■ 3:振り回してるようで振り回されてる

ダブルデート当日。

果たして、これはダブルデートと呼べるのかどうかが謎だ。
でも、男女二人ずつ。
そして一方は正真正銘のカップル。

……おう、やっぱりこれはダブルデートだぜ。


いつも以上に気合の入れた服で、待ち合わせ場所に向かう。
当然、寝坊は無し。

緊張で寝れねーかも、なんて思ってたけど、気づいたらいつのまにか眠っていたらしい。
気づいたときには目覚ましが鳴っていた。

やべー!!と飛び起きて、慌てて支度をするも、抜かりはねぇ!……はず、だ。


待ち合わせ場所が見えてくると、同時に三人の人影が見えた。

マジかよ、オレが最後かよ!!

「あっ、来た来た!遅いよ清田ー!」

「ええ!?まだ待ち合わせの5分前じゃねーか!?」

「オレら、みんな10分前には着いてたよ」

10分前行動ってどんなだよ、みんなどんだけ真面目なんだよ。

このメンバーじゃなかったら、遅れて来る気満々だぜ、オレは!

「あはは、気にしなくていいよ、清田くん。みんな揃ったことだし、行こ?」

「おお、さすが古賀さん。誰かさんと違って優しーッスね!」

「誰かって誰のことかな清田くん」

「さあー、誰かなー?オレは知らねーなー?」

「この〜〜〜〜ッ!」

「はい、ストップ!今日は楽しく遊ぶんでしょ?喧嘩しない」

「すっ、すみません神先輩!」

いつものノリで、喧嘩が始まりそうになったオレ達を、神さんが止めた。

……っていうか、神さんの言う事なら素直に聞くくせに、なんでオレにだけ反発すんだよコイツは。

憎まれ口叩かれんのも慣れたし、そりゃあ……楽しいけど。
でも、たまには素直になったっていーんじゃねーのか?

そう思ったら、神さんがうらやましく思えた。
神さんになら、コイツは素直になるんだな、って思ったら。
悔しいって思えた。

……素直になれないのはオレも一緒だけどな。

難しいんだよ、恋愛っつーのは!

ちくしょう。








それから、4人で他愛の無い話をしながら、目的地のテーマパークへと向かって。
そんで、チケットを購入し、中へ入った。

神さんはサラリと古賀さんの分も払ってたな。
ほんとちくしょう、かっこよすぎるんだよあの人!
あああ、ほら、沼田がうらやましそうに見てんじゃねーか!

ん?……うらやましそうに、見てる?

自分で言った言葉にハッとし、もう一度、頭の中で繰り返してみた。

なんでそんな顔で見てんだよ。
もしかして、神さんのこと見てんのか?
憧れって言ってたのは、本当は好きっていう気持ちを隠してたんじゃねーのか?

神さんには古賀さんがいるのに?

馬鹿だろ、コイツ。
報われない恋ってわかってんだろ?

……いやいや、待て待て。
まだそうと決まったわけじゃねえ。
これは、ちょっと探りを入れる必要がありそうだな。

とある考えが頭に浮かんだオレは、沼田に近寄り、耳打ちをした。

「なあ、お前、神さんに憧れてるっつったな?」

「え、うん、言ったよ」

「なら、少しの間、神さんと二人きりにしてやんよ」

「え?!」

「ホラ、神さんと古賀さん、からかおうってお前も言ってただろ?ヤキモチ妬かせてみたくねー?」

「あ、妬いてるところは見たいなーなんて思ったけど……でも、「なら決まりだな!」

沼田はまだ何かを言おうとした途中だったが、オレは話をぶったぎってやった。
ヤキモチを妬かせてみたいなんて、そんなの真っ赤な嘘。

ただ、オレが確かめたいだけ。
なのに、利用してすんません、神さん、古賀さん。

「古賀さん、ちょっとこれ乗りに行きません!?」

「え?清田くん……って、ちょ!ちょっと!」

「ノブ!?何やってんだよお前!」

「すんません、神さん!ちょっと古賀さん借りて行きまーーーす!!」

古賀さんの腕をぐいっと引っ張って、無理やりあの場から離れ、神さんと沼田を二人で置き去りにしてきた。
沼田の顔は思いっきり呆けた顔になってたけど、内心は嬉しいに違いねぇ。


「……あーあ、オレ、何やってんだろ」

「……ほんとにねぇ」

「うわっ!?古賀さん!!」

「自分で連れてきたくせに、私の存在を忘れてたわけ?ほんっとにもう、清田くんって自己中心的っていうかなんていうか……」

古賀さんが、呆れた表情でオレを見ながらそう言った。
なんつーか、こう……神さんと付き合い始めてから、古賀さんの性格が少々黒くなった……ような、気がしないでもない。

「変な行動とって、すんません。ちょっと確かめたい事があったんッス」

「確かめたいことって、美加子の気持ち?」

「はい、実は……って、え!?は!?な、何言ってんっすか!?」

やべーーー!!
ごく自然に聞かれたから、ごく自然に答えちゃったじゃねーか!!

突然挙動不審になったオレに、古賀さんはクスクスと笑った。

「やだ、もー!清田くんてば、美加子の事が好きなんでしょ?バレバレだって」

「え、ええ……ええええええええ!?」

ちょっ、満面の笑みでそんな事言わないでくださいよ!
この人、悪魔かよ!!

「見てたらわかるよ、そんな事」

「あ、あいつは……?」

「ああ、あの子は鈍いからね、清田くんの気持ちには気づいてないでしょーよ」

「……そうっすよね、ああ、びっくりした」

古賀さんは話を汲み取ってくれる人だから助かる。
オレの一言で、何が聞きたいのかわかってもらえたようだ。

深いため息をつくと。

「ため息をつきたいのはこっちのほうよ。神くんと一緒にテーマパークなんて来るの、久しぶりだったのに」

「あ!す、すんません!」

「謝るくらいなら、さっさと元の場所に戻らせて頂戴?」

「は、はいっ!!ただいま!!」

じじじじ、神さん、古賀さんってこんな人でしたか!?
なんか、黒い霧のようなものが見えるんッスけど!!
付き合ってから、二人とも黒くなったと思うのは、やっぱり気のせいではないんッスね!?

オレは古賀さんの方を振り向けず、冷や汗を垂らしながら、神さんと沼田の元へ戻ることになった。

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