■ 2:うるさくてうるさくて眠れやしない、どうしたらこの心臓は鎮まる

海南大付属高校一年、男子バスケ部、清田信長。

あたしの、好きなヤツ。

「ねえー、どうしよう!何着ていったらいいと思う!?」

「はぁ?別になんだっていーじゃねーか、そんなの」

「良くない!デートなんだから、ちゃんとした格好で行きたい!」

「デートねぇ……先輩カップルを見て、惨めになんじゃねーの?」

「むっ……!」

あたしの部屋にいるのは、義理の兄の藤真健司。
両親が再婚したのだけれど、今は夫婦別姓が出来る時代。
なので、あたしも、お母さんも、苗字は変わらず昔のままだった。

義兄は、外面はすっごい良くて、顔もカッコイイし、王子様タイプ。
でも、気を許した人物に対しては、超オレ様。

もう何年も一緒に住んでいるから、普通に慣れちゃったけど。
なんだかんだいって面倒見のいい義兄の事が、あたしは大好きだったりする。

カッコいいけど、家族って割り切ったら恋愛感情なんてちっとも沸いてくることがなくて。
そんな自分自身にも安心した。

で、現在明日のダブルデートの服装の相談に乗ってもらってるところなんだけど……。

「っていうか、お前、誰だっけ?好きなヤツ」

「だーかーら、清田!清田信長!」

「ああ、あのサルっぽいやつ……よし、ここは兄ちゃんが一肌脱いで……」

「馬鹿!健兄、清田に何か言ったら許さないからね!!」

「馬鹿はお前だ!冗談だよ、妹の色恋沙汰に手ぇ出す気なんて、さらさらないね。ほら、これ!」

「うぷっ」

ほら、と言いながら投げられたもの。
良く見てみると、ベッドに広げてあった、あたしの服。

「それが一番いいんじゃん?」

「え、マジで」

「おう、それなら清田もイチコロだ」

「……イチコロって……健兄、古い」

「うっせ!じゃあな、もう寝るから行くぜ」

「あ、うん、ありがと!」

「土産はクッキーでいいからなー」

さりげなくお土産の要求をし、階段を下りていってしまった。
ちゃんとお土産買って来るに決まってんじゃんか!いーだ!!と、後姿が見えなくなるまで心の中で悪態をついた。

健兄はセンスがいいから、選んでもらった洋服も心なしかいつもより輝いて見える。

うん、明日はこれでいこう!


着る服も決まった、髪形もばっちり考えてある、荷物もバッチリ……よし、後の準備は大丈夫だよね!?
早く寝ないと遅刻したら大変だもんな。
あたしも、もう寝よう。


……しかし、目はギンギンに開いたままで、一向に眠くならない。

あれだ、子供が遠足とかで、楽しみすぎて前日に中々寝れないってやつ。

まさに今、あたしがその状況。
だって、清田とどこかに出かけるなんて初めてなんだもん。

先日清田に、真砂先輩と神先輩のことを聞かされたときには、あたしも清田と……なんて考えてたら、微妙な表情になってたらしくて。
清田にツッコミ入れられたけど、神先輩が憧れの人で〜なんて誤魔化してみた。
神先輩の事は素直にカッコイイと思うし、憧れちゃうのもほんと。

でも、神先輩にはやっぱり真砂先輩じゃなきゃ。
あの二人、お互い好きなのかな?っていう雰囲気があったんだよね。

あたしが気づいたのなんて、つい最近なんだけど。

そしたら、以前一度付き合ってたことがあった、っていう話を真砂先輩本人から聞いてさ。
その時は『付き合ってるなんて形だけのようなものだった』なんて言ってたけど、今の二人を見ていたら、そんな事ちっとも想像できなくて。

二人が一緒にいる姿を見てると、すっごくうらやましくなるほど素敵なカップルだと思う。

まさにお似合いだ。
あたしも、あんな風に素敵なカップルになりたいんだ。

……清田、信長と。


だからまずは、明日のデートでしっかりアピールしなきゃ!
その為にも、早く寝なきゃいけないんだけど……ど……


だめだ。

あたしの心臓、明日のことが嬉しくて仕方ないみたい。

目をぎゅって瞑って無理やり寝ようとしても、やっぱり眠気は訪れなかった。

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