H×H | ナノ


▼ 4:有り得ないほどの大所帯

「おっ、マジうめーじゃねーか!」
「うん、本当だ!すっごくオイシイ!」
「こういうのを家庭的な味っていうのかしらね」
「ナオは本当に料理が上手いんだな」

さっきから本当に、だの、マジで、だの聞こえてくるのが気になるが、まあそれは良しとして。

…なんでこんなに人数増えてるの?

いち、にい、さん……じゅうさん…あたしと翔を合わせたら15人だよ!
とんでもない大家族の人数だな!

なんて言ってる場合でもなくて。
現在旅団メンバー勢ぞろい。ヒソカも含めて。
出かける前に着替えた5人は普通に見えるけれど、他の人たちは…普通の人もいれば、微妙な人もいるし、この場にいるのが相当おかしいよ?って人もいる。
相当おかしいのは言わずもがなヒソカの服装なんだが。

「姉ちゃん…やっぱりオレ、ちょっと逃げたくなってきた」
「そんな事言うんじゃない!追いかけて殺されるかもしれないでしょ!」

翔と小声でぼそぼそ話していると、いつの間にか視線が集まっていたようだ。
本当に凄い光景だ。
あの漫画ならではの幻影旅団が目の前にいるのだから。

なんでこんなに人数が増えたか、というと。



買い物から帰って来た時のこと――――――。








ガチャ

ガチッ


ガチャガチャ


「あれ、おかしいな?」
「姉ちゃん、どしたー?」
「鍵をかけてきたはずだと思ったんだけどね…なんか開いてたみたいで…はっ、まさか泥棒!?」

そうなのだ。
行くときにはしっかりと鍵をかけてきたと思ったのだが、帰ってきて鍵穴に差し込んで回してみても逆に鍵は閉まってしまった。
とりあえず再び開けると、クロロがスッと前に出て。

「オレが様子を見てこよう」

なんて、どっかの誰かさんと違って頼もしいこと言ってくれちゃったもんだから、お願いして家の中に入ってもらった。
家の中に入る為にはあたし達に触れてなくても別に平気みたい。
ほんとどんな原理なんだか。
いやもう原理もへったくれもあったもんじゃないか。

少し経ってクロロが戻ってくると、あたし達に軽く笑みを向け。

「安心しろ、他の旅団メンバーがこっちにやって来ていたみたいだ」

そう言った。

「お、マジで?みんなあの扉に気付いたんか!」
「あんなデカデカとあて気付かない馬鹿いないね」
「ははっ、フェイタンの言うとおりかもね!」
「で、鍵を開けたはいいが、外には出られなかったってーことだな」

いやいや。
安心できないって。
寧ろ逆に心配だって。

…ほんとに殺されやしないだろうか心配になるんだって。
シャルの言ってたことが洒落にならないよ。

ノブナガはやっぱり微妙に頭がいいみたいで、鍵が開いていた理由を言い当てた。
確かに、その理由が一番妥当だろうね。

ってか、どうすんのよ。
突然攻撃されたりとかしない!?
混乱しているあたしの肩に、ぽん、と手が乗って。

「さっき言ったこと気にしてるの?ホントに大丈夫だって、きっと他のメンバーにも気に入られるよ」

シャルが笑顔で言ってくれたけど、心配事を言った張本人に言われても…ねぇ。
だって何がどうしてあたしたち姉弟が気に入られてるのかが全く以って不明だよ。
認識としては単なるお世話になる人ってだけじゃないんかい。

「姉ちゃん、シャルがそう言うんだから大丈夫じゃね?オレ他の団員も見てみたいし、先に中入ってるよ!」

そう言って、翔はアッサリと靴を脱ぎ捨てて中に走っていった。
ああああああ、この裏切り者ぉぉぉ!!つーか、普段ヘタレのくせになんでこんな時だけ…!!


「…人の気苦労も知らないで…・腹をくくるしかない、のか」

このまま玄関にいても仕方ないので、とりあえずあたしも中に入ることにした。
で、どうせなら食事の時に自己紹介でも、という話になり、今に至る。




良かったよ、大量に材料買ってきて。
7人分しかなかったら絶対足りなかったね!
それに、あの体の大きいウボォーとフランクリンもいるしさ。
お菓子も大量に買い込んでよかった。
足りない分は…適当に冷蔵庫に入っているもので補えばいいや。
ウボォーなんか既にハンバーグ、食べ終わってるし。
早すぎる。


「さて、ナオと翔の紹介を兼ねて、今後の話をしよう」

食べながらクロロが言うと、今度はクロロにみんなの視線が集まった。

「知っての通り、ここはオレ達の世界とは異なる世界だ。二つの世界を繋ぐのはナオの部屋にあるクローゼットのみ。そして、これもさっき体験しただろうから解ると思うが、ナオか翔に触れていなければオレ達はこの家から外に出ることもできない。更にここでは念も使えない。遵って、こちら側ではナオと翔の言う事に従うこと。我々はこの世界でのルールを知らない。だからナオ達の言う事を聞けば間違いを犯すこともないだろう。外で何か問題を起こしてナオ達がこの場所からいなくなり、ここから外に出れなくなるのは嫌だろう?」

その問いかけに皆頷く。
みんなやっぱりこの世界の色んなところを見に行きたいんだね。
しかしクロロの話から考えると、あたしと翔って便利屋さんみたいなものかしら。
まあ、殺されないで済むっていうのは有難い話だけどね。

うーん、なんか…どうしたら殺されなくて済むか、とかしか考えてないな、あたし。

この突然の出来事を完全に受け入れているか、って言われたらまだ半信半疑だけど。
もしかしたらこれって夢なんじゃないの?って思ったりもしたけれど。
繋いだ手の暖かさや、この現実感を感じてしまったら…到底夢では済まされないしな。
そしたらもう、どうやったら殺されなくて済むかな、じゃなくて、どうやったら仲良くなれるかな、を考えた方が早そうだ。
幸いあたしの作ったハンバーグは気に入ってもらえたみたいだし。

きっと、大丈夫だよね。
きっと、仲良くなれるよね!
……多分!


それからは気の済むまで質問の嵐。
当然この世界の知識は何もないのだから、聞きたいことはたくさんあるだろう。
食器を片付けて洗ったりしている間も、それが終わってからのくつろぎタイムも、全てが質疑応答の時間。
片付けはパクとマチ、シズクの女性陣が手伝ってくれたので早くおわった。
パクには『今度、今日のハンバーグの作り方を教えて欲しい』などと言われて嬉しかった。

マチとシズクが手伝ってくれたのはちょっと意外だったかも。
でも、女の子達と仲良くなれるのはもの凄い嬉しい。
パクはあたしのお姉ちゃんみたい。
マチは同学年くらいかな…そしてシズクは妹?

あ、旅団全員を家族に当てはめていったら面白いかも!
ほとんどが兄弟になりそうだけど。

フランクリンはお父さんになって欲しい…なんて思ってても言えないけど。







そして、時計は既に夜の10時を指していた。
あれから買い物に出かける気力はなく、夕飯はピザを取った。
それからもずーーーっと質問攻めにあっていたのである。

「じゃあ、そろそろ終わりにしてもいいかな?」
「えー、もう終わり?」
「うん、ごめんねシズク。明日はちゃんと学校に行かなきゃいけないからさ、もうお風呂入って寝なきゃ」
「そういや始業式サボっちゃったしなー、明日こそはちゃんと行かなきゃな!」

そう言って別れを促すと、とんでもない事を言ってきた奴がいた。

「おや◆このままここに泊まっちゃダメなのかい?」

……ええ?
何て言いましたかこの人。
ここに、泊まるって!?

「ああ、それはいいな。ヒソカの言うとおり今日はここで寝ることにするか」

するか。じゃないよ。
クロロってばまた勝手に決定事項作り上げて…!
今からでも遅くはない、あたし達に拒否権をくれ。

「ちょっと、ヒソカも団長も。ナオが困っているわよ?」

あああ、さすがパク!
尊敬するよ、姐御!!

「…なあ、いいだろ?」
「っ!?」

ぎゃああああああああああああああ!!
ビックリもビックリ!!超ビックリ!
クロロ、近寄ってきたかと思ったらあたしの耳元で囁いたよ!
しかも、それって何かかなり卑猥な響きだよ!!

「わっ、わっ、わぁかった!!」
「姉ちゃん…」

裏返った返事しかできなかったあたしに、翔が哀れみの目を向けていたが、それに答える気力もなく。
喜んでいる他の団員達を後手に、無言で風呂の準備をしたのであった。

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