■ 4:デリートキーがないんだもの

清田が真砂先輩の腕を引っ張って、どっか行っちゃった。

あいつ、何してんの?

神先輩を目の前にして、その彼女を引っ張ってっちゃうなんて、何考えてんの?


そんで、置いてかれたあたしは、どうしたらいいの??

「はぁ……ノブのヤツ、全く……」

あたしの横で、ため息をつく神先輩。
やばい、ちょっとキレ気味……?

「あ、あの、すみません!神先輩!清田が余計な事を……」

「ん?なんで沼田さんが謝るの?……もしかして、二人で何か企んでたりする?」

…………ヒィ!!

ちょ、ちょっと!神先輩、顔は笑ってるけど目が笑ってないよ!?
怖いんですけど……!!

「い、いや、その、えっとー」

「沼田さん、吐くなら今のうちだよ?」

吐け、ですとー!!

おおおおお恐ろしや……!!
清田のせいなのに……!!

あたし、清田の作戦に返事も何もしなかったのに……!

「すみませんすみません、洗いざらい吐かせていただきます!!じ、実は、お二人にヤキモチを妬かせようと!!」

「……ははっ!馬鹿正直!」

馬鹿っていわれたーーーーーーー

神先輩、もっと優しい人だと思ってたのに!!
黒い、なんか黒いよ!!
真砂先輩が最近黒いところがあるのは、神先輩のせいだったのね!?

「っていうか、実際ヤキモチ妬くハメになったの、沼田さんの方じゃないの?」

「……と、言いますと?」

「沼田さん、信長のこと好きでしょ」

「はあああああああ!?何言ってんですか!何言ってんですか、神先輩!!」

「ぶっ……!!ノブと反応一緒……!!」

「え!?今、なんて言いました!?」

「いやいや、なんでもないって。ノブの事好きなんて、見てたらわかるよ。沼田さん、わかりやすいもん」

爆笑している神先輩が呟いた言葉が聞こえなくて。
聞き返したところ、とんでもない爆弾発言を受け止めてしまった。

『沼田さん、わかりやすいもん』

その言葉に、あたしの頭は真っ白、同時に顔が真っ赤になった。

「……やっぱりね。今も、顔に出てるよ」

「ああああたし、そんなにわかりやすいですかね!?」

「うん」

まじでか……!!

え、っていうことは、周りから見たらバレバレってことで
もしかして、清田もあたしの気持ちに気づいてたらどうしよう……!!

あたしは思わず神先輩に詰め寄った。

「も、もしかして本人、気づいてるっぽいですか?」

「いや〜、あいつは鈍感だからね。気づいてないよ」

「そ、そうですか……」

良かった、とため息をつくと。

「ため息をつきたいのはこっちの方だけどね。折角と楽しく遊べると思ったのに……」

ひ、ひぃ……!

その絶対零度の笑みはやめてくださいませんか……!!

「す、すみません!!すぐに清田を連れ戻してきます!!」

「うん、そうだね。じゃあ行こうか」

「は、はい!!」

神先輩の印象が一気に変わった。

優しいけど、怒らせると怖い人。


それからすぐに合流したあたし達は、二度と二人を引き離そうなんて考えることはなく。
何に乗るにも清田とあたし、真砂先輩と神先輩の組み合わせで。

二人を怒らせちゃいけない、なんて思ってたら、折角のテーマパークも緊張がほぐれることはなかった。


ああ、もう、このメンバーでテーマパークなんて、来るもんじゃない。
清田の話に耳を貸すんじゃなかった……!!





帰ってきてから、お土産を渡す為に健兄の部屋のドアをノックした。

「おー、入っていいぞ」

「ん、健兄、これお土産」

「サンキュー、で、どうだった?少しは進展あったのか?」

健兄、妹の色恋沙汰に手ぇ出す気なんて、さらさらないね〜なんて言ってたくせに。
こういう事は聞きたがるんだから……!

とりあえず、何の進展もなかったことと、ヤキモチ作戦のことを話したら。

「ぶはははは!!馬鹿だ!お前ら、馬鹿!馬鹿すぎる!!」

……大爆笑だよ、どうなのこれ。
少しくらい同情してくれてもさ。

「だから、先輩カップルを見て、惨めになんじゃねーのかって言ったんだ。惨め通り越して哀れだな」

「〜〜〜うるさいなっ、もう、クッキー返せ!!」

「おっと!やだね、これはオレが貰ったから、もうオレのもんだ」

渡したお土産のクッキーに手を伸ばすと、あっさりと避けられてしまった。
瞬発力で健兄に叶うわけもなく、結局お土産を取り返すことはできなかった。

「で、話は終わったんだろ?さ、オレは忙しいんだ。帰った帰った!」

しっしっと、追い払うような手つきをされて。
その瞬間、健兄の顔が曇ったような気がした。

「……健兄、なんかあったの?」

そう問いかけると、いつもの笑顔に戻って。

「別に?何もねぇよ。」

「ほんとに?」

「バッカ、嘘ついてどーすんだよ。早く出て行かねーと、清田にお前のことバラし「わああああああ!!!じゃあね!!!さいなら!!」

慌てて部屋を飛び出すと、健兄の爆笑の声が聞こえた。
もう、馬鹿にしやがって。

でも、さっき曇って見えた表情は気のせいだったみたいだ。
心配ごとがないなら良かった、と、安心して自分の部屋へと戻った。

……って、心配ごとがあるのはあたしのほうでしょーが!
人の心配する前に、自分の心配しろってね?!

折角清田と一緒に遊びに行ったのに、何にも出来なかった自分を呪ってやりたい。
やっぱり、真砂先輩と神先輩の仲の良さを見せ付けられちゃったわけだし。

健兄の言うとおり、あたし、惨めだ。

自分の部屋で悶々としているあたしは、今日一日の行動を削除したい衝動に駆られるのだった。

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