▼ 10:旅団×遊園地×黄金のティアラ
さて、お次は三階。
“なぞなぞ第三問レベル3”
「焚き火だ、焚き火だ落ち葉だきー♪あーたろーか?あたろうよー♪さて、焚き火の横にいる動物は?」
「何この歌?」
「あ、こっちの世界の童謡。やっぱハンター世界にはないよね」
「うん、こんなの聞いたことないね。でも、答えは解るよ。火の横にいるから、ひよこ。合ってるよね?」
「さすがシャル!…って言うほど難しい問題でもないけどね。じゃあ入力して四階にいこ!」
“なぞなぞ第四問レベル4”
『ABCに正の整数を入れて等式を成立させて下さい。Aの3乗−Bの3乗−Cの3乗×2=230』
「わ!何これ!?超急激にレベルアップしたよ!?」
「はは、ホントだ。しかもこれなぞなぞって簡単に言える問題じゃないよね。ナオは解けそう?」
「いける!って言えたらいいけど…こんなの電卓あったって無理」
「うーん、そっか。じゃあオレにまかせて」
「え、シャル解るの!?」
「まあね。コレを使うことになるけど」
言いながら皆に配布したトランシーバーをとんとん、と叩いて。
ぱかっと開いて何かを打ち込んでいるようだったので、その様子を覗き込んだ。
どうやら電卓機能を使っているようだ。
「へぇー…これ、みんなのトランシーバーにもついてるの?」
「いや、皆のには通話機能のみ。オレは自分で作ったし、色んな機能あった方が便利だしね。それにオレ以外の団員に色々機能付けたって使わないよきっと」
「ああ…確かにそうかもね。使いそうなのはクロロくらいかな」
「そういう事。……よし、できた!」
シャルは計算が終わったばかりの携帯とタッチパネルを交互に見ながら、ゆっくりと答えを打ち込んだ。
「27293の3乗−14101の3乗−20617の3乗×2=230、と」
『正解。最後の扉が開きます』
音声が発され、最後のエレベーターが開く。
「それにしてもシャルってやっぱ天才!電卓使ったってこんなの解けないよ」
「そう?まあ旅団の頭脳だからね、オレは。何でも解いてみせるさ」
そう言い切ったシャルの横顔が、一瞬もの凄くカッコよく見えて。
思わずドキッとした。
タダでさえカッコイイんだから、そんな名探偵みたいな台詞を言われたら余計にカッコよく見えるじゃないか。
あんまり心臓に負担をかけさせないでくれ。
「さー、いよいよ最後だね。きっとオレ達が一番だよ」
「うん、そうだといいな。さっきみたいな問題が一問は必ず混ざっているとしたら、みんなきっと解くのに必死そうだし。シャルのおかげ!」
そして五階へ到着。
エレベーターを降りて一歩踏み出すと、さすがは最上階。
さっきは一部屋が小さかったのだが、今度はそれが10倍くらいの広さで。
そして、問題の機械が10個ある。
万が一同時にこの部屋についたら、早く回答した者勝ちって事だ。
「よし、思った通りオレ達が一番!じゃあナオ。機械にカードを差し込んで…」
言葉通りに差し込もうとした瞬間、あたし達とは真向かいのエレベーターの扉が開いた。
「やはり早かったな」
聞こえた声はクロロのものだった。
「団長にヒソカ…あちゃー、もう来たんだ」
「結構簡単な問題ばかりだったからねぇ」
「やばっ、早くしないと負けちゃう!シャル、カード入れたよ!」
「オレ達も負けられないな。ヒソカ、カードを」
「はいはい◆」
負けられないな、と言うその言葉に余裕が含まれている気がするのは気のせいじゃないはず。
クロロはこの状況すら楽しんでいそうだ。
こっちは焦ってるというのに!
“なぞなぞ第五問レベル5”
「なになに、肺、心臓、すい臓、肝臓。ガソリンを分解する能力のあるものはいくつある?」
どうやら最終問題は全扉共通みたいで、反対側のクロロとヒソカからも同じような話し声が聞こえる。
「ガソリンを分解する能力?」
「ええっ、そんなの聞いたことないよ…!」
「だ、そうだ。わかるかヒソカ?」
「うーん…さすがに最終問題…難しいねぇ◆」
よし、向こうもわからない!
今のうちに考えなきゃ!!
「ガソリンの分解……まず心臓はありえないね」
「肺もないっしょ」
「となると、残されるはすい臓、肝臓」
「この二つっていう可能性もあるし、どちらかの可能性もあるな…答えは一つか二つ……迷うなぁ…」
真剣に考える中、ヘンなギャグを思いついてしまった。
今言ったらシャル、怒るかな?
…怒られてもいいや、言ってしまえ。
「そんなの内臓(ないぞう)!なーんて「それだ!!」
………What?
突然叫ぶシャルに、あたしは呆然とし。
そしてもの凄い勢いでタッチパネルを打ち込むシャルをぽかんと見ていた。
打ち込みが完了した瞬間、ファンファーレのような音がフロアに流れる。
『おめでとう御座います!正解です!!黄金のティアラは5の扉のあなた方の物!!どうぞ、お受け取りください』
突然上から紙吹雪が降ってきて、その中から台座に乗った黄金のティアラがゆっくりと降りてきた。
それをシャルが手に取る。
「よしっ、ティアラゲットー!」
「ふう、打つスピードが遅かったか」
「うーん、残念だったねぇ◆」
「え?何?何が起こったの?」
喜ぶシャルに、少し悔しそうなクロロとヒソカ。
全く状況を飲み込めていないのはあたし一人。
「だから正解だって。オレ達が一番」
「え?」
すると、クロロとヒソカが反対側から回り込んできて。
「オレ達もナオの洒落を聞いてな。すぐピンときたんだが、シャルには及ばなかったようだ」
「あれ、もしかして自分で答え言ったの気付いてないのかい◆」
「答え?あたしが?」
「そうだよ、さっきないぞうって言ったじゃないか。よく考えてよナオ。肺、心臓、すい臓、肝臓。これらをまとめてなんて言う?」
…ふむ。
くっだらないギャグのつもりだったのに、これが答えだったなんて……、恥ずかしい。
恥ずかしすぎる。
同時に間抜けすぎる…!
っていうか最終問題がこんなギャグな答だとは思わないじゃん、普通…。
「内臓…なるほどね、いくつある?とはあったけど、ないっていう答えもアリだもんね。答えは内臓(ないぞー)ってか」
「そう言うこと。じゃ、これ。ハイ」
そう言って、シャルは先程上から出てきた黄金のティアラをあたしの頭に乗せた。
ずっと機械の中にあったのでひんやりして気持ちいい。
「え、でも」
「最後の問題解いたのはナオだからね。ナオが持つのが当たり前でしょ?」
どうしよう、とクロロとヒソカに助けを求めようとすると、二人ともニッコリ笑って頷いた。
「似合うよ、お姫様◆」
「ああ、良く似合ってる」
「オレもそう思う。可愛いよ、ナオ」
三人とも、なんつー恥ずかしい事をさらっと言うのよ!
顔色ひとつ変えないで言う台詞じゃないよ!
「いやいややめてよ、可愛いとか言われるの慣れてないんだよ!こっちの世界ではそんな事簡単に言う人いないもん!」
「え、そんな簡単に言うってほど可愛いなんて言葉使わないよ?」
「同感だな。本当に思った事しか口にしない主義だ」
「もちろん、ボクもだけど。本当に可愛いと思うからそう言うんじゃないか。やだなぁ、疑っちゃ」
「まっ、またそんな事言って!恥ずかしいからやめてってば!!」
「ナオが認めるまでやめないよ」
「ここは引けないな」
「…くっくく◆」
引く引かないの問題じゃないと思うんだけど。
これはからかわれてるのかそうじゃないのか。
……さっぱりわからない。
ハンター世界の住人は感覚が違うのか、そうか。
勝手に自分の中でそうと思い込んでおかなきゃ心臓がいくつあっても足りない気がする。
こんなやりとりは、みんなが最上階に到着するまで続いた。
そしてウボォーとフィンがまだ最上階に到着しないまま30分が経ってしまったので、外に出なきゃならなくなって。
出口に到着し、係員に声をかけられる。
「皆様、お疲れ様でした〜!黄金のティアラはこちらで回収いたしますので、この箱の中にお納めくださいね!」
「え、それ返しちゃうの?折角ナオに似合ってたのに」
「ああ、やっぱそうだよね。こんな立派なもの配布してたらキリないし。その言葉だけで嬉しいよ、ありがとシズク!」
後ろからなんでシズクに対しては素直にお礼にいえるんだ、的なクロロとシャルとヒソカの視線を感じたけれど、女の子は別です。
シズクだったらお世辞を言うってタイプじゃないのわかるし、素直に喜べるもん。
そして頭からティアラを外し、箱の中に入れて外に出た。
「それにしても勿体ないね。折角もらったと思ったのにな」
「でも、あたし黄金よりどっちかっていうとシルバーのティアラの方がいいし!マチも欲しかったの?」
「違う。あたしはあんなの似合わないよ。そうじゃなくて、シズクも言ってたけどナオに似合ってたって事さ」
するとパクも微笑んでそうね、って言ってくれて。
あー、ほんっと女の子って和む。
二人ともあたしなんかより似合うよ!って言ってあげたかったけれど、そんな事言うと今度はマチに全力で否定されそうなのでやめておいた。
でもきっと、こっちをチラチラと気にしている翔は、マチにそう言ってやりたいに違いない。
これも、あたしの胸中に納めておこう。
今は、ね。
「「おーい!!」」
叫び声の方に皆で視線を向けると、そこにはウボォーとフィンが。
二人は30分経っても出てくることはできず、リタイア。
2階で詰まっていたそうな。
さすが、全力で賭けを否定しただけのことはある。
そしてこの次は何処へ行くかという話になり。
「いい加減メシ食おうぜ、メシ!」
ウボォーの提案に、満場一致でお昼ご飯を食べることになった。
そろそろお腹すいたし、丁度いいよね。
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