。
呆れたような表情をしていたけど問題ない問題ない!

ご飯は……チラリと時計を見ると、あと5分で家を出なければならない。
うん、食べてる時間ないな!
キッチンにあったパンを掴み、ビニールに入れて鞄へと突っ込む。

「姉ちゃん、また寝坊かよー。ったく、進級してもその癖は直らないねぇ。でも、これからは団員の誰かに起こしてもらえるな!よかったな!」
「よかったな、じゃないよ!!寝起きに旅団、なんて心臓止まるかとおもったわ!!しかもフェイタン……わーーー!!」

近くにあったクッションを翔に向って放り投げ、文句をぶつけていたのだが。
起こしてくれたときのフェイタンの顔、思い出して叫んじゃった。
だって、かなり近かった、よ?

もうすこしでフェイタンの髪があたしに触れそうだったしね。
うん、あれは結構近かった。
そんで、そんな近くでフェイタンの顔を見ていた、更にあたしの顔を見られた、と思うと赤面せずにはいられないんだよぉぉぉ!

「な、なんだよ姉ちゃん!壊れるのはまだ早いって!」
「うっさい!元はといえばアンタが…!!ああもう、いい!時間ないから行くよ!!」
「あっ、折角待っててやったのになんだそれ!!ちょっ、姉ちゃん!!待てって!!」

あれよあれよという間にあたし達は家を飛び出し、学校へと向った。





「そういえば、フェイタン以外の団員は見なかったけれど…みんなあっちの世界に帰ったのかな?」
「いや、結構夜遅くまで盛り上がってたから、やっぱりウチの好きな部屋でまだ寝ているっぽいよ。クロロあたりは起きて読書してそうだけどねー」
「あ、言えてる。あれじゃあ書斎中の本、読み尽くしそうだよね。それにしてもさ、クロロはいいとして。他の人たちが起きたらこの世界にいても暇なんじゃ…」
「え、何で?外に遊びにでも…って、そっか。オレ達いないと外に出られないんだっけ。あー…ウボォーあたりが怒りそうだな、昨日『明日はオレも外に連れてけよ!!』って散々言ってたから」
「なんの、寝ているほうが悪い!それにクロロも言ってたじゃん。あたし達に従うようにってさ!」
「寝ている方がって…それ、寝坊した姉ちゃんには言われたくないんじゃ…」
「うっさい!じゃ、あたしこっちの校舎だから、また放課後ね」
「ん、じゃーな!」

疑問に思った点などの話をしながらも学校に到着したので、翔と別れた。
3年と2年は別校舎だから、特別なことが無い限り放課後まで翔と会うことはない。

昨日休んでしまったので学年主任の元に行き、何組かを聞いてから自分のクラスへと入った。




「あー、ナオ!おはよー!!」

クラスに入って直ぐにあたしに声をかけてきたのは、中学の時からずっと同じクラスの麻子。

「麻子!おはよー!また同じクラス?すごいねうちらって!」
「うん、ここまで来ると腐れ縁?って感じ!ってか、昨日なんで休んだの?」

昨日の欠席理由を聞かれ、一瞬体が強張った。
だって、本当の理由なんか言っても信じてもらえるわけがないし。
まあ、言うつもりもないけれど。
頭おかしくなったって思われるの嫌だしね。
ここは適当に嘘をついておくべし!

「いやー、なんか突然気分が悪くなっちゃってさ、始業式どころじゃなかったんだよねぇ」
「え、マジ?今は大丈夫なの?」
「うん、大丈夫!ひとまず落ち着いた…と思うし!」

ごめんよ、麻子。
でも、突然気分が悪くなったのは本当。
だっていきなり旅団に出くわしたから。
だから、始業式どころでもないし。
ひとまず落ち着いたっていうのも本当。
一応自己紹介も終わって、みんなと話もできたし。

「ふぅん、ま、無理はしないでよね?」
「うん、大丈夫!ありがとねー、って、先生来ちゃった。じゃあ、また休み時間に!」

HRの時間になり、担任が入ってきたのであたしは自分の席を麻子に教えてもらって座った。
とりあえずさっき翔とも話したとおり、みんなはあたし達に触れてないとあの家を出ることは出来ないから、外でヘンな問題は起こらないだろう。
でも、もしかしたら家の中がめちゃくちゃになってたり、とか…しないよね。
もう子供じゃないしね、大丈夫だよね。

……………とても、心配だ。

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